べったり首に張り付く黒髪を束ねあげながら考える。
雨が降ったあと、ぺちゃぺちゃと粘り気のない土の上に倒れているストロベリーブロンズの持ち主は指一つ動かさない。
あぁ、神よ。どうしてこんなことになってしまったのですか。
たしかに私は人を殺める。
そう、日中十字架をかかげ教えをとく身でありながら、身寄りのない村娘に手をかけるのだ。
…いや、かけるはずだった。
その証拠に街のはずれには立派な密室をこさえてあるし、決行の日には親愛なる友人と食事をとる予定を作ってある。
でもまさか、まさかこんな早くに彼女の鮮血を浴びることになるなんて!
家には彼女の行動パターンや生い立ちを書き記したノートがいくつかある。
職業柄人望は私のすべてだ。犯人に仕立て上げられるのはもちろん、誰かの目にそれが触れることすらあってはならない。
だからなるべく、無差別な家探しなどされぬよう、この死体を抹消しなくてはならないのだ。
幸い森に入り行方不明になる娘は少なくない。
大人でも安易に近づけない大樹だ。彼女の痕跡を何一つ消してしまえれば、きっと捜索もされず闇に葬られるだろう。
…さて、となれば道は見えてきた。
死体の取り扱いに長けており、その上口の固い顔見知り。
あぁ困った。私はそんな男を一人知っている。
_レンガで塗装された道を歩く足がこころなしか軽やかになった。
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