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#ダンジョン
#学園
ダンジョン攻略に関しては素人の逆神六駆であるが、戦闘にかけては恐らく現世でも指折りの実力者。
それも、最初に指が折られるであろう最強の男。
そんな六駆の危機感知センサーが反応していた。
どうも第8層からダンジョンの雰囲気が変わっている。
分かりやすい点から分析すれば、モンスターが明らかに強力になった。
深く潜ればそれだけ強いモンスターと遭遇するという通常のダンジョンのようなモンスター配列になった事が、イレギュラーの多い御滝ダンジョンにおいては不気味である。
さらに、天然のトラップの存在。
今が伸び盛りの莉子には戦闘に集中して欲しいという思いから、実は六駆が「これは罠になりそうだな」という植物や鉱物、その他諸々を先んじて発見し、莉子やクララに気取られないように処理をしていたのだが、その数がモンスターの変化と同様に第8層から急激に増えていた。
最深攻略パーティーの到達地点が第8層までだった事も、実はこれが原因。
さすがは百戦錬磨の六駆おじさん。
知らないうちに色々と活躍していた。
「この辺りで1度地上に戻ろうか」
「えーっ!? せっかく調子が出て来てるのに? 六駆くん、家に帰りたくなっただけでしょ? 知ってるんだからね、いつも見てるドラマの再放送がもう始まってること!!」
知られざる活躍で弟子を守っていた師匠、何故だか怒られる。
普段ならいじけているところだが、お忘れの方のために彼が犯した罪をもう一度声を大にして繰り返すと、六駆は本日大遅刻をしてチーム莉子に迷惑をかけている。
そのため、普段は見せない申し訳なさが珍しく思考の最前列へと躍り出ており、彼は重ねて提案を続けた。
「ダンジョンの気配が変わってるんだよ。この先はちょっと危険かもしれない。莉子はもちろん、クララ先輩も。だから、1度引いて、せめて装備を整えるのはどうかな? イドクロアも山ほど手に入っているし、莉子の装備は変更しておきたいな」
「莉子ちゃん、ここは六駆くんに従おうよ。珍しく愛弟子の事を心配してるしにゃ。ふっふー。この熱々カップルめー!」
「ちょっとぉ、ヤメてくださいよ、クララ先輩! そーゆうのじゃないです!!」
「莉子。ここは、熱々カップルに免じて!!」
「六駆くんも否定してよ! べ、別にわたしたち、カップルじゃないし!?」
結局、多数決と熱々ぶりの両面攻撃により、莉子も一時撤退を了承した。
しかし、彼女は言う。
「せっかくこんなに深くまで潜ったのに、戻って1からリスタートって、なんか面倒だよね。なにかいい方法ないのかな?」
「うーん。上位ランクの探索員はサポート課で【転移黒石】って言う、ワープできるアイテムを貰えるらしいんだけど、確かBランクからだったかにゃ? さすがにそんな便利なスキル、六駆くんでも……」
「要するに、ここに戻って来れるようにすればいいんでしょう? できますよ」
「うひゃー! できるんだ!」
「さすが六駆くん! ズルいスキルとか楽するスキルに抜かりなしだねっ!!」
六駆は煌気を練って、適当な壁に向けて投げつける。
これを『基点』と呼ぶ。
続けて六駆は両手を地面に置いて、「ふぅぅぅんっ」と気合を込めた。
現れたのは巨大な門。ダンジョンの天井にめり込んでいる。
「あらら。意外とここの天井って低いんだね。大丈夫かな。ああ、これ『門』ってスキルで、『基点』を付けた場所に移動できるんだよ。分かりやすく言うと、ドラえもんの道具にあるでしょ? どこでもドアって」
「便利な分、煌気の消費が激しくて疲れるから嫌なんだけどね」と彼は付け足した。
あとはいつものように、『直帰』でダンジョンの入口付近に転移すれば良い。
これで次からは、このセーブポイントから攻略開始。
反則スキルの乱用は控えてもらいたい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「お帰りなさいませぇー! 今日もご苦労様ですぅ! あらまあ、なんて大量のイドクロア! いえね、最近探索員が減って来ていて、チーム莉子の皆さんには市の探索課も期待と希望を抱いておりましてぇ!」
お馴染みになった、通称ダンジョン攻略リザルト画面、本田林が3人を迎える。
面倒な説明をするのが嫌な六駆は、目的だけを端的に伝える。
「あの、装備の申請をしたいんですけど。このイドクロアを素材にして」
「はい! もちろん、喜んで! では、申請書をお持ちします!」
すぐに用意されたサポート課発行の装備申請書類。
人間の図が描かれており、例えば盾なら右手に持つか左手に持つか、全身装備ならばスカートやズボンの丈から細かいデザインまで、事細かに発注できるようになっていた。
「莉子は念願の新装備の発注に専念してて良いよ」
「わぁぁ!! いいの!? 可愛いヤツにしてもいい!? ひらひらのスカート!!」
「年頃の女の子なんだから、スカートはヤメてショートパンツにしときなさい」
そんな彼女に水を差す、おっさんの鑑。
「ぶぅー。分かったよぉ。まったくおじさんはうるさいんだから……まったくさ!」
口では文句を言いながらも、嬉しそうに装備のデザインを描いていく莉子。
続けて六駆は、スカートをひらひらさせている年頃の女の子にも申請書類を渡す。
「おりょ? あたしも? 別に希望はないけどー?」
「クララ先輩、弓スキルが多いですよね。で、その弓をいちいち具現化してますけど、煌気の浪費ですよ。この機会に、普通に持ち運べる軽量の弓をひとつ揃えて下さい」
「マジで!? いーの!? 実はあたしも、前からそうしたかったんだよねぇ! ありがとう、あたしのあしなが六駆おじさん!」
「おじさんはヤメて貰えますか……」
発注書の虜になった女子2人。
六駆は事後処理をするため、本田林と話をする。
記録石を渡して討伐関係の手続きをし終えたところで、今や完全にチーム莉子の係員になった男が六駆にお伺いを立てる。
「あのぉ、差し出がましいようですが、逆神さんは装備を変更されないんで?」
「いや、僕は別に。今のままで不自由を感じませんし」
「簡単なもので構わないので、変更なされませんか?」
「ふむ。何か理由があるんですか?」
「実は、現在の最前線攻略パーティーがチーム莉子になっておりましてぇ。それで、そのぉ。仮に攻略されますと、写真撮影などで記録が残るんです。その際に、配給装備ですとですねぇ。御滝市の探索課は何やってるんだって話に……」
六駆は事情を理解した。
本田林も今回は保身と言うよりは、市役所の職員としての業務を優先しているらしい。
それを察した六駆は、心を入れ替えて働く本田林の意見を聞くことにした。
「じゃあ、何か簡単な装備を追加するって事でもいいですか?」
「もちろんですとも!」
「内容は本田林さんにお任せします。適当にこのイドクロアの残り物で作れるものを発注しといてください。考えるのが面倒なので」
「えっ? あ、ああ! はい! かしこまりました!!」
その後、莉子が満面の笑みで申請書を提出。
少し遅れてクララも凄まじい量の書き込みがなされた申請書を持って来た。
装備ができるまでに3日かかると言う本田林。
今回はイドクロアの換金はせずに、全て装備の素材に回す。
3度目の探索はこれにて終了。
彼らは装備の完成を待つべく、3日間の休養に入る。