【最終話】
気持ちを伝え合った日から、俺の有給が終わるまで都希のアパートで過ごした。
昼間は都希が仕事で居ないから俺が夕飯を作って帰って来るのを待つ。そろそろ帰って来る時間だ。
「ルナー、そろそろ都希帰って来るからなー。」
「ニャー」
ガチャ
玄関が開く音がした。
「ただいま。」
「都希、お帰り!」
・・・・
キスはしていたけど、なんだか照れ臭くてまだセックスはしていなかった。明日には俺は帰らなきゃいけない。ずっと一緒に居たのに寂しくて仕方ない。夕食を食べて、一緒に片付けて、お互い風呂にも入った。
後は寝るだけという時になって、布団の中で都希が抱きついて来た。都希からの愛情表現にまだ心が慣れなくて、すぐに泣いてしまいそうになる。
「ふふ、また涙目だよ。」
「だってまだ夢みたいで怖い。」
「夢じゃないよ。」
よいしょっと言って俺より少し上に上がると、額にキスをして抱きしめてくれた。都希からの優しさが嬉しい。堪らず都希の胸に頭をグリグリしていると、俺の髪の毛がくすぐったいのか笑っていた。
「千景、僕ちゃんと準備して来たから今夜は抱いて。やっと恋人同士になれたのに、明日の夜には帰っちゃうんでしょ。」
「そうだけど…俺もずっとエッチしたかったけど、好き過ぎて絶対に止まれないと思うから…。もう都希に脇腹殴られるの嫌だし…。」
「ふふ、どんな千景でも受け止めるよ。物理的にも。その為にお布団だってもう一組用意したんだし、汚れても大丈夫だよ。」
「うん…。」
「でもやっぱ久しぶりだから緊張するかも…。」
「俺も…ちょっと無理かも。下半身も心臓もどっちももたない。」
「ふふ、心臓は大切にして。それに、これからはずっと一緒なんだから、焦るのはやめよ。」
「それもそうだな。ずっと一緒だ。」
「大好きだよ千景。」
「俺もだよ都希。」
・・・・
「あっ、んっ、」
頬から首、肩から胸、余す事なく隅々までキスの雨が降る。千景から貰う全てが気持ち良い。イチャイチャしているだけでも身体も心も満たされる。だけど、今日はもっと千景が欲しい。
「指入れるぞ。」
「うん…」
「柔らかいんだけど…。」
「久しぶりだから毎日お風呂でほぐしてたから…」
千景がビクッとした。
「!!…今のでちょっと出ちゃった。危なかった…。マジでヤバい。」
「僕もとっくに限界。後は全部僕の中に頂戴。」
向かい合ってゆっくりと千景が中へ入って来た。気持ち良過ぎて勝手に精子が押し出されてしまう。
「あ…あぁー…出ちゃうぅ…。」
「都希…締まる…ヤバ。もたないから一回出す!」
「あ、あ、あっ僕もイ、くぅ…!!」
一度出てしまってからは、一ミリの隙間も作らない様にひたすら求め合った。
「都希っ、都希、好きだ!ずっと好きだった。都希!」
両思いのセックスに興奮し過ぎて頭がどうにかなりそうだ。抱きしめられたまま、優しく動きながら千景の事が大好きだと思った。
「都希、たくさん気持ち良くなろう…」
「ずっと気持ち良いよ…」
どのくらい時間が経ったのかもう分からない。
「千景ぇ…もうらめぇ…お腹くるしぃ…」
「まだ、三回しか、出してない。まだ足りない!」
「僕、もう出ないぃー!!んっ!んっ!」
ぐったりする都希に口移しで水を飲ませて布団に寝かせてあげた。都希はまだ余韻でピクピクしている。
「都希、ゆっくりするからまだ中に入ってたいんだけど、もう無理?」
耳元でそっと聞くと「ちょっと待って…。」
そう言うと、脚を開いて穴を広げ、腹を押してながら俺の精子を出している。視覚的に自分がどんだけ出したのか良く分かる。
「…はぁ、はぁ、これでまだ出しても大丈夫…。」
「決めた。都希、今日はお前が孕むまで中に出すから…。」
「へっ、!?僕、赤ちゃん出来ないぃ!あぁー!!」
すでに声が掠れ始めているのは気付いているけれど止まれない。都希を独占出来る幸せに完全に舞い上がっている。
「ごめん、今日は、本当に、無理。」
「千景、僕、気持ちよくて死んじゃうぅーーー!あ、あんっあ、またイグぅ!!イッんんんっっ!!」
都希の身体が反り返ってイったと分かった。もう都希の性器からは何も出ないのにヒクヒクと奥が波打つ様に痙攣している。
「都希!エロ過ぎなんだよ!あー、無理!俺もまたイク!んーっ!」
都希の腰を抱えながらバックの体勢になって、奥の更に奥まで打ち付ける。パチンっパチンっと速度を上げて激しく打ち付ける音と、散々出した俺の精子が都希の中から溢れ出ているグチュグチュした音との両方が部屋中に鳴り響いた。
大好きな気持ちを現実的に出しまくって、やっと身体の力が抜けた。
「幸せだ…」そう呟くと、「僕も幸せ…」と、都希も俺の腕の中で呟いた。
眩しいくらいに夜空で輝いていた月は薄くなって、もう外は爽やかな青空へと変化していた。
・・・・
「千景…泣かないで。またすぐに会えるから。」
「やだぁ…帰りたくない…。」
結局俺たちは、帰るはずだった夜も離れられなかった。ひたすらイチャイチャして過ごし、次の日の昼になってしまった。
「また、週末来るから…。ルナと待っててよ。」
「はーい。待ってまーす。」
都希は抱っこしたルナの手を自分の手の代わりに挙げて返事をしていた。…幸せだけど、その分離れるのがもの凄く辛い。ルナごと抱きしめてから渋々いってきますのキスをした。
「じゃあ、またな。」
「千景、いってらっしゃい。気をつけてね。」
◆◆◆◆
千景が帰った後、ルナを抱っこしながらこの数日の千景と過ごした時間を思い出して温かい気持ちになった。
まさか過去の自分ごと受け止めてもらえる時が来るなんて昔の僕には想像もつかなかった。まだ夢は見る。だけど千景の事を好きだと自覚してからはもうあの夢を見ても泣いてしまう事は無くなった。僕は夢の中の尚人の冷めた視線を感じても縋り付いて苦しむ事は無くなった。始めは誰なのか分からなかった。でも夢の中でも僕を連れ出してくれたのは千景だった。千景の事を考えれば考える程、夢の中でも千景が必ず僕の手を引いてくれる様になった。『千景だったんだ…』そう気付くと僕は幸せな気持ちで泣いた。千景に救われる度に、僕は過去に縛られていた僕自身も認められる様になった。
愛され方を知らなかった。そして、愛し方を間違えていた。そんな過去の自分を…。
・・・・
ジュリへ謝罪と感謝を込めて連絡をした。
『千景と一緒にいる事にしたよ。ジュリ、支えてくれて本当にありがとう。もう逃げないよ。』
『本当に良かった!激重同士でお似合いじゃん!でもツキの事が一番大好きなのは可愛いジュリちゃんって事、忘れないでよね!』
「ふふ、わかってるよ。」
そして、マスターやお店の皆んなにもメッセージを送った。
『マスター、彰くん、菜央ちゃん、自分勝手にお店を辞めて本当にすみませんでした。近いうちお店に伺います。直接謝らせて下さい。本当にすみませんでした。』
すぐにマスターから電話が来た。
『都希が元気なら俺はそれで良いんだ。落ち着いたららいつでも帰って来なよ。店の皆んなも都希に会いたがってるから。…あと、壮一も心配してたよ。』
「壮一…。はい、必ず伺います。マスター…本当にありがとうございます。」
◆◆◆◆
千景と恋人同士になってから一年が経った。不安が無くなった今の僕は、僕の事を心配してくれた人に素直に感謝出来る様になった。マスターやお店の皆んな。千景に場所を教えたお母さん。そして千景の背中を押してくれた尚人…。
千景の笑顔を見る度に、『僕の運命は千景だったんだ。千景と結ばれる為に、辛い過去の積み重ねがあったんだ。』そう思えた。
この一年で色々な変化があった。始めは僕の首にネックレスが戻って来た事。あと、千景とお揃いで左の中指に指輪をしている事。それと、千景と一緒に暮らし始めた事。
仕事は子ども達の近くで働きたくて保育園に復帰した。バーは忙しい時にだけヘルプで働いている。帰ると千景も居るし、ルナも居てくれる。
今の僕はもう寂しくも無いし、悲しくも無い。
僕は一人じゃなくなった。
・・・・
「千景、お帰り。お疲れ様。」
「ただいま!はぁーやっと帰って来れたー。マジで一日が長いっ!でも帰って来ると急に時間が早くなるから本当に困るよ。すぐ朝だもんなー。本当に嫌になっちゃうよ。一カ月くらい休み欲しい!俺、働き過ぎ!都希と一緒に居たい!」
なんだかブチブチ文句を言っているけど、帰って来てからの部屋の移動中も僕の背中にピッタリとくっついている千景が可愛い。
「だけど、明日は日曜!休みー!!」
急にご機嫌だ。
「いつか一緒に居ても一日が長く感じちゃう日が来るかもよ?マンネリとかになって。僕の方が歳上だし。」
「長く感じるとかそれはそれで俺的には嬉しいけどなー。それにマンネリとかは絶対に無いな!」
「おじいちゃんになったらエッチな事出来なくなっちゃうかもしれないのに?」
「大丈夫。そしたら一緒にくっついてれば良いだけだから。今みたいに。」
付き合ってから思ったけど、楽観的というか、千景はかなりポジティブだ。でも千景が言うとそんな気になってしまうから不思議に思う。
「ちーくん、ご飯を食べるので、早く手洗いうがいをして来て下さい。」
「はーい、都希先生。」
「お利口さんですね。」
千景はこのやり取りが好きらしい。ちーくんと呼ぶと素直になる。
夕食は、お互いの時間がある時には出来るだけ一緒に食べる様にしている。千景の方が料理の手際は良いけど、僕も少しずつレパートリーが増えて来た。
眠る時、毎晩隣に君がいる。それだけで本当に幸せだ。
身体の繋がりだけじゃなく、本当にお互いを思い合う幸せを僕は知る事が出来た。この先、何があるかは分からないけれど、こうやってただ抱きしめ合って生きていきたい。
おわり
すれ違いばかりの二人を最後まで見守って頂きありがとうございました!次回からは番外編を5話投稿します。
引き続きお楽しみに!
橘 アコ
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!