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【side尚人】
都希…。
もし、もう一度お前に会えたら何て言おう…。
お前の笑顔をまた見たいよ。
・・・・
千里が都希のお母さんを助けた日、俺は自分が都希の友達だと言い出せずにいた。でも都希のお母さんは俺に気付いてくれた。
「あら?もしかして尚人くん?!都希と仲良しだったわよね?!」
「あ、はい。そうです。お久しぶりです。」
正直気まずかった。
都希のお母さんからは再婚した事と、都希は全然実家に帰って来ない事を聞いた。
「良かったらまた遊びに来てね!」
そう言ってお母さんとは別れた。
「尚人の友達のお母さんだったんだね。すっごい偶然。」
千里には昔、男と付き合っていたとは言っていない。やっぱり俺はまだ世間の目や評価を気にしている。都希のお母さんに会った事でそんな弱い自分を無理矢理引きずり出された様な気持ちになった。
まさか千景が都希を好きになっているなんて…。
その後千景が都希とセフレになっていると聞いた時にはものすごく驚いた。
懐かしさと同時にあの時の気持ちがフラッシュバックしてズキズキとした胸の痛みで涙が出た。でもすぐにホッとした。今の都希の傍には千景が居る。きっと千景なら…俺の自慢の弟なら、都希を必ず笑顔に出来ると感じた。
いくつかの偶然と、千景の都希への想いが繋がる後押しを自分が出来る事が本当に嬉しかった。それは都希への罪滅ぼしだったのかもしれない。
あの日の『ごめん』の代わりに。
・・・・
千景が都希の元へ向かった数日後、連絡があった。
『都希と付き合う事になった。』
「そうか…わかった。律儀な奴。…都希と仲良くやれよ。」
『当たり前だ!』
それから2カ月後…
息子の拓真と公園の砂場で遊んでいると、そこへ千景が来た。そしてその後ろには都希がいた。立ち上がり、都希の方を向くのがやっとだった。嬉しい様な悲しい様な、そんな気持ちを押し殺した。笑え!このチャンスを逃したら後悔する。
「ちーにぃちゃん!この人は誰?」
「東都希です。宜しくね。」都希が拓真の傍にしゃがんで挨拶をしている。久しぶりに声を聞いた。
「よぉ拓真。都希くんはちーにぃちゃんの大好きな人なんだぞ。お前もきっと大好きになると思うけど、都希くんは俺のだからな!覚えとくんだぞっ!」
「つきくんは、ちーにぃちゃんのね!わかった!」
「おい、拓真に何を教えているんだ。」可愛い弟が浮かれている姿を間近で見る事になるとは思わなかった…。
「千景、…あとでお仕置き。」都希の冷めた視線を千景はあえて無視している。すっかり尻に敷かれている様で、二人のやり取りに笑ってしまった。
「兄貴、都希が話したい事があるって言ってるから連れて来た。…ってか、都希に変な事すんなよ!」
「バカ!何言ってんだ。じゃあ、お前は拓真と遊んでろよ。」
「よーし、拓真ー遊びに行くぞー!」
「おぉー!」
息ぴったりに、大きな子どもと小さい子どもが走り出した。
・・・・
「尚人久しぶり。元気そうだね。」
「都希も。元気そうだな。」
「………。千景とお母さんに会いに行ってくれてありがとう。…それと、あの時はごめんね。尚人を傷付けてばっかりで。やっぱりまた自分勝手な事してるけど、ずっと謝りたかったんだ。」
いや、都希、謝るのは俺の方なんだ。
「…俺も…ごめん。」
「尚人は悪くないでしょ。」
「いや…。俺も一方的だったから。」
「もう気にしてないよ。拓真くん、可愛いね。何歳?」
「3歳。」
「僕、保育園の先生になったんだよ。」
「そうか。都希なら子ども達からも人気なんだろうな。」
「ふふ、当たり前じゃん。あのね、謝りたかったのもそうだけど、尚人に伝えておきたい事があるんだ。」
「何?」
「…千景の事は、僕が幸せにするから。」
分かってた。千景から『都希が会いたがっている』と、連絡が来た時から分かってたんだ。都希、お前変わったな。いや、変われたんだな。
「そうか…。」
「もう絶対に千景を悲しませたりしない。だから、僕が千景の傍にいる事を許してほしい。会いたかったのは、昔の事を謝りたかったのもあるけど、僕の決意として、尚人にこれを直接言いたかった。」
「千景、昔から都希の事が大好きだったからな。というか、俺がもし許さなくても千景の方がお前から離れないだろ。」
「ふふふ、そうかも。」
「わかったよ。バカな弟を宜しくな。」
「任せて。」
千景が遠くから睨んでいるのが分かる。昔はあんなに可愛いかったのに、俺に敵意を剥き出しにする日が来るなんて。あれは相当イラついてるな。ブラコンのくせに。一生弄ってやる。
「パパー!」拓真がこっちへ千景と走って来た。
「僕、あれやりたーい。」
「いーぞ。じゃあ都希、また千景と遊びに来いよ。」
「うん。ありがと。拓真くんとも仲良くなりたいから。じゃあ、尚人。またね。」
「おう。またな。」
「話しは終わったのか?」
そう聞きながら都希にベタベタする千景に呆れた。
「終わりましたよー。千景、ここ外だから。帰るよ。」
「はーい。じゃあ兄貴、またな。」
並んで歩く二人はとてもお似合いだった。
「バイバーイ!」
都希が振り返り、拓真に手を振ってくれていた。
都希、ありがとう。それと、ごめん。
「パパ?泣いてるの?」
「泣いてないよ。お砂が目に入っちゃったみたい。」
「いたいのいたいのとんでけー」
「ははっ、拓真は優しいなー。ありがと。」
・・・・
「都希?大丈夫か?」
「大丈夫だよ。ちゃんと話しも出来たし、千景ありがとね。」
「なら良かった。」
「今日は千景の家、行っても良い?」
「良いよ。夕飯どうする?」
「今日は出前でも頼もうよ。」
「そうしよ!」
・・・・
久しぶりに会った君はやっぱり綺麗で、あの頃に戻ってしまいそうになった。
でもそれは過去の話し。
幸せに笑ってくれてるならそれで良いよ。