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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「よう、キミコ。調子はどうだ?」


彼がキミコにそう言うと、彼女はこう言った。


「……お兄ちゃんが最近構ってくれなかったから、お兄ちゃん成分が足りてないよー。今すぐ抱きしめてー」


ハチミツ色の長髪と金色の瞳が特徴的な美少女……いや美幼女は両手を広げると、両腕をブンブンと上下に動かし始めた。


「えっと、じゃあ、行くぞ」


「うん!」


キミコはニコニコ笑いながら、彼が自分の腕の中に飛び込んでくるのを待った。

彼がキミコの腕の中に飛び込み、彼女の背中に手を回すと彼女をギュッと抱きしめた。


「わーい! お兄ちゃん成分が私の体の中に入ってくるー」


「えーっと、お前ってそんなこと言うやつだったっけ?」


「え? あー、まあ、もう一人の私は絶対こんなこと言わないだろうねー」


※獣人型モンスターチルドレンは多重人格なのである。


「だろうな……。じゃあ、そろそろ自己紹介してもらってもいいか?」


「うん、いいよー」


二人は少し離れると、正座をした。

その後、キミコはスッと立ち上がった。


「コホン……。えー、私は獣人型モンスターチルドレンの『キミコ』だよー。前は『色欲の姫君』の力を宿してたけど、今はお兄ちゃんの鎖に封印されてるから使えないよー。チャームポイントはフワフワのシッポと頭の上に生えているモコモコの耳だよー。よろしくねー」


彼女の自己紹介が終わると、彼はパチパチと拍手をした。


「ありがとう、キミコ。笑顔が可愛かったぞー」


「えー、そうかなー? 別に普通だよー」


「そんなに謙遜《けんそん》するなよー。笑顔の天才」


「あははははは、それは言いすぎだよー」


二人は少しの間、笑い合った。

それが止むタイミングは……ほぼ同時だったそうだ。


「さて……そろそろ本題に入ろうか。なあ、キミコ」


「んー? なあにー?」


「最近、困ってることとか……」


「ないよー」


「最後まで言わせてくれよ……。まあ、いいけど。じゃあ、俺にしてほしいこととかないか?」


「うーん、そうだなー。じゃあ、私と遊んでくれる?」


「おう、いいぞ。何して遊ぶ?」


「えーっとねー、かくれんぼ!」


「え? かくれんぼ?」


「うん、そうだよー」


「そんなのでいいのか?」


「うん、いいよー」


「そうか……。じゃあ、やるか。最初は俺が隠れてもいいか?」


「うん、いいよー。私が三十|数《かぞ》え終わる前に隠れてね?」


「了解」


「それじゃあ、行くよー。いーち、にー、さーん」


彼女は両手で顔を覆い隠すと、数を数《かぞ》え始めた。

彼はその直後、目にも留《と》まらぬ速さで寝室から出ていった……。


「……にーじゅくー。三十! よおし、探すぞー!」


キミコはそう言うと、ナオトを探し始めた。


「お兄ちゃんはどこかなー。ここかなー?」


キミコはちゃぶ台の下を見た。

しかし、そこには誰もいなかった。


「お兄ちゃんは……ここかなー?」


キミコは浴室の中に入って、浴槽や天井を見た。

しかし、ナオトはそこにいなかった。

彼女はしばらくの間、ナオトを探し回った。

台所……。押入れ……。玄関……。

途中から血眼《ちまなこ》になって探していた。

しかし……彼は見つからなかった……。


「お兄ちゃーん……どこー? そろそろ出てきてよー」


彼女がトボトボとお茶の間を歩いていると、ミノリ(吸血鬼)が彼女の手を掴《つか》んだ。


「……?」


「ねえ、キミコ。ナオトがどこにいるのか知りたい?」


「うん、知りたい。教えて……」


彼女は目をウルウルさせながら、ミノリの顔を見た。ミノリはため息を吐《つ》くと、彼女の頭を撫でた。


「……どうして頭を撫でるの?」


「え? あー、まあ、それはあんたが頑張ったからよ」


「えっと、ありがとう。それでお兄ちゃんはどこにいるの?」


「……上よ」


「……え?」


「ナオトはあんたの真上にいるわ」


「真上?」


彼女が天井に目を向けると……天井に張り付いているナオトがいた……。


「あははははは、見つかっちゃったー」


彼女は目に涙を浮かべながら、彼の胸に飛び込んだ。


「お……お兄ちゃーん!」


彼は天井から手を離すと、彼女を抱きしめた。

彼は空中で彼女を肩に担《かつ》ぐと、うまく床に着地した。

彼は彼女を立たせると、再び彼女をギュッと抱きしめた。


「ごめんな、キミコ。忍者みたいなことして……」


「……ちゃんと私の前に現れてくれたから、許す」


「そっか……。じゃあ、次はキミコが隠れてくれ」


「……もういい」


「……え?」


「もう、かくれんぼはやめる。その代わり、私がいいって言うまで、お兄ちゃん成分を補充《ほじゅう》させて」


「……分かった。けど、ここだと殺気がすごいから、となりの部屋に行こう」


「……うん……そうする……」


彼女は寝室に行くまでの間、彼の体にしがみついていた。



キミコの機嫌が良くなると、彼はお茶の間にやってきて、こう言った。


「昼にしよう」


その場にいた者《もの》たちはコクリと頷《うなず》くと、昼ごはんを作り始めた。キミコを除いて……。


「……お兄ちゃん」


「……ん? なんだ?」


「……して」


「え? なんだって?」


「……私と……チューして……」


それを聞いた女性陣は……ナオトに微笑みを浮かべた。

それを見たナオトは、苦笑《くしょう》した。


「え……えーっと、どこにすればいいんだ?」


「口にして……それ以外の場所はダメ……」


彼は混乱していた。それと同時に葛藤《かっとう》していた。唇《くちびる》にキスをする相手はもう決まっていたからだ。

だがしかし、目の前にいる女の子を悲しませるわけにはいかない……。

彼がそんなことを考えていると、キミコに抱きしめられた。


「お兄ちゃんは私のこと……嫌いなの?」


「い、いや……別に嫌いじゃないけど……」


「じゃあ、好き?」


「あ、ああ、好きだよ」


「でもそれは家族としてだよね? 一人の女の子としてじゃないよね?」


「……それは」


「……ねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんが好きになった人ってどんな人なの?」


「……え?」


「この世界にいる人? それともお兄ちゃんの世界にいる人?」


「……それは……分からない……。その人の容姿や声を思い出そうとすると、なぜかボヤけるから、その人のことはよく分からない。けど、俺がその人のことを愛しているのは確かだ……」


「そっか……。つまり、私たちじゃ満足できないってことだね?」


「違う! 俺は一度もそんなこと……」


「なら、証明してよ。私たちのことを少しでも意識してるなら、それくらいできるよね?」


「……どうしてもしなくちゃいけないのか?」


「それができないなら、私はここで舌を噛み切って死ぬよ。それでもいいの?」


「……キミコ……お前……」


彼女は彼の顔を見ながら、こう言った。


「私は本気だよ。お兄ちゃん……」


彼女の真剣な眼差《まなざ》しから感じられた決意の固さは彼の心を突き動かした……。


「……分かった……。やるよ……」


『…………!!』


彼の言葉を聞いた一同は驚きを露《あら》わにした。一同は彼を止めようとしたが、彼が首を横に振ったため、動こうにも動けなかった。


「……キミコ……舌を出してくれないか?」


「……うん、いいよ……。こう?」


「ああ、それでいい。じゃあ、目を閉じてくれ」


「……うん」


キミコがそっと目を閉じると、彼は目を閉じながら、彼女の口元に顔を近づけていった。

そして……ついに……その時がやってきた……。

部屋中に響き渡る幸せいっぱいの音色がそれを証明した……。

しかし、その直後、キミコは顔を真っ赤にしながら彼から離れた。


「……今の何? ……ねえ、今の何?」


「……知らないのか? スロートキスだよ。相手の舌を唇《くちびる》で吸うやつ」


「私、口にしてって言ったよね?」


「たしかにお前は口にしろと言った。けど、お前は唇《くちびる》にしろだなんて一言も言ってなかった。それに、口の外と内……どちらにされたいのかも言ってなかった。だから、口の中にある舌という名の器官にキスしたんだよ」


「……! や、やられた……。けど、なんか気持ちよかったから許す……」


「ありがとう。それじゃあ、みんなと昼ごはんの準備するぞ」


「うん!」


その時のキミコはとても満足そうな顔をしていたそうだ。

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