※武道とマイキーは付き合っている設定です
最近マイキー君の様子がおかしい。
マイキー君は元々あまり携帯を開かないからメッセージでのやり取りも少ないし、返信まで1週間とかかかる時もあった。
それでも、必ず返信はくれた。
気づかなかったっていう一言もあった。
でも、最近は違う。
メッセージを無視することが増えた。
俺が送ったメッセージを、マイキー君は既読だけ付けて無視する。
どうして?俺、なんか悪いことしちゃったのかな。
頻繁に送りすぎた?でも、俺からは週に1,2回くらいしか送ってない。
じゃあ、どうして…
もしかして、浮気?
マイキー君、浮気したの?
『タケミっち、大好き』
マイキー君の声が脳内で再生される
『ずっと一緒だからな!』
言われれば天にも昇れそうなほど嬉しい言葉なのに、どうしてか涙があふれてくる。
「マ”イッキ”ーく”ん”」
辛い。辛い。
どうしてこんなに悩まないといけないのか。
マイキー君との思い出がたくさん流れてくる。
思い出が流れてくるたびに涙が出てきて止まらない。
理由もなくマイキーくんとのメッセージ画面を開く。
映し出された画面には俺が5日前に送ったメッセージと、今日送った事務連絡のようなメッセージ。
5日前のメッセージには返信がない。
でも、今日送ったメッセージには一言「了解」の文字。
それを見て心が強く締めつけられた。
辛い。痛い。痛いよ。
胸が痛い。
見なきゃ良かった。
どうして開いたんだろう。
あぁ、多分期待してたんだ。
マイキー君からメッセージが送られてくるかもしれないって。
そんなこと、ありえないのに。
そんなことをしていると、顔は涙と鼻水の区別がつかないくらいにぐちゃぐちゃになっていた。
「顔、洗いに行こ…」
まだ余韻もある中、俺は洗面台へ向かい顔を洗った。
冷たい水が顔を濡らし、頭も冴えてくる。
タオルで顔を拭き、リビングのソファに座る。
布団に入ればまた泣いてしまうから。
さっきよりは冷静に物事を考えることができるようになった頭で考える。
「まずは証拠を集めないと」
浮気だとしても証拠がなければ何もできない。
俺は目立たない服に着替えると、家から飛び出した。
とはいっても
「マイキー君がどこにいるかとか全く分からねぇんだよなぁ」
駅前でぶらぶらしているが、マイキー君どころか東卍メンバーと一度もすれ違っていない。
(東京はやっぱ広いんだな)
なんて呑気なことを考えていると、遠くから聞き馴染んだ声が聞こえてきた。
???「疲れたぁ」
???「あの、マイキー君何もしてないですよね?荷物持ってるのも俺ですし…」
よく見てみると、マイキー君だ!それと…
「千冬…?」
二人が並んで歩いていた。
千冬は両手いっぱいの紙袋を持っている。
会話の内容から、マイキー君と一緒に買い物にでも行っていたんだろう。
「二人って、そんなに仲良かったっけ」
普段なら気にしないことだが、タイミングが悪かった。
「浮気、してたんだ。そっか、千冬と…」
涙は出なかった。
「はは…そっか…。千冬も、マイキー君も、俺のこと裏切ったんだ」
なんだか笑えてくる。
俺のことを相棒と言ってくれていた千冬。
大好きと言ってくれたマイキー君。
二人とも裏では俺のことを嘲笑っていたんだな。
俺は一旦家に帰ることにした。
ベッドに倒れ込むと、布団を頭まで被った。
相棒と呼べる友達も、大切な恋人もいなくなった。俺が力不足だっただけなんだと思う。俺に魅力がなかったからだと思う。
「マイキー君と…別れないと」
マイキー君とのメッセージ画面を開き、文字を打ち込む。
“わ”
「あの二人、幸せそうだった」
“か”
「俺とマイキー君より、千冬との方がお似合いだった」
“れ”
「一時的にでも、マイキー君と付き合えてただけで奇跡だったんだ」
“よ”
「俺とマイキー君は釣り合わなかった」
“う”
「最初から、本気だったのは、好きだったのは」
送信ボタンに指を置く。
“わかれよう”
送信完了を知らせる音が鳴った。
「俺だけだったんだ」
携帯に一つ、また一つと水滴が落ちる。
また泣いてしまった。
さっき、嫌になるほど泣いたばかりなのに。
俺は携帯の電源を切った。
マイキー君からの返信が怖かった。
布団を深く被り直して、声を押し殺すように涙を流す。
その日はそのまま泣きつかれたのか眠ってしまった。
窓から差し込む光で目が覚めた。
昨日はちゃんとかかっていたはずの布団も落ちてしまっている。
寝相の悪さは昔からだ。
時刻を確認しようとして無意識に携帯を開く。
開いてしまった。
そこには100件以上の通知が溜まっていた。
全てマイキー君からのメッセージだ。
中身を見たくない。
けれど、ここまで溜まっていると気になってしまう。
一瞬迷ったが、現実と向き合うためにもマイキー君とのメッセージ画面を開いた。
「え…?」
そこには「別れたくない」というのと「理由を教えてほしい」という内容のメッセージで溢れていた。
何件か着信履歴もある。
予想外の内容に困惑する。
緊張か、嬉しさからなのか心臓がうるさい。
…いや、最初から期待して開いていた。
どこかで引き留めてくれるって思っていた。
だから、ホッとした。
この心拍数の早さは緊張の糸が解けたことからくるものなんだと思う。
「…よかった。マイキー君」
やっぱり俺の思い過ごしだったんだ。
昨日は偶然千冬と一緒にいただけなんだろう。
そう考えながら、マイキー君から届いたメッセージを古い順に見ていく。
「…あれ」
一番下までいったところで、指が動かなくなる。
一番最後に送られた、最新のメッセージ。
“それでも、タケミっちが本当に別れたいなら、俺は止めない”
マイキー君の送ってくれた言葉は何も間違っていない。
むしろ、別れを切り出した相手に返す言葉としては最適解だとすら思える。
それでも、俺はその一文から目が離せない。
このやり取り自体、俺が勝手に始めたものなのに。
マイキー君は悪くない。
でも、俺は弱い。とてつもなく弱かった。
「マイキー君、やっぱり俺のこと嫌いなんだ。マイキー君、俺のこと好きだって言ってくれたのに」
マイキー君に全て押し付けた。
そうしないといけないくらい、俺は弱かった。
良くないことだって、弱いって分かっていても、それを受け入れて考えられるほど俺はできていなかった。
最低だ。俺は最低なんだ。
携帯をベッドに置き、着替えもしないまま外に出た。
このままどこか遠くに行きたい。
誰にも見つからないところに。
逃げてるだけなんだけどね。
「もう、だめだ俺」
マイキー君が心配して俺を探してくれるかもしれない。
そんなことばかり考える自分が、心底嫌になる。
一日中マイキー君のことばかり考えているんだから。
マイキー君と一緒にいれるならなんでもしたい。
それくらい俺は好きだ。
なのに、マイキー君は俺と別れてもいいだなんて…!
「いてっ」
そんなことを頭の中でぶつぶつ呟きながら歩いていると、誰かとぶつかってしまった。
「あの、ごめんなさ…」
謝ろうとちらっと相手の顔を見る。
そこにあったのは一番会いたくて、会いたくなかった人。
何度見ても苦しくなるほどかっこいい顔に、俺よりほんの少し小さい身体。
でも、どんな大男よりも大きく見える背中。
マイキー「たけ…みっち」
俺はその場から逃げ出そうと走った。
どこでもいいから、ここじゃないどこかへ行きたくて。
でも、相手はマイキー君だ。
すぐに追いつかれてしまい、腕を掴まれる。
マイキー「おい!なんで逃げるんだよ」
マイキー君の顔を見るのが怖い。
でも、こうやって追いかけてくれたことは凄く嬉しかった。
俺はマイキー君に顔を見られないように俯く。
だって、今俺は笑っている。
マイキー君が俺を見てくれてるのが嬉しくて、抑えきれず顔に出てしまっている。
ずっと俯き、黙っている俺を見て、マイキー君は何を思うのだろう。
俺は何を期待しているんだろう。
どうしてほしいのだろう。
マイキー「もう、嫌いになったか?」
マイキー君から出たとは思えないほど弱々しい声だった。
俺は少し顔を上げ、マイキー君の顔を見る。
そこにはいつものかっこいいマイキー君はいなかった。
辛そうな、弱りきった顔がそこにあった。
「マイキー君…?」
マイキー「俺が原因なら謝る。だから、せめて理由を教えてくれないか」
…マイキー君が、俺のことを考えてくれていた。
俺のことを考えて、あそこまで弱ってしまった。
そこに俺は優越感を覚えた。
胸に空いていた穴が埋まるように、満たされていく。
嬉しくて、幸せで、それが表情に出てしまう。
俺はマイキー君に微笑む。
「なんでもないです。俺の方こそすみません」
マイキー君は顔から少し力が抜けたようだった。
マイキー「じゃあ、これからも俺の隣にいてくれるか?」
「はい。死んでも一緒にいます」
マイキー君は俺を強く抱きしめてくれた。
マイキー君の香りが鼻いっぱいに広がり、全身へ伝わる。
マイキー「タケミっち、好き、大好き」
マイキー君を抱きしめ返すように背中へ腕を回す。
「俺も、大好き。愛してます」
幸せ。
とても幸せ。
やっぱりこの人には俺がいないとだめなんだ。
それからマイキー君はメッセージも返してくれるようになったし、愛情表現も前より多くしてくれるようになった。
「はぁ…幸せ」
マイキー君から送られてきたメッセージには「大好き」の文字がある。
それを何度も見返して、こうして幸せに浸っている。
マイキー「タケミっち、誕生日おめでとう!!」
千冬の件も、俺へのプレゼントを買うために買い物に付き合ってもらっていただけだという。
…俺と一緒に行けばいいのに!と思うが、マイキー君の気持ちが俺へ向いていたのならそれでいい。
でもあまりこのことは思い出したくない。
「わぁ!!ありがとうございます!」
どうであれ、こうやって元に戻れてよかった。
マイキー君に嫌われるなんて考えたくもない。
ずっとこの幸せが続けばいいのに。
最近、マイキー君の様子がおかしい。
ずっとメッセージを送ったらその日のうちか、遅くても翌日には返信がきていた。
でも、最近は違う。
メッセージを無視することが増えた。
俺が送ったメッセージを、マイキー君は既読だけ付けて無視する。
その日は突然訪れた。
朝起きて携帯を開くと、マイキー君からメッセージが送られてきていた。
“わかれよう”
理解ができなかった。
たった5文字なのに、その5文字から目が離せない。
俺はふと思い出す。マイキー君と親しそうに歩いていた人物を。
「あいつか」
松野千冬。
あいつが、俺のマイキー君を取った。
俺だけのマイキー君なのに。
「マイキー君、大好き。愛してるよ」
俺はポケットに手に取ったモノをしまうと、外へ出た。
「俺がすぐ、取り戻してあげるから」
愛する人のためなら、なんだってするよ。
嫌われたくない。
マイキー君に離れてほしくない。
「みつけた」
前に二人を見かけた場所。
そこにあいつはいた。
今からマイキー君と会うのだろうか。
そんなことはさせない。
マイキー君は俺のだ。
「もうすぐ、一緒になれるからね」
幸せがすぐ目の前にある。
そのことが嬉しくて、笑顔があふれる。
愛する人のためなら、犯罪だってなんだって喜んでするから。
〜あとがき〜
今回は初のノベル投稿をしてみました。
普段TELLERに投稿する際も、アプリのメモ帳を使い、このように書いていたのですが、今回は思い切ってそのまま出してみました。
今後もTELLER向けではない(会話文が少ない等)小説になってしまった場合はこのようにノベルにて投稿させていただきたいと思っております。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
またどこかでお会いしましょう☺
コメント
1件
サイコ~~~~~~🥺