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ガラガラ
「はじめまして」
「あなたは誰ですか?」
いつも彼と話すときの最初の会話。
毎朝彼の病室に行くと、彼は毎回同じことを言う
「はじめまして。」
彼がおかしくなったのは、いきなりのことだった。
俺のせい。全部俺が悪い。
愛している人を守れなかった俺が悪い。
青「ねえ今日桃くんの家行っていい!?」
桃「えーー今日も来るのー?一昨日来たでしょ笑」
青「いいからいいから!!行くからね!!!」
桃「はいはいwww気をつけてこいよ 酒もよろしく」
青「まかせなさい!!!」
桃「WWWWWW」
この会話をした30分後、彼が事故に遭うなんて、誰も想像していなかった。
また来るのなんて言いつつ、ほんとは自分に会いたがってる恋人を見るのが嬉しくて、愛おしくて、なんだかんだ俺が1番楽しみにしてると思う。
ニヤニヤしながら、部屋を片付ける。
猫アレルギーだから、掃除を念入りにし、猫たちを別の部屋に移す。
正直言ってめんどくさいが、青に会えると思えば苦じゃなかった。
でも、彼は1時間が経っても、2時間が経っても、5時間が経っても、俺の家には来なかった。
既読もつかないし、電話にも出ない。
その時、一通の電話がきた。
紫「もしもし、桃くん?」
桃「紫ーくん。どうした?なんかあった?」
紫「落ち着いて聞いて欲しいんだけど、青が交通事故に巻き込まれた」
桃「……ぇ、?」
心臓が止まった気がした。
猫の鳴き声も、外の小鳥の鳴き声も何も聞こえなくて、俺の耳にただ1つ聞こえたのは、その事実だけ。
いそいで病院に行くと、俺以外のメンバーはみんな集まっていて、それに囲まれているベッドには一昨日俺の家に遊びに来た、水色の彼の姿があった。
何も考えずに、彼に手を伸ばし、頬を撫でる。
いつもの撫でてる俺の手に擦り寄ってくる彼はいなくて、俺は彼をただただ見つめていた。
幸いにも、死には至らなかった。
目が覚めた彼は俺をまるで他人かのように見つめ、
「誰ですか?」
と言ってきた。
状況が理解できなくて、あんなに愛し合っいた恋人から、赤の他人のように扱われるのが嫌でショックで、今までにないぐらい怒鳴りつけた。
「…は?おまえなにそれふざけてんのか”“ッ!?」
そんなに怒鳴りつけても彼は震えるだけ。怖がらせるだけなのに、俺の怒りは収まらなかった。
目の前で好きな人が涙を流しているのに、感情をコントロールできずに、怒って、怒鳴って、最低なことをした。
ハッと我に帰った頃にはもう遅く、号泣している恋人を目の前にし、ごめんと一言言って、部屋から出た。
その後聞いたことだが、青は交通事故で強く頭を打ち、記憶障害をおったのだ。
交通事故にあったのも、俺のせいなのに、何も知らない彼を怒鳴りつけて、罵倒して、彼氏失格だ。
その責任を晴らすためにも俺は今日も病室のドアをあねる。
いつもかけられる言葉はおなじ。
「 ……。」
「愛してる。」