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Episode 32 「誤認」
数時間前。
拠点。
水瀬が端末に廃ビルエリアのマップを表示していた。
建物配置。
高低差。
通路。
射線。
「当真先輩なら、多分この辺使いますね〜」
水瀬がいくつかの地点を指差す。
「完全には読めませんけど」
「三上先輩がこの位置まで来てくれれば、狙撃位置かなり限定されます」
「撃たれるかもしれませんけどね〜」
三上が嫌そうな顔をした。
「つまり俺が囮役?」
「お願いします」
黒瀬は静かに頷く。
「その位置で撃ってくれれば、位置が分かります」
三上が露骨に嫌そうな顔をした。
「……うわ、やりたくねぇ……」
「正面からやっても勝てないです」
黒瀬は静かに地図を見た。
「なので、多少無理してでも位置を割り出します」
水瀬が苦笑する。
「当真先輩相手ですので、仕方ないですよね〜」
黒瀬は否定しなかった。
――――
三上が落とされた。
乾いた狙撃音。
直後のベイルアウト。
水瀬が予想した狙撃地点の近くで待機していた黒瀬は、すぐに動き出した。
当真が移動する前に見つける。
そのために、この位置の近くで待っていた。
廃ビルの隙間を抜ける。
一直線ではない。
遮蔽物を挟みながら進む。
頭の中では、水瀬がマークしていた地点が浮かんでいた。
この位置を撃てる場所。
数は多くない。
無線が入る。
『黒瀬くん』
奈央の声。
『無理しないでください』
「大丈夫です」
短く返す。
崩れた階段を駆け上がる。
途中で足を止めた。
気配。
誰かいる。
少し先。
高所。
黒瀬はゆっくり壁へ身体を寄せる。
視線だけを出した。
いた。
フードを被った人影。
手にはイーグレット。
黒瀬の目が細くなる。
「……見つけた」
当真。
そう判断した。
位置も合う。
タイミングも合う。
黒瀬は静かにトリガーを起動する。
カメレオン。
姿が消える。
足音を抑えながら接近する。
ゆっくり。
慎重に。
相手は動かない。
黒瀬はさらに距離を詰める。
あと少し。
射程圏内。
黒瀬は静かにカメレオンを解除した。
その瞬間。
フードの人物が僅かに顔を上げた。
フードの奥。
一瞬だけ見えた横顔。
当真じゃない。
冬島だった。
黒瀬が気づいた瞬間。
乾いた銃声が響いた。
「ッ――」
衝撃。
視界が揺れる。
遠距離。
別方向。
撃ったのは別だ。
黒瀬は咄嗟に理解する。
身体が崩れる。
ベイルアウト光が広がった。
視界が白く染まる。
全部繋がった。
自分は誘い出された。
黒瀬は小さく息を吐く。
「……やられました」
「流石です」
ベイルアウト光が黒瀬の姿を包み込んだ。
コメント
1件
うわっ、ラストの展開が痺れました……! 黒瀬の緻密な読みと行動、水瀬のマップ分析、それらを全部ひっくり返す冬島を囮に使った当真の一手。「見つけた」と思った瞬間に逆に誘い込まれていた構造が美しすぎる。冬島の横顔が一瞬見えただけで別人だと気づく演出も上手いですね。黒瀬が素直に「やられました」と認める潔さもキャラの魅力を引き立ててる。今回のエピソード、戦術の応酬として最高でした!