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「ドス君。僕は終に真の自由意志を証明する方法を思いついたのだ!」


剥き出しのコンクリートの部屋でふわりと薫る紅茶を啜っているとコーリャが子供のようにはしゃいでやってきた。

「そうですか、良かったですねぇ。」

「ここでクイ~ズっ!僕はどうやって証明するでしょおか!」

僕はティーカップをそっと下ろし、人差し指を唇に添え一定のリズムでとんとんと叩く。


正直、考えるまでもないというのが答えであってもいいが彼の愛情表現(?)はこうやってクイズ形式なのだと長年の年月で判った。ですので、僕はわかっていても考えているふりをした。



彼の自由意志を証明する方法は矢張り僕を殺すということに変わりは無いだろう。

然し、それでは彼と親友だった頃と変わらない。では何故彼は突然僕に思いついたと報告したのだろう?


それは、実行する時が来たから。

僕は少しばかり口角をあげた。するとコーリャはニコリと笑い「ドス君」と僕の名前を呼ぶ。


僕は静かに目を閉じた。彼は次に私の首に両手を添える。そして段々と、段々と力を加える。



「矢っ張りドス君を殺さなきゃ真の自由意志は証明できない」

「本当はね、親友の儘君を殺したって構わなかったでも僕が君と親友以上の関係になりたいと思ったのさ」

「だから僕は僕に従い恋人という関係の上で君を殺すということで僕は僕の意志に逆らうということが出来る。」



コーリャの声は微かに震えているようにも聞こえたが笑っているようにも聞こえた。


「でもそんな事を云ったらドス君は僕が利用したって想いかねない。でも僕は本当に君を心から愛していた。」

「気が狂ってしまうほどに僕はドス君のことが大好きだ。そう思っているのは僕であって僕でないが、確かに僕という人間は君を愛していた。」



僕はそっと目を見開いた。僕の視界に映ったのは麗しい瞳に涙をため笑っているコーリャの姿。


嗚呼、矢張り人間は罪深い。そしてその罪深さが愛おしい。コーリャのように狂ってしまうほどに愛おしい。

自分の欲を満たすため恋人を殺すコーリャも、満たされたくて浮気をする女性も。浮気をされて腹を立て女性を殺す男性も。


皆、罪深く愚かだが、それは一枚の絵のように美しい。



「コーリャ。僕を殺してください。」


そう云うと彼はぱっと、手を離した。

彼は小さく蹲る。

「何故?殺さないんですか?」


「僕はやっぱりもっと溺愛してから君を殺すよ」


彼はくるりと背を向け僕に一杯の紅茶を淹れた。カップからたつ湯気は僕のもやもやした気持ちを具現化しているようだ。


コーリャが僕を殺さなかったのはきっと僕が殺してと頼んだから。そこで殺したいと思ったから。そして、その思いに従えば真の自由意志の証明にならないから…



僕のせいなのです?

彼は恋人にこんな惨めな思いせるのです?

貴方なら僕を殺してくれると期待したのはいけなかったのです?



「コーリy…」



口の中に甘くて、少し暖かい物が入った。暫く舌の上で転がすとそれが飴玉ということが判った。

「ドス君のせいじゃないよ?ただ僕がそうしたいと思っただけ。」

「その期待は今晩別のことに回そう」

彼はそう云い僕の口を塞ぐ。



粘膜越しに伝わる彼の体温に溶かされそうだ。先程までの息苦しさも不穏な気持ちも全て溶かされる。



矢っ張り僕も彼と同じように罪深い。そんな僕を溺愛すると云ったコーリャも同じく罪深いですね


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