ある日、学園の図書館でミーティアを見かけた。彼女は王宮からの依頼で、魔法の研究のために学園を訪れているようだった。近くには王宮近衛隊の人達が居る。偶然、秘密の図書館の隠し扉近くで彼女とすれ違った。私は息を呑み、チャンスを逃すまいと決意した。侍女も近衛隊も近くにいないことを確認し、彼女を隠し扉の奥に誘い込んだ。
「ミーティア、ちょっと珍しい本を見つけたの。見てもらえる?」
私の声は平静を装っていたが、心臓は激しく鼓動していた。ミーティアは疑うことなく微笑み、ついてきた。
薄暗い図書館の奥で、私は準備していた禁術の陣の中心に彼女をそれとなく立たせた。古書に記された呪文を読んでいるかのように唱えると、少ない魔力が渦を巻き、頭がクラクラした。次の瞬間、視界が暗転し――気がつくと、私は白金の髪と蒼い瞳を持つ身体にいた。
ミーティアの身体だ。
私は鏡もない図書館で自分の手を眺め、震えた。彼女の繊細で細い指、彼女の滑らかな肌。私の身体には、ミーティアの強大な癒しの魔力が流れているのが感じられた。一方、わたしの身体に入ったであろうミーティアは気を失って床に倒れていた。私は急いで彼女を隠し部屋の外へ引きずり、周囲に見つからないよう細心の注意を払い、彼女から遠く離れ、近衛隊の居る場へ向かった。
禁術は成功した。
私はミーティア・シルヴァになったのだ。