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セックスしないと出られない部屋
そんなものが創作の中の、おかしな幻想の存在だったのも過去のこと。超少子化社会が進んだ20XX年、今や年間の出生人数は50万人を切り、政府はその対策に必死になっている。
そこで文科省は何を考えたか新たな性教育を必修化した。それこそが、いわば「セックスしないと出られない部屋」とも言える方法である。
やることは至って簡単。高◯二年生の夏休み明け、ランダムに(と言っても多少人間関係は考慮される)選ばれた男女二人組が政府直営のホテルの一室に案内される。後はその中でやることをやれば終わりだ。
モテない男子からしたら願ってもいないシステムだと、思春期真っ只中の少年、山内仁は考えていた。上手く行けば学年一の美女とヤれるかもしれないなどと思っていた。思ってしまっていたのだ。
「な、なんで、お前がここにいるんだよ」
指定されたホテルの部屋に入った瞬間、彼の希望に満ちた部屋は絶望に変わった。ベッドと簡単なキッチンやシャワールームがあるワンルームのアパートのような部屋に、美女はいなかった。
ベッドの上に腰掛け、仁と同じく驚きと悲観を滲ませた表情をしているのは、これまた仁と同じく”男子”テニス部員の林新であった。
「仁……お前、部屋間違えてるんじゃないか?ほらお前バカだし」
「間違えてねえよ!」
そう、間違えるはずがない。この部屋の入口の前でかざしたカードキーにはICチップが内蔵されており、正しい部屋でなければ反応しないし、もちろんオートロックの扉は違うカードキーでは開かないようになっている。
第一、胸と……股間を膨らませながらこの日を待ちわびていた仁が、部屋を間違えるなんてありえなかった。
「じゃあ学校側が間違ってるのか……?」
どちらかが違う部屋に入室したかもという議論は無意味だと気がついた2人は、とにかくこの部屋から脱する方法を探すことにした。
まず外部に助けを求める手段を探った。部屋に電話はなく、持ち込みが許可されているスマホは受信のみ可能でメッセージを送ったり投稿したりするなど発信する機能は制限されている。備え付けのパソコンは性行為の基本的なやり方から少しトリッキーな性癖について網羅されたデータベースを閲覧できるのみでインターネットに接続することはできなかった。
外に繋がる抜け道も無かった。ドアは開かない上に頑丈で壊すことはできず、換気扇やダクトは男子高◯生が通り抜けられるほどの幅は無い。その上部屋の壁はやたらと厚く声を出して助けを求めることもできないようだった。唯一外に繋がる扉は一日三回食事が供給される小さなボックスのみで、これもまた扉は分厚く外側と内側で同時に扉が開かないようになっていた。
この部屋は外部との連絡を完全に遮断する作りになっている。脱出するには少年二人は性交をするほかないということだ。
「はー……どうすっかな」
先に嘆息を漏らしたのは新だった。高性能なAIによって監視されているこの部屋は、セックスっぽい行動、で出ることは不可能だ。おそらく一年も何も行動せずいれば助けが来るかもしれないが、二人には時間がなかった。
「二週間後だよな、大会」
二人は夏休み明け、秋のテニス部トーナメントを控えているのだ。逃げているだけでは状況は好転しない。
「やっぱ……する、しかないのか」
新の言葉に、二人の間に緊張が走る。する、とは目の前の友人と、男と、性交するということである。
仁は……もちろん新もそんなことは願い下げだったが、背に腹は代えられない。仕方なく二人は大会までにさっさとセックスしてここから出て行こうと結論を出した。
「……あった」
部屋の隅に設置された旧型のデスクトップPC、セックスについて真面目に書き連ねられたアホらしいページの中に、新は目的のページを見つけた。
「肛門性交……こんなのまで載ってるのか」