次の日の朝、俺は軽い足取りで登校した。
教室に入り、ないこの席に目を向けるとその席はクラスと屈強な男達に囲まれていた。
「よかっなぁ、お前。耳聞こえねぇお前に優しくしてくれるやつが転校してきて。」
「こんなお前に話しかけるなんてアイツ頭おかしいんじゃね?」
「っはは、それはあるかも。」
ないこは戸惑いながら周りに合わせるように弱々しく微笑む。
「はぁ?お前何笑ってんだよ。気色悪りぃ」
1人の男がないこに対して拳を向けた瞬間、俺の中で何かが切れた気がした。
気がつくと俺の前には倒れ込んでいる男。
「お前!!急に何すんだよ!!」
その時俺が彼のことを突き飛ばしたことに気がつく。
「…お前がないこを殴ろうとしたからやろ」
心の中の恐怖心を抑え込みながら淡々と告げる。
ないこに目を向けると、彼はひどく驚いたような顔をしていた。
「ないこ…。」
今自分の目の前で起こったことの理解が追いついていないようだ。
取り敢えずないこに事情を説明しなければ、と思っていた俺は後ろから襲いかかってくる男に気が付かなかった。
「っあ”…。」
背中に痛みが走り、その場に座り込む。
「マジで調子乗ってんじゃねぇよ。」
男は俺に対して怒りの表情で近づいてくる。
やば…終わったぁ。
俺は目を閉じて顔を伏せる
「転校生だからってイキっ…」
言葉が途切れて何かが倒れる音がしたので顔を上げると、男が白目を剥いて倒れていた。
「っえ、?」
周りを見渡すと、手の汚れを払うように両手を擦り合わせるないこがいた。
「ないこ…」
男の取り巻きたちは怯えたような目をしてその場を立ち去った。
俺はスマホに文字を打ち込んでないこに見せる。
『あれないこがやったん?』
『うん。まろが殴られそうになってるのみたら我慢できなくて』
彼は伏せ目がちに微笑んだ。
『大事な人が危なかったら色々抑えられなくなるでしょ?』
大事な人、その言葉で胸がきゅっとなった。
『それに、まろだってさっき俺のこと守ってくれたでしょ?あれ嬉しかった。』
俺は文を読み終えると、溢れてくる気持ちを堪えることができなくなって彼の腕を引き寄せた。
「っわ、」
彼の口から溢れた声が愛おしくて、腕の中の彼を強く抱きしめる。
彼の髪から優しく漂う甘い香りが鼻腔をくすぐった。
彼と身長は数センチしか変わらないはずなのに俺よりもずっと細くて少しでも力を込めれば簡単に折れてしまいそうだった。
俺が知らないうちに誰かに壊されてしまうのではないだろうか、ふいに不安がよぎって彼の肩に顔を擦り付ける。
するとないこの手が俺の頭に触れた。
ぱっと顔を上げると思っていたよりも近くにないこの顔があって言葉が詰まった。
彼は「怖かったの?」とでも言うような優しい表情を浮かべながら俺の髪をわざとみ出すように撫でてくる。
ぐちゃぐちゃになった俺の髪を見て吹き出す彼。
彼の笑顔が好き。
彼の纏っている儚い雰囲気が好き。
たまに漏れる声が好き。
彼の甘い香りが好き。
ちらっと見える八重歯が好き。
好き。
好き。
好き。
好き。
好き。
「好き。」
気づいたら口から溢れていて、俺は一瞬焦ったがないこには聞こえていないことを思い出して安堵する。
でももし、聞こえていたのだとしたら彼はどんな反応をするのだろう。
いつか伝えられたらいいな、
俺は自分の気持ちを抑え込むようにして再度彼に抱きついた。
まろは馬鹿だなぁ、
俺に必死に抱きついて離れない彼の乱れた髪を直すように撫でながら思う。
俺が耳聞こえないからって舐めすぎなんだよ。何年音なしの生活をしてると思ってるんだか、俺はある程度唇を読むことができる。
だから彼の先ほどの言葉も理解した。
それに、言われなくたって彼からの好意には気づいていた。
授業中に彼から感じる熱い視線、俺のことになるといつもの冷静さを無くして本能のままに動く。
そんなん確定じゃん。
まぁ俺を舐めた罰として一発やってやろ、と思い彼の頬に触れる。
こちらを見つめてくる彼。
その柔らかそうな唇に優しく口付けた。
彼は顔を真っ赤にしてこちらを見つめてくる。まるで林檎のようだ。
「おえもすきだお、」
伝わったのか不安だったが、彼の反応を見てしっかり伝わったことを確信する。
驚いてあたふたしている彼が愛おしい。
君の照れた顔が好き。
強くて優しいところが好き。
少し抜けてるところが好き。
いつもキラキラしているところが好き。
柔らかい唇が好き。
好き。
好き。
好き。
好き。
好き。
恋に音なんて必要ないんだ。
音なんていらない。
君だけいればそれでいい。
end
近日中に出すとか言っておきながら1ヶ月経ってました…大変申し訳ございません!!🙇🏻♀️💦
体調を崩していたりテスト期間だったりで遅くなってしまいました💦
そういえば私お友達が欲しいんですよ!!
お優しい方コメント待ってます🫶
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
コメント
8件
アイシテル
好きです主様