Mrs. GREEN APPLE/もりょき/難聴/BL
藤澤「あれ…?なんで…」
いつも通り起きていつも通り支度をしていつも通りテレビをつけた
でも何故かそこにはいつも通りじゃない状況があった。
藤澤「聞こえない……ちゃんと音量いつも通りの大きさなのに」
壊れたと信じたい。でも壁や床は音量を上げるにつれてミシミシ鳴る。音が響いてるんだ
藤澤「嘘でしょ、、?(震)ピアノは…?」
聞こえなくとも自分の声が震えているのが分かる
俺はすぐにピアノの部屋に向かった
きっと聞こえる。今まで当たり前に聞こえてたんだから。ずっと頑張ってやってきたんだから
俺は隠しきれない焦りから強く鍵盤を押した
藤澤「….聞こえ…ない…(泣)」
もう自分ではどうすることも出来なくて元貴に連絡を入れてその場に座り込んだ
ー元貴sideー
涼ちゃんは俺の恋人。ずっと想いを寄せていてついこの間その恋が実った。
でも涼ちゃんにはまだ言えていないとある秘密がある
〜数日前〜
藤澤「なんか最近身体がおかしいんだよね」
大森「あ〜…体調悪い?」
藤澤「いや?なんか…全身が痛い。最近忙しいから筋肉痛かな笑」
大森「歳じゃない?笑。でも一応病院行きな」
藤澤「そうする笑。一緒に着いてきて?」
俺ら2人ともこの事について重く捉えていなかった。筋肉痛なんてよくある事だし熱も無いし。
次の俺のオフの日に一緒に病院へ行った。そこでの出来事だ。
俺が一生背負わなければならない秘密を持ったのは
ー病院ー
医師「….少し、藤澤さんは休んでてください。大森さんちょっと…」
検査が終わり結果を聞こうとしたら先生が険しい顔で俺を別室に招いた
大森「どうかしました…?」
医師「、、落ち着いて聞いてください。藤澤さんは難病にかかっています。完治は難しく、進行を和らげる薬には難聴の副作用があります…」
心臓がドクッと鳴った。あまりにも状況がデカすぎる。こんなの、飲み込めるわけない
大森「何言ってる…んすか…」
医師「副作用はあくまで”難聴になる可能性がある”というだけで確証はありません。これから一緒に最善の治療をしていきましょう」
俺はその言葉で気付いたら先生の胸ぐらを掴んでいた
大森「難聴にならない…って確証もねぇじゃんか。難病?完治は無理?最善の治療、?ふざけんな!!!!」
矛盾ばかりの先生の言葉に今まで感じたことがない程の怒りが湧いた。思い返せば、そう言わざるを得なかったんだろうけど、俺は綺麗事が誰よりも嫌いだったんだ。特に、愛人に向けての綺麗事は。
医師「…一緒に乗り越えましょう。藤澤さんにはお伝えしますか?」
大森「伝えないでください。…もういいですか?」
やけに冷静な態度にまでイラッときて、俺は返事を聞かずに部屋を出た。
藤澤「おかえり〜。何だったの?」
大森「ん?ただの風邪だって笑。でも長めに薬飲み続けないと。ほら、最近流行ってるでしょ?」
藤澤「あ〜、インフルだっけ?」
大森「うん。ほら帰ろ?悪化する前に」
藤澤「そだね〜ありがと!」
それから涼ちゃんは俺の言う通りに薬を飲み続けた。俺と涼ちゃんは同居してなかったから心配で仕方なかったけど
大森「さて…と。今日は番組の収録か」
朝起きてスケジュールを確認してコーヒーを飲んだ
ーピコンー
大森「ん?誰からだろ」
藤澤 ”元貴…耳が聞こえなくなった”
大森「、、、、、、、、」
背筋が一気に凍る。あれから痛みは改善したみたいで、涼ちゃんが病気ということを信じないようにしてた。でも、やっぱり本当だったんだ
“ちょっと待ってて。今行く”
〜藤澤宅〜
大森「インターホン押しても聞こえないか….お邪魔します」
俺は事前に貰ってた合鍵を使って家の中に入った
大森「涼ちゃん〜どこー?」
涼ちゃんを探していると1つの部屋から物音が聞こえた
ーガチャー
大森「あ、居た……………涼ちゃん。」
そこはキーボードがある部屋だった。椅子に座ることもせずその場でしゃがみ込んで泣いていた
藤澤「(驚)…..もとき、、、泣」
俺がそっと肩を抱き寄せると少し驚きながらも俺にもたれかかってきた
大森「ごめんね。黙っててごめんね。言えないんだよ。ごめん(泣)」
何度も何度も謝るけど何一つ涼ちゃんには届かない。それが痛いほど伝わってきて俺の目から大量の涙が溢れてきた
藤澤「…俺さ、、、、音楽もう出来ないかもしれない(泣)」
慌てて涼ちゃんの口を塞ぐ。聞きたくないし、言ってほしくない。涼ちゃんは俺の大切な仲間で代わりなんか居ないんだ
大森「出来るから。絶対……出来るから….」
どれだけ必死に言葉を発しても涼ちゃんにはただ抱きしめてる俺って認識でしかない
俺は持ってきた紙とペンで言葉を綴った
“そんなこと言わないで。絶対出来るから”
紙を渡すと涼ちゃんはそれを握りしめ俺に再び抱きついた
俺は頷いてほしかった。「そうだよね。出来るよね」って。
でも涼ちゃんは決して頷かない。紙に返事を書くわけでもない。
それは諦めているからだと俺でも分かった
大森「涼ちゃん…….泣」
本人の意思を尊重するべきだろうか。でもきっと涼ちゃんの本音は音楽をやりたいに違いない
格闘していると涼ちゃんが立ち上がりキーボードの方へ向かった
藤澤「もと……き…..みて、、泣」
力強く鍵盤を押し始めた涼ちゃん。
そのキーボードからは当たり前に音が鳴った。
強く押せば押すほど音が大きくなって自然と眉間に皺を寄せた
藤澤「おれ……この音聞こえないの泣。無理だよ…泣」
しゃくり声をあげて俺に泣きついてきた
ねぇ、神様。返してよ。
涼ちゃんの耳も人生も奪った音楽も。全部返せよ
涼ちゃんは頑張ってたんだ。抱え込みやすいのにちゃんと俺達と一緒に走ってくれた。
これからも一緒に音楽をやりたい。俺の作る音楽を一緒に完成させてくれるのは若井と涼ちゃんだけ。
その為なら何だってやる。小さな希望でも、涼ちゃんならきっと乗り越えられる
俺はまた紙とペンを渡した
大森 “涼ちゃん。補聴器で頑張ってみない?聞こえづらいかもしれないけど、可能性はあると思う”
1度俺の顔を見て、今度は深く頷いてくれた
藤澤 “頑張る”
ー数日後ー
大森「今後は藤澤は補聴器を付けての活動となります。皆様に心配おかけしないよう精一杯頑張っていくのでこれからもよろしくお願いします」
コメント
“涼ちゃん〜!頑張って!”
“涼ちゃんなら出来るよ!”
“これからも3人が大好きです”
あの時俺が涼ちゃんに説明していたら、他の選択肢があったかもしれない。
もっと早く気付いてあげられればこんな事にならなかったかもしれない。
でもこれでいい。今の涼ちゃんは前みたいに笑って楽しそうに活動をしてる
若井「ちゃん…涼ちゃん!」
藤澤「うお!びっくりした笑。なに〜?」
若井「ごめん笑。声ちっちゃかったね笑。一緒に帰ろ」
藤澤「いいよ〜あ、元貴も一緒ね?」
若井「はいはい笑」
いつか涼ちゃんの身体に誤魔化しきれない負担が襲ってくる。…活動が出来なくなるほど大きな負担が。守りたい。代わりたい。考えるだけで叫び散らかしたくなる
でも運命は変わらない。神なんか居ない
その日が来るまで俺は何があっても涼ちゃんを守ろうと思う
昔と変わらない、2人の笑顔が見れるこの環境が幸せで大好きだ
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