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5 - エピローグ

2025年09月21日

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                      ─数年後─


駅前のカフェで待ち合わせた。

「翔太!」


振り向くと、凛が手を振っていた。

少し髪が伸びて、大人っぽくなったけど、

目の奥の“凛らしさ”は、変わってなかった。


「ひさしぶり。元気そうだね。」


「うん、そっちも。」


ぎこちなくはない。

でも、少しだけ“何かを思い出す”ような間があった。


***


お互いの近況を話しながら、コーヒーを飲む。


「パートナーとは、うまくいってる?」


「うん、まあ。波はあるけど、安心できる人かな。」


「翔太っぽいね。」


「凛は?」


「私も。ちょっと頑固だけど、好きなものとか価値観がすごく近くて。」


「そっか、よかった。」


ふたりとも、恋をして、泣いて、うまくいかなかったこともあって、

でもちゃんと“この人だ”と思える誰かを見つけた。

それだけで、少しだけ救われる。


けど、ふたりとも、今日この場所で再会しようと思ったのは、

ただの「久しぶり」だけじゃなかった。


翔太が、ふと目をそらすように言った。


「…この前さ、ふと思い出したんだ。中学のときのあのベンチ。」


「雪が降った日?」


「うん。あのときの、凛の言葉。」


「なんか言ってたっけ、私。」


「“親友でいようね”って。」


「ああ…言ってたっけ。」


翔太はカップを置いて、しばらく黙ってから、少しだけ声を落とした。

「今なら分かる気がする。 あれって恋じゃなかったけど、『 心がほどけた』相手だった。」


「うん。誰かに理解されたって思えるのって、恋愛以上に大事なことあるよな。」


「翔太にだけは、『誰を好きか』よりも、『私がどんな人間か』をちゃんと見てもらえてた気がしてた。」


翔太はうなずいた。


「でも今でも、難しいなって思っちゃう。 誰と出会っても、どこかで考えちゃう。」


「それ、ちょっと分かる。」


ふたりの中で交わされたたくさんの言葉。

“恋じゃない”からこそ、

“親友”という言葉だけでは言い尽くせない、

ただ「君」だったから話せたこと。


それが、ちゃんと今も、ふたりを支えていた。


***


帰り際。


「次に会うときは、パートナーも連れて来ようか?」


凛が笑って言った。


翔太も笑ってうなずいた。


「いいね。びっくりするだろうな、『この人があの親友?』って。」


「でも、ちゃんと紹介したいよね。翔太のこと。」


「俺もだよ。」


「だってさ、恋人じゃないけど、 一番最初に『自分をそのままでいられた人』だったから。」


「それ、俺もまったく同じこと言おうとしてた。」


春の風がふわりと吹いた。


中学の頃、雪が積もったあの場所は、もう取り壊されてしまって存在するしない。

でもその記憶は、今もちゃんと積もったまま、 ふたりの中に残っている。

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