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四月、新年度の始業式。体育館には整列した生徒たちのざわめきが満ちていた。俺、せなはよく、人見知りすぎて俺にしか懐かないかいちとつるんでる。かいちは、俺の前ではいつもふざけるくせに、俺がいなくなるとまともにしゃべれなくなるタイプ。俺はそれを「陰キャいち」って呼んでる。—そして、俺が近くにいない今、かいちは三列も離れた場所で縮こまっていた。始業式が始まるまで、約10分。欠伸を一つこぼす。
かいちはというと、時計を見ては、直ぐ下を向き身を縮こませている。
耳、超真っ赤。
(陰キャいち、発動中じゃん。)
(話しかけてやろうかな)
かいちは周りを見ては、みんな別の人と話しているのを見て。また下を向く。
(…いーや、ちょっと、いじわるしてやろ)
「…なぁ! 始業式まで時間長すぎじゃね?」
「ん? 、あぁ、そうだねぇ。」
かいちではなく、別の人にやや、大声で話し始める。
かいちはこちらを一瞬向くが、希望でも断たれたかのようにさらに下を向く。
ーフフ…アハハ!!
自分でも引くほど笑ってしまう。
「やっっば!」
その時、隣にいた、おっとりしたクラスメイトが言った。
「せな君は、とってもかいち君のことが好きなんだねぇ。」
「…は?」
隣のやつはフワフワとした口調で続ける。
「だって、せな君。ずっとかいち君の方向いてるでしょ。
普通なら、そんな見ないよ。」
「…いや、俺はかいちなんて見てなー」
…見てた、かも。
かいちと目が合う。
少しだけうるんだ瞳がこちらを見つめている。
「‥…」
反射的に視線をそらした。
始業式のあいさつが始まった。
かいちはそのまま、誰とも話さず、始業式を終えていた。
教室に一人で帰ろうとするかいちの肩を叩く。
「よっ、かいち」
かいちはゆっくり俺に視線を合わせる。
そして…
「あっ、せな! てか、あの校長話長すぎじゃね?!」
一気に顔の色が明るくなる。声のトーンもワントーン上がる。まるで百面相。ーー安心する。
「あぁ、後ハゲだった」
便乗してみると、さらに声が一際大きくなる。
なんなら身振り手振りまでつけてる。
「まじそれな〜!」
「てか、お前。始業式の時陰キャすぎじゃね?」
と笑うと、かいちはさっきみたいにみるみる顔を真っ赤にしていく。半泣き。
「………うっさい」
とだけ呟く。
ドクン
心臓が大きく鼓動した。
「…は?」
「可愛すぎ。」
かいちがこちらを見て目を丸くした。
思わず出てしまった言葉に口元を押さえる。
ーあれ、今、俺、何て、
「いや、これは…」
カーテンが揺れる。
顔に熱がこもっていくのを感じる。
俺とかいちの間に沈黙が流れる。
先に口を開いたのはかいちだった。
「…はぁ?!!!、可愛いってなんだよ?!」
あまりの、声量の大きさに耳がキーンとする。
「俺だって、なんかよくわかんなくて。」
意味のわからない言い訳が流れ出る。
「…っ、まじで何なのお前、始業式の時は俺のこと放置するし、陰キャだって罵ったかと思えば、可愛いって言い出すし……。
もう、せなの事なんか知らねぇから!!」
そう言ってかいちは小走りで教室に戻っていった。
「……ちょっと、待って、言い過ぎたーー」
離れていく背中が随分と小さくみえる。
…周り、誰もいない。
桜の花びらがゆっくり手の甲に落ちた。
なぜか、体育館の鏡が視界に映る。
……俺の耳、超赤い。
「…まじで、なんなんだよ、ほんと。」
以下、人物設定
加藤せな イケメンでノリが良く、誰とでも喋れるタイプの陽キャ。かいちのことは、自分がいるときといない時じゃないとなんも喋れてなくて、面白いと思ってる。たまに、かいちが自分以外と会話成立してるのを見ると、無自覚に嫉妬している。
王かいち せなの友人。せなの前で凄くテンションが高くて、普段話さない人とも、ノリ良く話すことが出来る。しかし、周りにせながいなくなった途端耳真っ赤にして誰とも話せなくなる、陰キャモードが始まる。