テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
異世界都市【アクシュアル】
魔法と技術が共存し、人間や獣人、悪魔、妖精など様々な種族が暮らす巨大都市。
その華やかな街並みの裏では、表に出せない問題も数多く存在していた。
盗賊団の襲撃。
失踪事件。
呪い。
魔物被害。
貴族たちの陰謀。
そんな誰にも頼れない依頼を引き受ける者たちがいる。
人々は彼らをこう呼んだ。
――依頼屋。
◇◇◇
アクシュアルの外れ。
古びた時計塔の近くにある二階建ての建物。
そこが依頼屋の拠点だった。
扉には小さな看板が掛かっている。
『依頼受付中』
今日もまた、一人の客が訪れていた。
「お願いです……娘を探してください……!」
中年の女性が涙ながらに頭を下げる。
その前に座る青年は静かに話を聞いていた。
青い髪。
蒼い瞳。
どこか人間離れした雰囲気。
彼の名はリライト。
悪魔の血を宿す青年だった。
「落ち着いてください。最後に会ったのは?」
「昨日の夕方です……!」
「分かりました。」
リライトはメモを取る。
その横では金髪の青年が欠伸をしていた。
ルークス。
アクアウルフ族の男。
普段は人間の姿をしている。
「最近、失踪多いな。」
「今月だけで八件目。」
リライトが答える。
すると奥のソファから少女の声が飛んできた。
「八件?もっとあるよ。」
赤い瞳の少女。
セレスティア。
不老長寿と火炎耐性を持つ存在。
「私が聞いただけでも十二件。」
「そんなにか。」
ルークスの表情が少し険しくなる。
さらに机の上に資料が置かれた。
置いたのは黒髪の少女。
ユリア。
普通の人間でありながら驚異的な耐久力を持ち、人を操る能力を持つ少女だった。
「共通点がある。」
ユリアは資料を広げる。
そこには失踪者の情報が並んでいた。
「全員、失踪前日に同じ場所へ行ってる。」
「同じ場所?」
リライトが資料を見る。
そこに書かれていたのは。
【マリオネット劇場】
アクシュアル旧市街にある古い劇場。
数年前に閉館したはずの場所だった。
「営業してないよな?」
#現代ダンジョン
夜鐘
959
羽海汐遠
11,823
13
1,588
ルークスが首を傾げる。
「してない。」
ユリアが即答する。
「なのに目撃情報がある。」
部屋が静まり返る。
閉館した劇場。
そこへ向かった人々。
そして失踪。
偶然とは思えない。
「面白そう!」
セレスティアだけが少し楽しそうだった。
「絶対に面白くない。」
ルークスが即座に突っ込む。
しかしリライトは資料を見つめたまま動かなかった。
悪魔の血がざわついている。
嫌な予感がした。
まるで何かが自分たちを待っているような。
「調査しよう。」
リライトが立ち上がる。
「今夜、マリオネット劇場へ向かう。」
その瞬間。
窓の外で強い風が吹いた。
カタカタと窓が揺れる。
そして机の上に置かれていた資料が一枚だけ床へ落ちた。
ユリアが拾い上げる。
その裏には、誰も書いた覚えのない文字が浮かんでいた。
『ようこそ。次の役者たち。』
四人は顔を見合わせる。
依頼屋として数々の事件を解決してきた。
だが。
この時はまだ誰も知らなかった。
これが後に
「マリオネットの呪い」
と呼ばれる怪事件の始まりだということを。
コメント
1件
おお、読み終わりました!「マリオネットの呪い」……閉館したはずの劇場に誰が何の目的で?ってワクワクしますね。リライトの悪魔の血がざわつく描写がすごく好きです。四人のキャラの掛け合いも自然で、この先どうなるんだろうって気になります。続きが待ち遠しいです!