stgrのrdoさん体調不良 ※嘔吐表情あり
ラディ×ラダオ 心無き自我あり
視点が変わります
名前を借りているだけで本人様とは全く関係がないので理解してお読みください
各自で自衛お願いします
最近は、疲れがたまっているせいなのか思うように体が動かない。仕事でも、ミスを連続してしまい職場の皆に迷惑を掛けてしまっている。
「ふぅーっ」
大きなため息を吐きまたパソコンと向き合う。今日は大型犯罪が起こっておらず、比較的平和な日だ。だから今は事務作業を行っている。
警察は事件がなくても仕事は無くならないので常に働いている状態だ。他の皆もそうだからしょうがないのだが、警察というのは本当に休みが少ないのだなと実感する。
「そんなため息ばっか吐いてると、もっと疲れるぞー」
後ろから間延びした声が聞こえる。成瀬力二、ペンギンマスクが特徴的な俺の後輩だ。
「そういう成瀬も疲れてんじゃん」
「んー、もう事務作業飽きた。おもんない」
同感だ。警察としてどうかと思うが、何かしらの犯罪が起こらないと正直楽しくない。
今犯罪が起きても、万全の状態で対応に行けるかどうかは怪しいが、それでもきっとこんな事務作業よりかはいく分マシだ。
すると、俺たちの愚痴を聞いていたかのようにアーティファクトの事件の通知が来る。
「よっしゃ事件だ!成瀬行きまーす」
「らだおヘリで行きます」
それぞれが報告をし合い、事件対応の準備をする。
ヘリを離陸させ、現場へ向かう。揺れる機体をなるべく水平に保ち、慎重に運転していく。
今日はいつもより警察官の人数が多いのできっと上手くいくだろう。疲労で少しかすむ目を凝らし、まわりに敵が居ないか探す。
『屋根上、2人います』
『建物下、心無き1人ー』
『了解っす』
『建物内、ダウンさせました』
次々と現状報告の連絡がされる。今のところ警察側のほうが優勢なようだ。屋根上の敵は未だダウンしていないらしく、パトカーを上から攻撃している。
ヘリアタックを喰らわせようと建物に近付く。細かな動作を繰り返し、相手の射線に入らないよう神経を尖らせる。
ガンッと大きな音を立て、ヘリのプロペラ部分で攻撃し、相手をダウンさせた。一度に2人ダウンさせることができたらしく、2人とも腹を押さえて倒れている。
『屋根上、2人ダウンしたー』
そう報告をし、地上から離れようとする。
「えっ?」
全身に強い衝撃を受けた時にはもう遅かった。
ドンッと鈍く大きな音をたてながら身体が投げ飛ばされ、宙に浮く。
どうやら後ろからヘリごと撃たれたようだった。破損部分が激しいからロケットランチャーかなにかだろう。
「う”あ”っ」
全身に激痛が走る。いまの衝撃でヘリは爆発しなかったものの、被っていたヘルメットが砕けた。どちらももう使い物にならないだろう。
いつも通り、そういつも通りだったら絶対に避けることができていた。
勢い良く地面に叩きつけられる。パキパキと人間の身体からは発せられないような音が鳴る。臓物を体内でぐちゃぐちゃにかき混ぜられたかのような気持ち悪さと、耐えがたい激痛が全身を駆け巡る。
『らだお!大丈夫か!?』
『海沿いの建物付近でヘリが墜落しました。多分らだおさんのヘリです』
『らだおさんの応援行きます!』
自分がいなくても上手く指示が通っていることに安堵する。苦痛で歪んでいた顔に一瞬だけ笑みがこぼれた。
キーンと鳴り続ける耳鳴りの隙間から足音が聞こえた。唯一動く眼球を必死に動かし、ぼやける視界で辺りを見回す。
あぁ…これはもう、だめだなぁ…。
目線の先にはロケットランチャーを肩に掛け、両手で持ったアサルトライフルの銃口をこちらに向けている心無きの姿が映っていた。
「あれぇ?“空の悪魔”が俺のロケラン1発で死にかけちゃうんだ?所詮警察もそんなもんだよねぇ」
煽るような口調で話しながら傷口を踏む。踏まれる度に赤黒い血液が溢れる。
「っあ”、ゃ、めろ”」
「ははっ、かわいそ。倒れたまんまでそんなこと言われてもなんにも怖くないよッ!」
「う”っ、あ”ぁっ…」
みぞおち辺りを蹴られ、息ができなくなる。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
「ぅあ”っ、う”え”ぇっ…」
血液と胃液が混ざったものが口から溢れ出る。次第に抵抗する力もなくなっていき、ただ荒く呼吸を繰り返した。
俺のことを散々蹴った心無きは、動かない俺に興味を無くしたのかどこかへ行ってしまったようだった。
苦しい。息ができない。こんな姿、誰かに見られたら最悪だな。もっと万全な体調で事件対応をしていたら絶対こんなミスは犯さなかっただろうなぁ。
そんなことを思いながら遠退いていく意識に身を任せる。もう、このまま死んでしまうのだろうか。自分が死んだら悲しんでくれる人はいるだろうか。
いろんな感情がごちゃ混ぜになって涙が出てくる。
「ごめっ……ん、ね……」
掠れて声にならない声でそう言い目を閉じる。懐かしい誰かの声が意識が途切れる前に聞こえた気がした。
南の埠頭付近で、次々とダウン通知が来ている。
あの場所ならばアーティファクトだろうか。救急バッグを持ち、現地へ行く支度をする。
「ふうっ、今日も頑張りますかぁ」
そう呟きながらヘリを離陸させた。
現地に着くと警察車両が何台か停まっており、至るところから銃声が聞こえてくる。
特に銃声が轟いているところの少し離れにヘリを停め、救急バックを持つ。
「個人医でーす。ギャンでダウンしてる人いますかー?」
倒れている大半は心無きだった。もう終わってしまったのだろうか。そんなことを考えながら歩みを進める。
「――っあ”」
どこからか誰かの呻き声が聞こえる。もし警察だったらまずいので物陰に隠れながら声のした方に顔を覗かせる。
「……は?」
声の主は自分の兄だった。ギャングカラーの服を着ていないからきっと心無きであろう。そいつが何度も兄の腹を蹴っている。
先ほどまで少しは抵抗していたように見えた兄だが、今はぐったりとしている。
「兄さんっ!」
本当はあの心無きを撃ち殺してやりたかった。だが、後々面倒になるのは避けたい。迷惑がかかるのは自分だけではないのだから。
首元に手を当てると微かに脈が動いている感触があった。しかし呼吸は浅く、ヒューヒューと隙間風が漏れ出ているようなか細い呼吸だ。
今一度目の前に倒れている兄を観察する。腹部から大量の血を流しており、口元からは血液を含んだ吐瀉物が溢れていた。数十ヶ所火傷のような傷があり、見るからに痛々しい見た目をしている。
心の中が怒りの感情で満たされる。体が震えた。こんなにも傷つける必要があったのだろうか。きっと何かしらの事故で動けなくなってしまったのをいいことに傷つけたのだろう。自分も含め悪いことをする者たちにとって、警察とは邪魔でしかない存在なのだ。憂さ晴らしかなにかでやったのだろう。
なぜ兄なんだ。俺は警察官の人たちは兄の大切な仲間だからなんの理由もなく傷つけるような真似はしない。だけど、今は兄じゃなかったらどれだけ良かっただろうと最低なことを思ってしまう。
「死ぬなよ……」
祈るようにそう呟く。慣れた手付きで応急処置をしていく。
出血部分を見つけるために服を脱がせると、想像以上に酷い身体に思わず目を見開く。その身体は目を背けたくなるほどに酷く、筋肉質ではあるがとても痩せており、肋骨が薄く浮き出ている。
「っい”っ……」
腹部を固定するために包帯を強く結ぶと、隣から呻き声が聞こえる。意識はないが、痛覚は残っているのだろう。
「もう少しだからな……耐えてくれよ」
きっと聞こえていないが彼に向かってそう呼び掛ける。必要最低限の応急処置を終わらせ、彼を慎重にヘリに乗せた。抱き上げた彼の身体は細く、筋肉と骨しかないような体つきをしていた。
苦しそうに呼吸を繰り返す弱った彼を見つめる。
「俺が絶対治してやるから待ってろよ」
瞼の奥にうっすらと光を感じ、閉じていた目を開ける。ぼやける視界の中で辺りを見回す。
懐かしい匂いを感じる。なんだろう、とても安心する匂い。離れてほしくない匂い。
身体を起こそうとすると、全身に鋭い痛みが走る。
「ぅぐっ……」
苦痛で顔が歪む。痛みと共に、意識を失う前のことが蘇る。そうだ、俺は心無きに何もかもをぐちゃぐちゃにされたんだ。自分の不甲斐なさに嫌気が差す。
包帯で巻かれた自分の手を見つめる。自分の腕からは得体の知れない管がいくつも繋がっていた。服のせいで見えないがきっと全身に包帯を巻かれているのだろう。
ズキズキと痛む身体に顔をしかめながらふと思う。ところで、自分のことをここまで介抱してくれたのは誰だろうかと。
「はぁ、やっと起きたかクソ兄貴」
俺の心を読んだかのように隣から声が聞こえてきた。
「ラディ?」
その声の主は俺の弟、青井ラディだった。いつもは泣いた顔をした仮面を被っている個人医、警察と敵対的存在である側の人間だ。しかし自分の家なのだから当たり前なのだが、今は仮面を被っていなかった。
「痛みは引いたか?って言ってもそんなことないよな。まだ血出てるし」
まるで独り言のようにそう呟くと、布団をめくり巻かれていた包帯を外していく。
「全然、自分でできるからいいよラディ。いろいろありがとう」
何から何までやってもらうのは申し訳ない。兄として、全て任せっきりにしてしまうのは恥ずかしかった。
「嫌だ。俺が最初から看病してんだから文句言うな。
兄さんの下手な巻き方でまた傷が開くのはごめんだね」
皮肉がたっぷり込められた言葉をぶつけられ、口をつぐむ。それもそうだ。医療についての知識は彼の方が断然上なのだから。
仕方なくされるがままに包帯を交換される。今まで自分の身体に巻かれていた包帯には血液が染みており驚く。
「て言うか兄さん、どんな体調で働いてたんだよ。慢性的な睡眠不足と栄養失調。それに身体の至るところに治りかけの傷があったぞ」
「っ……。いや、まだ動けてたから大丈夫かなって…」
全て図星で見苦しい言い訳をしてしまう。こんなにも見透かされていたとは。
まだ完全には癒えて無さそうだが、耐えきれない痛みではない。意識が飛ぶ前の疲労感は解消されていた。
「今、何日時だ!?俺はどのくらい寝てた!?」
はっと思いだし、矢継ぎ早に質問をする。
「おいおい、そんなに暴れたらまた傷が開くぞ。安心しろ、あんたが寝てたのは1日とちょっとくらいだ。その間警察はいつも通り上手くやってたみたいだぞ」
「1日…そんなに寝てたのか。誰かから連絡は来てたか?」
1日、少ないようにも聞こえるが警察はいつも人手が足りない。多方面に迷惑を掛けてしまい申し訳なさで目を伏せる。
「あぁ、いっぱい来たぞ。俺の家にな。安静にしてるから家には入るなって言っておいたけどあんたが起きんのを待ってるよ」
「そうか、じゃあ今すぐにでも連絡しないと!」
そう言いながら勢いよく上体を起こすと再び鋭い痛みが走る。
「っい”ぃ……」
「馬鹿、動くなって。俺からもう連絡しておいたから大丈夫だよ。今は他人のことじゃなくて自分のことを心配しろ」
汚れた包帯を交換し終わったのか気だるそうにラディが呟く。
「でも、本当に無事でよかった」
「んぇ?」
震える声でそう言いながら俺に抱きついてくるから酷く狼狽する。思わず腑抜けた声が出る。
「兄さんがもう起きなかったらって思ったら、怖くて寝れねぇんだよ。頼むから自分を大切にしてくれ」
抱きつかれているため表情はわからないが声色が涙ぐんでいるように聞こえた。
「ごめん、ラディ」
「うるさい。もうちょっとこのままでいさせろ」
彼が俺の服を掴んでいるため、離そうにも離せない。洋服を伝って彼の温かな体温を感じる。苦笑いをしながら背中を撫でた。乱れている呼吸を整えるように一定の速さで撫で続ける。
こんなにも兄のことを思ってくれる弟がいるだろうか。自分のために精一杯看病して、自分のために泣いてくれる。こんな兄思いの弟きっと世界中探してもどこにもいないんじゃないかと思う。
個人医というのは常に警察と敵対関係にあるので、あまり俺とは話したくない、むしろ忌み嫌われるはずだ。しかし、そんなことも気にせずここまで介抱してくれた弟には頭が上がらない。
呼吸が少しずつ整ってきたところで、ラディがゆっくりと顔を上げる。その目は赤く腫れていて、いかにも泣いたあとのような顔をしていた。
「もう、無茶すんなよ。クソ兄貴」
安心しているような、怒っているかのような表情をし、その場を立ち去っていく。
相変わらずの尖った口調に戻り、どこかへ行ってしまったラディを尻目に笑みが溢れる。
数日後、完治はしていないが動けるようになった俺の周りには今、多くの警察官が取り囲んでいた。
「まじで心配したんスからね?」
「無茶だけはしないでくださいよ本当に」
「まぁ無事で何よりだよ」
などと四方八方から喜びや心配の声が聞こえる。
怒られたり喜ばれたりしながらふと、視線を感じた方を向くと、遠くの方でラディが俺たちの行動を見ていた。
今回は俺の看病をしてくれたので罰金等はなくお咎めだけで済んだそうだった。やはりまだ警察は苦手意識が高いようだった。
これから先、また弟と出会うことはそう多くはないだろう。もしあったとしてもその時は個人医と警察官だ。きちんと対処しなければならない。
今までの感謝の意を込めて、全力の笑顔を彼に向ける。これで、ちゃんと怪我が治ったという証明になっただろうか。
今はもう仮面を被っているので本当の表情は読み取れないが、ふっと笑ってくれたような気がした。
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やっばい、めっちゃ好きですこの小説 たくさんいいね押してもうた