テラーノベル
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演奏会場の客席で、コビーはミユを見つけた。
舞台袖で、彼女は動けずにいた。
「……会長」
振り返ったミユの目は、不安で揺れていた。
コビーは拙いフランス語で、必死に言葉を紡ぐ。
「J’ai parcouru tout ce chemin(僕は、ここまで来れたのは)」
「Parce que tu m’as appris(会長が、先生だったからです)」
ミユの目が見開かれる。
「Cette fois… je te soutiendrai.(今度は……僕が、支えます)」
短い言葉だったが、確かに届いた。
ミユは深く息を吸い、静かに頷いた。
その演奏は、彼女自身を取り戻す音だった。
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