🎈「お邪魔します。」
🌟「好きな所に座っていてくれ。オレは飲み物を持ってくる。」
🎈「そんな、別に構わないのに。」
🌟「本当、お前は変な所で遠慮しがちだな。
オレが良いと言っているのだから大人しくありがとうと言わんか!」
🎈「遠慮したつもりは無かったのだけれど・・・まあ、ありがとう。」
🌟「よし、それで良い。それじゃあ少しゆっくりしていてくれ。」
🎈「ああ、ありがとう。」
🎈side
司くんの家へやって来た。
今回招かれたのは勉強会の為。
当たり前のように自分の部屋へと僕を招く彼。
当たり前のように僕と2人きりになれる環境を作る彼。
当たり前のように、僕の心が締め付けられる程に大好きな笑顔を見せる君。
君にとっての当たり前。
僕にとっては受け止めきれないほどに苦しくて、辛くて、好きで好きでしょうがない。
こうやって空いている距離は縮まっていくばかりでも、一方的な僕の想いばかりが膨らんで。
けれど、この想いが君に届くことは無い。
届いて、届けられたとしても。受け止めて貰えることなんて、きっと無いのだろうな。
いつの間にか君に依存していた僕。
最初は好きだなんて気付かなかった。
ただただ最初は『僕は彼が居ないともうダメなんだ。彼じゃなきゃ僕はもうダメなんだ。』。
そう思っているだけだった。
なのにいつの間にか、想いは膨み続け結果はこうだ。
いつしか僕は、恋愛的な目で彼を見ていることに気が付いた。
前までは何ともなかった触れ合いも、恋頃に気付いた頃には胸の高鳴りが治まらないばかり。
もう僕は、あの頃の君との関係に戻れないのかな。
🌟「類!すまん、待たせたな。」
🎈「ううん、全然。ありがとう、司くん。」
🌟「よーーし!!それじゃあ早速勉強開始だ!!!!」
司くんは張り切った声を上げ、右手にペンを握りしめノートをひらりとめくった。
何か言葉を返そう、僕だってノートを開いて・・・。
でもそんなこと、所詮脳内止まりだった。
僕はそんな、張り切る君の横顔に惚れ惚れして見惚れている。
・・・ああ。
1番幸せで、1番大好きだなあ。この時間。
🌟「類??ボーッとしているが、何か考え事か?」
🎈「・・・すまない。ああ・・・少し、考え事を。
司くん、何か分からない問題があれば遠慮なく聞いておくれ。」
🌟「ああ!助かる!!お前も、考えるのは程々にしておけよ。
脳内でずっと考えている事があるのならば、オレに1つ話すといい!スッキリするぞ!!」
🎈「・・・・・・うん、ありがとう。」
本当に分からないんだな。
君は、僕の気持ちなんて。
・・・そうだよね。
元は僕が悪いんだ。
勝手に司くんに好意を抱いて。
司くんは、その気なんて一切無かったはずなのに。
🌟「・・・類!!!」
その途端、司くんは隣から大きな声量で僕の名を口にした。
振り向くと、ペンを握りしめている手を頬に当て、こちらを覗いている。
🎈「・・・驚いた。どうしたんだい?司くん。」
🌟「“どうしたんだい?“とは・・・。お前なぁ・・・。
ほら、何か考え事をしているのだろう? 1度話してみろ。」
🎈「・・・ううん、だから何も。すまないね、変な心配掛けて。」
僕は司くんに悟られないよう、笑ってみせた。
けれど司くんは何か不満そうな様子。
ムスッとした顔をみせると1つため息をついた。
🌟「・・・まあ、オレも悪かった。」
🎈「・・・え?」
🌟「すまんな、類。無理に聞き出そうとしてしまって。
お前にも話したいこと話したくないことくらいあっただろうに。」
🎈「そんな。君が謝ることじゃないよ。心配してくれてありがとう、司くん。」
🌟「・・・・・・まあ、うん。構わんが・・・。」
心做しか、司くんの頬が赤い気がする。
司くんは動揺したようにゆっくりと自分のノートへと目を落とした。
🌟「・・・なんだか、お前のその笑顔・・・いつもとちがう。」
🎈「違う?」
🌟「違うから・・・どこか、むずむずする。」
🎈「僕は意識したつもりは無かったけれど・・・。司くんにはそう見えていたんだね。」
🌟「いつもより・・・少し、優しい。というか・・・オレへの気持ちが伝わってくる・・・というか。」
🎈「・・・君への、気持ち。」
🌟「ああっ・・・!いきなりヘンなことを言ってしまいすまないな・・・!忘れてくれ」
焦りながらも僕に、僕の大好きな笑顔をみせる君。
そんなの少し、期待してしまうじゃないか。
少し時間が経った頃、僕達は会話も交わさずにそれぞれ自分の課題へと取り組んでいた。
ふと横を見ると息を止める程に集中して問いを解いている君。
綺麗な横顔。
ああ僕は、なんて幸せものなのだろう。
彼の横顔を眺めていると、何故だか無性に幸せを感じる。
🎈「・・・司くん。」
🌟「・・・ん、どうしたんだ?」
司くんは少し時間の空いた会話に驚きながらも、
ペンを持つ手は止まること無くノートに文字を写しながら彼は僕の声に耳を傾けた。
🎈「僕、君のことが好きだよ。」
🌟「・・・・・・・・・え?」
僕もノートに文字を写しながらそう伝えた。
君の目も見ずに。
ふと目を横にやると、 先程まで止まる気配の無かったペンを持つ手は空になっている。
下から上へと目を流させると、 彼の顔はこちらを覗いていた。
🌟「・・・・・・えっと・・・類。
いきなりでびっくりはしたんだが・・・それは、その・・・恋愛的な好き・・・なのか?」
🎈「ああ。僕はずっと・・・君のことを1人の人間として恋心を抱いていてね。」
🌟「・・・そうだったのか。」
司くんは顔色変えずに僕の話を聞いてくれていた。
・・・・・・君のそういう所、僕は本当に大好きだし、尊敬するな。
🌟「・・・・・・すまん、類。
伝えて貰ったのにも関わらず・・・オレ、お前の気持ちには応えられないかもしれん・・・。 」
そう言った君の顔は、どこか寂しげで、目は少し潤んでいたように見えた。
本当、彼はどこまでも優しくて、純粋で。
僕は君のそういう所、本当に大好きでたまらないな。
🎈「ううん、君が謝ることは一切無いよ。いきなりで色々思い詰めらせてしまい申し訳ないね。
無理に僕の気持ちに答える必要は無いし、僕はこの気持ちを伝えられただけ満足だから。
これ以上を望むだなんて贅沢すぎるよ。僕の気持ち、受け止めてくれてありがとう、司くん。」
🌟「・・・・・・すまん。」
🎈「だから謝る必要は無いと・・・」
🌟「・・・お前はきっと・・・今まで沢山オレのことを考えてきてくれたと思う。
・・・・・・なのにオレときたら・・・お前の気持ちに気付いてあげることさえもできず・・・!!
・・・本当に悪いことをしていた。すまない、類。」
🎈「・・・いいよ。本当に何も気にしていないから。」
嘘
🌟「・・・お前、そう笑ってみせているが・・・本当に・・・大丈夫なのか?
これで・・・お前は本当に良かったのか・・・??」
🎈「だから言ったろう?僕は君にこの気持ちを伝えられただけで十分。
それを君は受け止めてくれ___」
嘘
嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘。
全部、全部嘘。
大丈夫でも無いし、こんな結末良いわけがない。
伝えられただけ満足?十分??
・・・そんなに僕は、君が思うより良い奴じゃなかったみたいだ。
想いを伝えられただけで満足。
そんなこと伝えるまでは思っていた。
伝えて砕けるだなんて当然。受け止めて、僕が拒まれなかったらそれはもう十分のこと。
そう、思っていたのに。
だけれど気付かない内に僕は『きっと司くんなら僕の気持ちに応えてくれる』、そんな都合のいい事を考えてた。
現実なんて、こうなるんだって。
全部、全部分かっていたはずなのに。
分かって、その覚悟で今僕は・・・僕の気持ちを伝えたはずなのに。
どうしてだろう。
胸がざわざわして、喉奥が締め付けられる。
涙を流すのを必死に堪えて、1つ唾を飲み飲んだ。
ああ、ダメだ。
今口を開けば涙、こぼれてしまうなあ。
🌟「_ありがとう、類。沢山悩んで、沢山の勇気で・・・伝えてくれて。ありがとう。」
ずるいよ、司くん。
僕は、君が見ている僕よりずっと・・・最低な人間なのに・・・。
🎈「・・・っ、ごめん・・・ごめん、司くんっ・・・!! 」
僕は司くんに抱きついた。
動揺し、驚いた顔を見せる君の顔も、きっと愛おしいはずだったはずなのに。
僕は司くんの胸に顔を埋め声を上げ泣いていた。
流れる涙を止めようと必死に頑張ってもただ僕は、自分の流れる涙を大好きな司くんの服に染み込ませるだけだった。
それでも司くんは、泣いている僕は拒みもせずに受け入れてくれた。
大好きな君の手のひらは僕の頭上にぽんと置かれ、僕を抱き締め返してくれる。
🎈「ごめん、ごめんなさいっ・・・!!!僕、最低だっ・・・!!」
🌟「・・・類、もう謝らないでくれ。オレのことを好きでいてくれてるなら、もう謝るんじゃない。」
暖かく、優しい声。
そんな優しさに僕はまた、止まらない涙を流し続けた。
🎈「っ・・・僕、だって・・・!!!」
🌟「・・・オレは、類が今どういう気持ちで泣いているのかとか。何故謝るのか、どうして泣いているのか。全部分からない。けれど、少なからずそれだけオレの事を思ってくれていたという事だろう? オレはその気持ちがすっごく嬉しいよ。」
ああ、どうしよう。司くん。
僕、君のことが好きで好きでたまらないよ。
好きで、好きで。大好きで。
胸が苦しい程に君へと気持ちが溢れては止まらない。
この溢れ出る気持ちは、君に伝わっているのかな。
🎈「・・・・・・っ、僕・・・君の事が大好きだ・・・!!大好きで、大好きで大好きで・・・!!!
大好きだから・・・きっと、今辛くて泣いている・・・。」
🌟「・・・そうか。
・・・・・・うん、嬉しい。嬉しいよ、類。
オレ、類のその気持ちがとっても、本当の本当に・・・嬉しくてたまらないんだ。」
🎈「・・・・・・僕のこと、嫌だと・・・気持ち悪いと・・・そう思わないの?」
🌟「何馬鹿なことを言っているんだ。そんなこと何があっても思うはずがないだろう?
オレを想ってくれている気持ち、沢山考えてくれていたんだなっていうのがすごく伝わった。
そんなのを嫌がって、気持ち悪いだなんて思うようなヤツは人間として最低なヤツだ。」
🎈「・・・・・・っ、ありがとう、司くんっ・・・!!!大好きだよっ・・・!」
🌟「ああ、ありがとう。類。」
🎈「・・・・・・これからも、今までと変わらない関係で居てくれるかい・・・?」
🌟「もちろんだ!と言いたいところではあるが・・・。」
🎈「・・・??」
🌟「お前の強い想いを受け取って、これから変わらない関係のままだなんて辛いだろう?
だからオレも、お前の事が好きだって。そう胸を張って言える日が来るようにしよう。」
🎈「・・・でもそんな・・・いいのかい?」
🌟「流石にオレだってお前の気持ちを蔑ろにはできないからな。
・・・まあ、だから・・・その日が来るまで・・・待っていてくれるだろうか・・・?」
🎈「・・・っ!!ああ、もちろんだよ・・・!!ありがとう、司くん・・・!」
🌟「えっ・・・!?その、本当にその時まで待っていてくれるというのか・・・??」
🎈「君がそう言ってくれるのなら、僕は一生待ち続けるよ。」
🌟「・・・こんなわがままも、お前は聞いてくれるのだな。
・・・・・・ありがとう、類。」
🎈「ううん、こちらこそ・・・!
本当に僕は・・・世界で1番の幸せ者だよ。」
🌟「全く。それは大袈裟すぎるぞ!!」
🎈「仕方が無いだろう・・・!?本当の事なんだから・・・。」
🌟「まあ、それなら良いが・・・。
・・・・・・類、オレの今話したことは全て本音だ。だから、もう抱え込むんじゃないぞ?」
🎈「・・・・・・ああ、ありがとう。司くん。」
🌟「・・・オレも、ありがとう。」
数年後
🌟「類、ただいま。」
🎈「司くん。おかえり。帰り、随分と遅かったね。」
🌟「中々仕事が長引いてな・・・。類、オレと会えてうれしい?」
🎈「いきなりどうしたんだい。まあ、それは嬉しいけれど・・・。」
🌟「・・・やっぱり、類が1番!オレには類しか居ないよ・・・!! 」
🎈「あ、司くん・・・!いきなり抱きついては危ないよ。
それに本当、今日はどうしたんだい?随分と甘えんぼじゃないか。」
🌟「もー、忘れてたのか?今日はほら、オレ達の記念日だろ??」
🎈「・・・ああ、そういえば・・・。すまない司くん・・・。すっかり忘れていたよ・・・。」
🌟「素直に言ってくれただけ、まだいいだろう!
・・・全く・・・去年まではしっかり祝ってくれていたくせに・・・」
🎈「すまない、司くん。最近は随分と仕事が忙しくてだね・・・。」
🌟「まあ、別に構わんが。 」
🎈「本当にすまなかった・・・。
お詫びと言ってもなんだけれど・・・今度久しぶりに旅行へ行かないかい?」
🌟「旅行!?いいのかっ!?」
🎈「ああ、もちろんだ。実を言うとかなり前から考えてはいてね。来月にでもどうかな?」
🌟「ほう・・・!!それは実に楽しみだな・・・!!!来月の予定空けておかなければ!」
🎈「フフ、喜んでもらえて何よりだよ。」
🌟「ありがとうな、類!!」
🎈「こちらこそ。ありがとう、司くん。」
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