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⚠BL  オメガバース



目を覚ますと、自分の家のベットの上だった。状況が掴めず、ぼーっとしていると、母が入ってきた。


『おはよう、幸』


なんで、おはよう?そう疑問に思い、机の上にあるアナログ時計に目をやると、朝の8時半過ぎを指していた。


『おは、よう?』


戸惑いながら挨拶を返す俺に、母は安堵の顔を少し浮かべ、手に持っていた水の入ったコップを渡してくれた。


まだ少し痛むうなじ


『ありがと、母さん』


一気に飲み干し、空いたコップを渡した。


その時カチャと首元から音がした


触ってみるとチョーカーのような、でもチョーカーよりはゴツイ首輪のようなものが付いていた。


『母さん、これ』


俺の問いに1度目を閉じた母さんは、まっすぐ俺を見て



『安全のため』

『これからもしもに備えられるように』


涙で滲んだ母の瞳。


『俺の為だよね、ありがとう』


強く抱き締めてくれる母は、とても温かい

やっぱりこの家に戻ってきて正解だった。


と、同時に自分がΩだと周りに主張するこの首輪。中学生のうちからこれを着けることの意味。大人ですら隠す性を公開する怖さ。


縋る

まだ痛むこの傷に


この家が温かいってまだ思えるように。


『バース性の検査。話さなくてごめんなさい』


『いいんだよ。いいの。』


『まだ、オメガって決まったわけじゃないから。ね?』




うんめいは存在する。






『今回の件、どういう経緯で起こった?』


うちのダイニングテーブルに、俺、父さん、母さんそして幸の父である真さんが座っていた。

俺の前に座る真さんは、まっすぐ俺を見て怒鳴ることなく、怒りをあらわにすることなく、聞いてきた。


『俺は、幸に幸せになって欲しかった。』

『ずっと一人で、寂しい思いをさせて来たのはそっち』

『結果頼ってくれたのは俺だった。』

『俺は、幸を1番に考えられてる。好きだから、幸より強くなって、かっこよくなろうと思った。』

『でも、どんどん遠くなっていく幸にどうやって好きって伝えたらいいのか分からなくて、でも、誰かに幸を取られるのは嫌だった。』

『好きなことは悪いこと?』


全員がこっちを見ていた


人を愛することは必然

理を崩しては行けない

運命で結ばれたαがΩを愛しΩがαを愛す

その一連の行動は不変である


俺は当然の恋をしていただけ


1度手放してしまった彼をもう一度、自分の元へ連れ戻すだけだ。


『どうしてそんな顔をするの?』

『俺変なこと言った?』


滅多に怒らない父が血相を変えてこっちを見ている。

真っ青になっている母、 何も言えない二人。

そして、深く呼吸をした真さんが口を開いた


『確かに2人を引き離したのも、それからあまり会わなくなったのも俺たちの都合に幸を巻き込んだだけだ。 』

『だけど、今回のことはまた別だ』

『嫌がるオメガを力ずくで抑え、うなじを噛んだ。その事実は変えられない。幸いヒートではなかったから番こともなかった。まだ幸がオメガだという結果が出た訳でもない。しかしそれは結果論。しばらくは接触することがないようにしなさい。わかったな。』


頭が真っ白になった。


接触禁止が命じられ、多分もう一生番になることもできなくなった。一瞬息ができなくなる感覚。


『おれ、そんなおかしいこと言った?』

『……いやだ』

『会えなくなるなんてやだ!』

『そんなこと言わないで!お願い』


机を叩いて立ち上がった俺を制止とする母の手を振りほどき、真さんに縋るように近ずいた。


絶対に嫌だった。

大好きな彼と離れることが、今とは違う一生会えなくなることが。想像できなかった。彼に自分以外の心を許せる人が知らないところでできているかもしれないということが 。


『お兄ちゃんが悪いよ』



ガチャと扉が開く音がして、花が入ってきた。聞き耳を立てていたであろう花はこちらに歩み寄りながら続けた。


『ただ見ていることしか出来なかった私も同罪。だけど、謝って。幸兄ぃにも、真さんにも、双葉さんにも謝って!』

『お兄ちゃんは被害者なんかじゃない!真さんを責めていい理由なんてどこにもない!』

『なんでそんなことも分からないの?』



泣きながら、声を枯らしながら

訴えに答えられない未熟さ、運命というでまかせを信じ、大切なものを失った後悔。

何もかももう過ぎたことで、取り返しのつかないこと。


『花、落ち着いてそこに座りなさい。』


母が泣き続ける花の肩をだき、ソファまで連れていった。


少しづつ少しづつ、

冷静になっていく頭で自分の行いを悔やんだ。


『……俺は、運命を信じてた』


『俺と幸が出会ったのも、幸がオメガで、俺がアルファなのも全部運命だって 』

『それを疑わなかったし、幸もそうだと思ってた。でも違ったんだ、運命だと思ってたのは俺だけ。俺が幸を自分から離れないように繋ぎ止めていただけだったんだ。変な虫はすぐに払ったし、幸の交友関係も俺が整理してた。』

『俺から離れていって欲しくなかった。』

『ごめんなさい真さん。俺、幸に合わせる顔がない。だから、幸に、直接謝罪できないです。今会ったら、考えが変わってしまうから。俺は、』


もう、決めたことだから。

幸を守るために、幸が幸せな生活を送れるように。憧れていた普通になれるように。


幸は俺と違って、未来を見てるから。


『金輪際、幸に近づかない。 』

『中学も転校して、高校は全寮制で男子校の、学校に入ります。誰にも目移りしないで、安定した高校生活を送ることができていたら、1度で良いので、幸に会わせてください。お願いします。』


今思えば、図々しい頼みだった。

事の発端である自分が条件をつけた頼みなんて、なかなか受け入れてもられるようなものでもない。


『…わかった。』

『これから 、とりあえず高校1年生が終わるまでの3年間。幸と接触しなかったら今回のことは無かったことにする。譲歩した訳じゃない。1度でも接触した時には、わかってるな?』


『はい。わかってます。』


その後すぐに俺は転校先が決まり、俺は今まで暮らしてきた土地を離れ、清波大学附属の中学に転入した。




気がついたら、学校も橘家からも 瞬の姿は見えなくなった。あの日、俺らの関係が壊れた日、瞬は父と約束を交わしたらしい。内容は教えてくれなかったが、すぐに転校していったことから接触禁止でも出たんだと思った。


心にぽっかり穴が空いたみたいだった。


沈黙の食卓。

消し忘れたテレビの音と、ぶつかったり擦れたりする食器の音だけが響いている。


『ごちそうさま』


中途半端に残した夕飯


『幸、もういらない?』


『うん』

『美味しかったよ。』


俺の顔色を伺うように問いかけてくる母と、機嫌が悪そうな父。決して居心地がいい空間ではない。

結果、食事が喉を通らないし、食べる手が進まない。こんな辛い空間は初めてだった。


そのまま部屋に向かおうと扉に手をかけた時


『今回の件で、もう幸と瞬を二人で合わせることは出来ないという結論になった。直接瞬から話がなかったのは、瞬からの頼みだったからだ。いっその事、幸も転校してしまうか?』


大人の話し合いに俺が混ざることが出来ないっていうのもわかってた。勝手に居なくなった瞬にも、もう特に何も思ってなかった。だから、俺が転校する理由もない。


『俺、転校しないよ。友達もできてたし。わざわざ今の環境から離れる必要ないから。』


思ったより素っ気ない返しかたをしてしまい、より居心地の悪さを感じた俺は、そう言ってすぐにリビングを出た。


『ふぅー』


自分の部屋に戻って来てやっと、息が吸えたような気がして、扉に背中を付けたまま床に座り込んでしまった。


俺は、ひとつの友人関係ですら守ることが出来ないのか、全部今の環境が悪いのか。俺のことを大切に思ってくれていた瞬の気持ちに答えることができないまま、一生後悔したまま、過ごしていくのか。


元はと言えば、俺がΩだったことが悪いんじゃないか。俺が、俺が、全部


『悪かったんだ。』


『ごめんない。ごめん、なさい。』


瞬の家庭をめちゃくちゃにしたのも、父の友人関係を破壊したのも、母の、最悪を思い出させてしまったのも、瞬の未来を消したのも、全部俺。Ωなんて大っ嫌いだ。


『助けられると思うなら、助けてよ』


いないはずの瞬の声が聞こえる。


目を閉じた先の、暗闇の中から、

瞬の声が聞こえる。


『俺辛いな。なんでこんなことに』


『俺がわざわざここを離れる必要なかったと思うんだよな。なぁ幸どう思う?』


首を傾げてこちらを見てくる目は、俺を捉えていなかった。


『俺のせい。瞬がここを離れる理由なんて何処にもなかったんだ。俺が、俺が最初っから瞬に出会ってなければ』


『そうだよね』

『俺、悪くないよね』


『悪いのは、幸』

『君と俺の運命だ』


指を刺された瞬間、暗闇に落とされた気がした。真っ逆さまに。落ちて落ちて、息ができなくなった。



『しゅん。』


俺と瞬の運命。生まれた時から一緒で、母さんの件でより近い存在になった。何度彼の優しさに救われてきたか。失ってから気づく大切さ。もう痛みも感じなくなったこの傷も、なんも自分の口から彼に伝えられていない。


『瞬に会わなくちゃ。会って、俺の気持ち伝えないと。』

『もう会えないなんて、いやだ』


勢いに任せて家を出た。

時間は19時を回っている。中学生が出歩ける時間も、限られている。だけど、会いたい。

彼に会って自分の口から。この想いを伝えたい。

もう遅いかもしれないけど、瞬は、もう前を向いているかもしれないけど。




1時間くらい駅周辺を歩いている。

電話はもう数え切れないくらいきていて、全て母か父からのものだろう。振動するするスマホがウザったくて、電源を落とした。


『あ、みつ、けた』


『瞬!!』


道路の反対側にいた瞬に向かって、精一杯声を出して自分がいることを伝えようとした。


『瞬!まって、俺!』


人の目なんて気にもしないで、ただひたすらに瞬を見失わないようにだけ、走り続けた。


信号機に当たった時に、瞬とやっと対面出来た。久しぶりに見た瞬は、雰囲気が変わっていて、知らない制服に身を包んでいた。瞬は、自分の口元に人差し指だけを立てて乗せた。


『い わ な い で』


そういったように見えた。


そして、信号は青に変わり、すれ違いざまに


『後3年待ってて』


とっさには何も言えず、言われたことを脳内で理解するのに時間がかかった。


『わかった!待ってる!その時は』


反対側に着いて、振り返った時には瞬は、人混みの中に消えていった後だった。


『俺を番にして。』


不意にでたあの言葉 。

かすれてほとんど音になってなかった。

傍から見たら自殺行為だと思われるだろう。

自分を襲った‪α‬と番になるということ。

まだ受け入れきれていなかった自分の性を嫌でも意識してしまう。

こういう時に、この性で良かったと思う自分は都合がいいんだろう。


結果なんて待たなくたって、自分の体のことくらい察しは着く。また、本能が彼を求める。



そのまま帰路に着き、そっと両親から貰ったそれに初めて触れた。


さっきは暖かく感じたそれが、今は少し冷たく感じた。



2年後



あの後バース性検査の結果、俺はΩだった。


今度はちゃんと伝えた。

でも、俺が寝るのに部屋に戻ったあと、母は泣いていた。ごめんなさいって。


ごめんなさい。

俺は、Ωでよかったって心から思ってしまった。


何も無くなった首を触る。

綺麗に消えた傷。

また薄れていく大切な人の声。


忘れる前にまた聞きたいな。



中学生活も気づいたら1年、2年がすぎていた。3年生になった俺に何が起きる訳でもなく、強いて言うなら周りのΩの中で少しづつヒートになっている人が出てきたくらいだろう。 2年生が終わるくらいからどんどん増えてきた。


あと1年ちょっと。



俺頑張るから


また会おう。






ドクン


ドクン


ドクン


初めて経験する身体の火照り。

中学3年生の夏。

初めてヒートが来た。





Episode1 


Fin

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