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ここと🌹🫶 @低浮気味
コメント
2件
やばっ、、すげぇ、好みドストライク、、 ほんとルナ書くの上手いな!? タイトル回収も凄いし、物語構成も、なんか言葉にできんくらい凄い、! 最高すぎる!
わー……読んだ後にじわじわ胸に来る話だったな。タイトル通りの展開で、二人の夢がバラバラに砕ける感じが切なすぎる。特に爆豪が「じゃーな、俺の夢」って呟く場面はグッときたし、緑谷の「僕も辞める」っていうラストも重い……。ヒーロー社会のリアルな歪みを見せられた気分で、なおかつキャラの心情が丁寧に描かれてて引き込まれたよ。ルナさんの解釈、深くてめっちゃ好きです🔥
雄英高校の廊下は、いつも未来への希望と活気に満ちている。
しかし、その日のA組の教室を包んでいたのは、凍りつくような沈黙だった。
事の始まりは、一つの告発文と、それに添付された
音声・映像データの存在だった。
差出人は、爆豪勝己と緑谷出久がかつて在籍していた
折寺中学校の元同級生。ヒーロー社会の最高峰である雄英で、
何食わぬ顔でトップを走り続ける爆豪の姿に耐えかねたという、
告発という名の「復讐」だった。
根津校長のもとに届けられたそのデータには、
目を覆いたくなるような惨状が記録されていた。
焦げ付いたノート。虚空に舞う灰。
「来世は個性が宿ると信じて屋上からのワンチャンダイブ!!」
という、およそヒーローを目指す者から発せられるべきではない、
明確な悪意に満ちた言葉の暴力。
それらは全て、個性が発現しなかった少年――緑谷出久に向けられた、
凄惨な拒絶の記録だった。
根津校長は、事実を隠蔽することも、うやむやにすることも選ばなかった。
彼はすべての教職員、そしてA組の生徒全員を臨時のホームルームに招集した。
「爆豪くん。これが君の行ってきた『過去』の清算だ」
教卓に置かれたモニターから流れる、生々しい音声。
爆豪自身の声が、静まり返った教室に響き渡る。
クラスメイトたちの視線が、一斉に爆豪へと注がれた。
これまで、彼の粗暴さは「ヒーローへの強い執着」や
「負けず嫌いな性格」として、ある種好意的に、
あるいは容認されて受け止められていた。
しかし、画面の向こうにあるのは、純粋な弱者への蹂躙であり、
防衛の余地のない一方的な搾取だった。
「……なんだよ、これ」
切島鋭児郎の声が震えていた。
いつも誰よりも爆豪の「強さ」を信じ、
隣を歩こうとしていた男の顔から、血の気が引いていく。
「爆豪……お前、これ、本当にやったのか? デクくんに、こんな……」
「おい、嘘だろ? 飛び降りろって……それ、
ヒーローが口にしていい言葉じゃないぞ……」
上鳴電気も、瀬呂範太も、言葉を失っていた。
麗日お茶子は怒りと嫌悪が混ざった目で爆豪を睨みつけ、
飯田天哉は眼鏡の奥の目を厳しく細め、拳を強く握りしめている。
「爆豪くん。これが事実であるなら、君の行為は重大な人権侵害であり、
ヒーロー候補生としての資質を根本から否定するものだ」
根津校長の声は、どこまでも冷静で、それゆえに酷に響いた。
「ぼ、僕は……」
その時、ガタタッと椅子を鳴らして立ち上がったのは、
緑谷出久だった。彼の顔は青白く、全身が激しく震えている。
「違う、違います校長先生! これは……かっちゃんは、その、
ただ僕が、身の程知らずに雄英を目指すのが危ないからって……!」
「緑谷。お前が爆豪を庇う必要はない、というより、庇ってはならない。」
相澤消太が、鋭い眼光と言葉で緑谷を制した。
その目は、これまでにないほど冷徹だった。
「爆豪。お前がどれだけ強い力を持ち、どれだけ勝利にこだわろうと、
根底にあるものがこれなら、俺たちが教えてきたことは全て無意味だ。
お前はヒーローのスタートラインにすら立っていなかった」
クラスメイトたちの視線が、刃物のように爆豪の全身に突き刺さる。
信頼、親しみ、憧れ。それらが一瞬にして「嫌悪」と「不信」へと裏返っていく。
「…は?」
爆豪は、机を両手で叩いて立ち上がった。掌から火花が爆ぜる。
「過去のことだろ……! 今の俺は、ここで、あんたらの前で勝ってきただろうが! くだらねえ昔の話を引っ張り出して、何をごちゃごちゃ言ってやがる!」
その言葉が、決定打だった。
己の非を認めるどころか、過去の悪行を「くだらない」と切り捨てた。
その傲慢さに、A組の全員が完全に心を閉ざした。
「……最低だ」
轟焦凍が、静かに、しかし明確な拒絶を込めて呟いた。
「お前はただの、力を持ったいじめっ子だったわけだ。
そんな奴と、一緒にヒーローを目指していたと思うと、吐き気がする」
その一言が、爆豪のプライドを完璧に粉砕した。
周囲を見渡しても、誰も自分を庇おうとしない。
切島すらも、目を伏せて顔を背けている。
ただ一人、緑谷だけが「違うんだ、そんな目で見ないでくれ」と
懇願するように周囲を見回しているが、その姿さえも、
爆豪にとっては「憐れみ」という名の最大の侮辱にしか見えなかった。
「退学処分とする、爆豪勝己くん。君の席は、もう雄英にはない」
根津校長の宣告が、静かに教室に響いた。
荷物をまとめ、雄英の校門を出る爆豪の背中に、
かつての仲間たちの声は一切かからなかった。
寮の部屋から私物を詰め込んだバッグは、異様に重かった。
「かっちゃん……!」
後ろから走ってくる足音が聞こえた。振り返らなくてもわかる。緑谷だ。
緑谷は息を切らし、涙をボロボロとこぼしながら、爆豪の腕を掴もうとした。
「触んじゃねえ!!」
爆豪は激しくその手を振り払った。
掌から放たれた爆風が、緑谷の体をわずかに弾く。
「かっちゃん、ごめん、僕が……僕がもっとうまく立ち回っていれば、
あんなデータ、誰も見向きもしなかったのに……!
僕はかっちゃんに辞めてほしくなんてない!
一緒に、一緒にヒーローになるんじゃなかったのかよ!」
緑谷の言葉は、本心だった。彼は爆豪を恨んでなどいなかった。
あの過酷な日々を「自分が無個性だったから」
「かっちゃんに追いつきたかったから」という歪んだ解釈で
自己完結させ、爆豪の強さにずっと憧れ続けていたのだ。
しかし、その純粋な「善意」こそが、
今の爆豪には何よりも鋭いナイフとなって突き刺さる。
「ふざけんな……ッ!」
爆豪の口から、血を吐き出すような声が漏れた。
「お前がそうやって、被害者面して俺を許そうとするたびに、
俺がどれだけ惨めになるか分かってんのか!? ああ!?
『不本意なのに』って顔すんじゃねえ! お前がそこにいるだけで、
俺の過去が、俺の全否定が、そこに完成すんだよ!」
緑谷は息を呑んだ。爆豪の目が、これまでに見たことがないほど
絶望に染まっていたからだ。いつも傲慢に、
誰かを見下していたはずの鋭い眼光が、今はボロボロに傷つき、
血を流しているように見えた。
「僕は……ただ……」
「消えろ、デク。お前の顔は、二度と見たくねえ」
爆豪は踵を返し、走り去った。
残された緑谷は、その場に崩れ落ちた。
自分の存在が、憧れだった爆豪を追い詰めてしまった。
自分が無個性で、虐げられていたという事実そのものが、
爆豪の未来を奪うトリガーになってしまった。
胸を掻きむしるような罪悪感が、緑谷の心を黒く塗りつぶしていく。
「僕が、かっちゃんを壊したんだ」
緑谷は地面に泥がつくのも構わず、ただ慟哭した。
一方、爆豪の足は、行く当てもなく街を彷徨っていた。
スマホを開けば、ネット上にはすでに
「雄英高校の爆豪勝己、過去の凄惨なイジメにより退学」
というニュースが拡散されていた。
匿名の悪意、かつて自分を持ち上げていた世間の手のひら返し。
実家に戻っても、待っているのは落胆した両親の顔と、
世間からの冷たい目だけだ。
「俺が、何をした……」
路地裏のコンクリート壁に背中を預け、爆豪はズルズルと座り込んだ。
自分がやってきたことが「悪いこと」だなんて、
考えたこともなかった。強い者が上に立ち、弱い者が淘汰される。
それが世界の理だと思っていた。だが、社会が求めていた
「ヒーロー」の枠組みは、爆豪のような存在を完全に排除した。
「クソが……ッ! クソが、クソが、クソがああぁぁ!!!」
壁に拳を叩きつける。何度も、何度も。皮膚が破れ、血が滲んでも、
心の奥底で燃え盛る怒りと、それを遥かに上回る
「拒絶された苦しみ」は消えなかった。
すべてを失った。
地位も、名誉も、未来も。
そして、自分を信じてくれていた仲間たちの信頼も、すべて。
暗い闇の中、爆豪は孤独に震えていた。その体から発せられる熱は、
もはや誰も温めることはなく、ただ己を焼き尽くすためだけに燻っていた。
どれほどの時間が経っただろうか。
夜の帳が完全に下り、冷たい雨が降り始めた路地裏に、
黒い霧が静かに立ち込めた。
「酷い有様ですね、爆豪勝己くん」
聞き覚えのある、低く落ち着いた声。空間に現れた歪みから、
霧状の男――黒霧が姿を現した。
「……何の用だ、クソヴィラン」
爆豪は立ち上がろうとしたが、精神的な疲弊から足元がふらついた。
掌に力を込めるが、小さな火花しか出ない。
「私たちは、君の価値を正しく理解している。
社会に使い捨てられ、過去の過ちという一面だけで
全てを否定された君の痛みを、ね」
黒霧の背後から、さらに数人の影が現れる。
「あは、ほんとにボロボロ。雄英にいた時はあんなに威張ってたのに、可哀想」
トガヒミコが、ナイフを弄びながら小首をかしげて笑う。
その目は、狂気の中にも不思議な親近感を宿していた。
「傑作だな。ヒーローの卵が、身内に後ろから刺されて終わりかよ。
これだから偽善者の集まりは吐き気がするんだ」
青い炎を指先で弄びながら、荼毘が冷笑を浮かべる。
「おいおい、可哀想だろ! 自業自得だけどな!
でも仲間が増えるのは嬉しいぞ! 帰れ!」
トゥワイスが頭を抱えながら、支離滅裂に叫ぶ。
そして、最後にゆっくりと歩み出てきたのは、死柄木弔だった。
彼は首に手を当て、ガリガリと皮膚を掻きむしりながら、
濁った目で爆豪を見つめた。
「爆豪勝己。お前はヒーローに憧れ、ヒーローになろうとした。
だが、社会はお前を拒絶した。お前がどれだけ強くても、
お前の本質が社会の都合に合わなければ、ゴミのように捨てる。
それが、お前が守ろうとした世界の正体だ」
死柄木は、ゆっくりと手を差し伸べた。五本の指が、
触れれば全てを崩壊させるその手が、今は妙に優しく見えた。
「お前の怒りも、その爆発も、ヒーロー社会じゃ『悪』だ。
なら、俺たちのところへ来い。ここには、お前を縛るルールも、
過去を責める偽善者もいない。お前の強さを、そのまま受け入れてやる」
爆豪は、差し出された手を見つめた。
かつてなら、一秒の躊躇もなく爆破して拒絶していただろう。
ヴィランなど、己の踏み台にすぎないと吐き捨てていただろう。
しかし、今の爆豪には、帰る場所がなかった。
雄英を追われ、A組に嫌われ、緑谷の罪悪感に押しつぶされそうな世界。
そこには、爆豪勝己という人間の居場所は、
一平方センチメートルすら残されていなかった。
「……俺を、認める、だと?」
「そうだ。お前は強い。その強さを、社会を壊すために使え。俺たちと共に」
死柄木の声が、爆豪の脳内に深く染み込んでいく。
その時、黒霧の転送ゲートの向こうから、さらに深く、
重々しい声が響いた。モニター越しではない、
脳内に直接語りかけてくるような、圧倒的な存在感。
オール・フォー・ワンの声だった。
「爆豪くん。君の挫折は、君自身の弱さゆえではない。
社会の歪みが、君という不世出の才能を受け止めきれなかったのだ。
おいで。君のその乾いた渇きを、私たちが満たしてあげよう」
爆豪は、自嘲気味に笑った。
あんなに嫌悪していたヴィランの言葉が、
今の自分にはどんなヒーローの言葉よりも心地よく響く。
なんと滑稽なことか。
「……そうする。」
爆豪は、死柄木のジャンパーの袖を掴んだ。
「行くぞ、黒霧」
死柄木の合図とともに、黒い霧が彼らを包み込み、
路地裏からその姿を完全に消し去った。
ヴィラン連合のアジト。薄暗いバーのカウンターに、爆豪は座っていた。
彼を迎えたのは、かつて自分を拉致し、
勧誘しようとした時とは全く異なる、奇妙な「歓迎」だった。
「ほら、カツキくん、これ包帯。血が出たままだと、可愛いお顔が台無しですよ」
トガが笑顔で包帯を差し出してくる。下心や企みのない、
ただ「仲間」に対する純粋な気遣い。
「……いらねえよ」
「まぁそう言わずにさ。俺たち、もう同じ穴の狢なんだから。
仲良くしようぜ! ぶっ殺すぞ!」
トゥワイスが爆豪の肩を叩く。その軽薄な態度に、
不思議と以前のような怒りは湧かなかった。
「お前、火力の調整はできるのか? 街を焼き尽くす時は、
俺の炎と合わせる。足引っ張んなよ、元ヒーロー」
荼毘が、安物の酒を飲みながら声をかけてくる。
言葉は辛辣だが、そこには爆豪の「実力」に対する確かな評価が含まれていた。
死柄木は、カウンターの奥で静かにそれを見ていた。
「爆豪。お前はもう、誰の期待を背負う必要もない。
自分のために、その力を使え」
爆豪は、手元にあるグラスを見つめた。中に入っているのは、ただの炭酸水だ。
黒霧が静かにグラスを磨きながら、呟く。
「爆豪くん。ここにあるのは、社会から弾き出された者たちの居場所です。
君が過去に何をしようと、私たちがそれを責めることはありません。
君は今日から、私たちの仲間だ」
「仲間……」
爆豪の胸に、奇妙な感情が湧き上がっていた。
雄英にいた頃は、常にトップでいなければならなかった。
誰よりも強く、誰よりも完璧で、誰の足も引っ張らない「絶対的な勝利者」。
しかしここでは、誰も自分に「正しさ」を求めない。
ボロボロのままでいい、歪んだままでいいと言ってくれる。
皮肉にも、爆豪勝己という歪んだ人間が、
最も深く息を吸える場所は、この悪の巣窟だったのだ。
「……クソが。調子狂うんだよ、お前らは」
爆豪はグラスを飲み干し、不器用に向こうを向いた。
トガが嬉しそうに笑い、トゥワイスが騒ぎ、荼毘が鼻で笑う。
その光景を、モニターの向こうから見つめていたAFOは、
満足そうに微笑んでいた。
「素晴らしい。これで、また一つ、社会の歪みが証明された。
緑谷出久くん。君がどれだけ彼を救おうと、君の存在そのものが、
彼をこちら側へ繋ぎ止める鎖となるのだから」
数日後。
夜の帳が降りた街。雄英高校の広大な敷地を見下ろす、
高層ビルの屋上に爆豪の姿があった。
黒いコートを羽織り、かつてのヒーローコスチュームの面影はどこにもない。
眼下に広がる雄英の校門。かつて、
自分が世界一のヒーローになるために潜った門。
そこには今、夜間警備のプロヒーローたちが巡回し、
相変わらずの強固なセキュリティが敷かれている。
あの教室には、今頃、自分を「最低のいじめっ子」
として切り捨てたA組の連中が、何事もなかったかのように
明日の授業の準備をしているのだろう。
そして緑谷は、未だに自分に対する罪悪感と、
届かない救いの手を伸ばし続けて、苦悩の夜を過ごしているに違いない。
「かっちゃん……」という、あの耳障りな声が、
風の音に混ざって聞こえた気がした。
「……不本意、ねえ」
爆豪は呟いた。
緑谷がどれだけ苦しもうが、どれだけ
「こんなはずじゃなかった」と泣こうが、もう関係のないことだ。
緑谷が自分を追い求めていたあの純粋な光こそが、
爆豪という影を最も濃く、暗く育て上げたのだから。
二人の関係は、最初から破綻していた。そして今、完全に決着がついた。
「勝己、そろそろ時間だ。死柄木たちが待っている」
背後から、黒霧のゲートが開く。そこから荼毘とトガが顔を出した。
彼らは爆豪を急かすことなく、ただ静かに待っている。
彼を「仲間」として信頼しているからこそ、その背中を見守っている。
爆豪は、ゆっくりと雄英の校門を見据えた。
その視線の先にあるのは、特定の誰かではない。
自分が幼い頃から憧れ、盲信し、そのために全てを捧げようとしていた、
あの「ヒーロー」という眩しすぎる夢そのものだった。
勝てばいいと思っていた。強ければいいと思っていた。
だが、その夢の舞台は、爆豪勝己という人間の本質を拒絶した。
なら、もう未練などない。
爆豪は、フッと冷たい笑みを浮かべた。
その表情には、もはやかつての焦燥も、怒りも、悲しみもない。あるのは、ただ絶対的な決別と、闇に生きる者としての冷徹な覚悟だけだった。
雄英の門から視線を外し、黒い霧の向こうへと歩みを進める。
最後に一度だけ、その夢の残骸が光る場所へ、背中で語りかけるように呟いた。
「じゃーな、ヒーロー」
その言葉と共に、爆豪勝己は闇の中へと完全に消え去り、
二度と、光の世界へ戻ることはなかった。
「先生。僕も、雄英辞めます。」
その日、被害者である少年も自分の夢を捨てた。
二人の少年の夢は儚く壊れた。