「わかりました…じゃあ、こうします」
俺は本を手に取った。
「何をするつもりだ…」
「みんなを生き返らせ、お前も救う!!」
「な…やめろ!!その魔法は…」
本を手に取り、俺はページをめくった。。そして呪文を見た。それと、挟まっていたメモ用紙を。
「…そういうことだったのか…」
初めて知った。俺は、何百年も前からの都月さんの未来予知を。
「禁忌魔法〈マジカルシークレット〉!!」
「やめ…」
そう唱えた次の瞬間、視界が真っ白な何かに包まれた。
その時、俺はしっかりとbetrayal Royerの手を握っていた。きっと。
これが俺の使う最後の魔法だ。
この本の魔法を使った誰かへ。
マジカルシークレットのトップ西園寺都月と申します。
私には未来予知の能力があります。…ということは、うちの組織の者ならみんな知っていると思いますが、この本の魔法を使った方が誰かわからないため、一応書いておきます。
この魔法は、本当に困った時だけに使ってください。危険性があります。
けれど、マジカルシークレットという呪文をそのまま組織の名前にした理由は、1つだけ。
数百年後に私たちの組織は壊滅状態…いえ、世界全体が壊滅状態に陥る未来が私には見えました。だから、お願いします。
このメモを見た方に全て任せます。
「…あ痛たた…ごほっごほっ…ああ咳き込むーっ!ってあれ?どうして私生きて…水梨ちゃーんっ!!」
「教官!?あれ?私死んだんじゃ…うそ、あのどす黒い何かが消えてる…?」
「よくわからないけどみんな無事でよかったーっ!!」
彩が水梨を抱きしめる。「ちょっと教官…」と水梨は涙を流しながら言う。
「…私が死んだせいで、結界が壊れてみんな…あれ?どうして私生きてるの…」
「教官…やっと見つけました!もう…」
「ウアン…ごめんなさいね…」
彼岸花は本当の自分を取り戻したかのように、にこりと微笑んだ。
「あれ…?私…あなたに殺されたはずじゃ…」
「私も、あなたに殺されたはず…え?どうなって…」
雅と鶫はお互い顔を見合わせた。
「教官ー!!生き返ったー!よかったーっ!!」
「斗癸…?心配かけてごめん…よくわからないけど…」
鶫はにこりと微笑んだ。
「ああくそ痛…ってあれ?おかしいな…なんで私生きて…ん?」
岸は、地面に咲いている花を見つけた。こんなところに咲いているのにはおかしく、岸はぽかんとしていた。
「お兄様ーっ!!生きててよかったですわーっ!!」
「リリー…ほんとにすまなかったな、守りきれなくて…」
「いえいえそんな…生きていれば良いんですのよ!!」
リリーは兄に抱きついた。
「ああーっ!!遥人さんじゃないですかーっ!私たち、一緒に死んだと思ってたのに…よくわからないけど、生きててよかったですねっ!」
「そ、そうだなー…」
千代子はニコニコし、遥人は少し困ったような顔で微笑した。
照れているのだろうか?
「蒼くん…蒼くん?」
「ひらりさん…気がついたんですね!他のみんなも…」
「一体何が起こったのか全然わかんないな…でも、なんかすごいことが起きたってのはわかる!蒼くんがやったの?」
「まあ、はい…俺だけじゃ無いですけど…」
「そっちの人も?」
「はい。というか、俺が強引にしただけなんですが…」
「お前が魔法を使う時に俺の力まで使ったから、俺の不老不死の力まで無くなったじゃないか!これからどう生きていけば…」
「ごめんなさい。でも、なんだか生き疲れていて苦しそうな顔をしていたような気がして…」
「…そうだな。確かに俺は、この力に内心うんざりしていたのかもな…」
betrayal Royerは微笑んだ。
「凪野蒼。敵である俺まで救ってくれて感謝する。本当にありがとう。他の部下にも礼を言わせよう。また日を改めて…」
「そんな。いいですよ…betrayal Royerさん…」
「まあつまり話をまとめると、私が壁をぶち壊して蒼くんをスカウトしたことが全ての事の始まりだったわけ??」
「確かに…?」
ぽかんとしている蒼をそっちのけに、ひらりはニコニコ笑っている。蒼も苦笑いをした。
そして…都月がbetrayal Royerの目の前にやっていた。
「何か言うことはないかな…?betrayal Royer」
「都月…ほんとお前の部下はすごいな…羨ましいよ」
「君が言うべきことは、それではないと思うけど」
「…ああ、そうだったな。イポクリジーアトップとして、ここに誓う。もうマジカルシークレットを攻めたりなどしない。イポクリジーアは今日、解散する」
「え…別にそこまでしなくても…」
「凪野蒼。トップである俺が決めたことだ。あとは皆、自由に人生を満喫すれば良い。俺も残りの余生を楽しむとしよう」
「…」
蒼は微笑する。「残りの余生だなんて…」と。
「マジカルシークレットも、蒼が私のメモを予知通り読んでくれたから、もう解散でいいかなぁ。新たな敵もいないし、きっと世界はこれから平和になるだろう。敵も味方も関係なく…ね」
「そうですね…」
「じゃあ解散ってコトで…」
「つつつ都月様っ!!じゃあもう私は用済みってことですか!?私、他に行くところないんですけどっ!」
どこから来たのか、彩が都月に必死で抗議する。
「いやそんな心配しなくても…うちに置いてあげるから、安心して…」
「ほんとですかっ!?それはもう、結こ…というものに至るのでは!?」
「そういうことじゃないと思う」
彩はかくんと倒れ込む。
「じゃあ私のことこき使うんですか…?」
「うん。ちょっと仕事を手伝ってもらおうかな」
「仕事…」
どんなものだろう。都月の残りの仕事とは。やはり、この混乱をおさめるものだろうか。
「いいえ、一生ついていきますっ!」
「あ、それと蒼くんはきちんと残りの青春を楽しんでね」
「はい…」
「じゃあまずは片付けからですね…ひらり先輩!頑張りましょ!」
「うんそうだね。じゃ、解散は片付けが終わってからかなー。もちろん、イポクリジーアも手伝ってね〜」
「は、はい…」
イポクリジーアの者たちは、しぶしぶうなずく。
そのあとは、きっと両組織が仲良く協力し合い、平和に世界を築いていくのだろう。
「もうこの本は必要ないか」と都月は本を川の中に放り投げ、歩き始めた。
俺が住んでいるこの世は、なんだか変だ。
変というか…人間と、人間じゃない”別の種族”が共存する世界である。
異世界漫画やラノベに出てきそうな魔法を使える奴もいるし、俺みたいに平凡でなんもできない奴もいる。
でも、俺はそんなこの世界が大好きだ!!
〈終〉
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