テラーノベル
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「……もう一度言ってみろ。殺してやる」
護身用に持ち歩いている短刀を抜く。
「ミルベラだから、婚約した」
本当なら、俺だって閉じ込めてしまいたい。
けれど、そんなことをしたら、もう信頼してはもらえない。笑顔を向けられることもない。
俺がどれほどの理性を動員して、気持ちを抑えていると……。
「ルミアス、はき違えるな」
短刀をルミアスの首にあてる。
引きさえすれば、そこから大量の血が流れるだろう。
「お前はラットゥース公爵家の養子でしかない。代わりなど、いくらでもいる」
いつでも俺はお前を殺せる。
「……知ってますよ。そんなこと」
ルミアスは笑みを浮かべ、短刀の刃を握る。
その手からは血が流れ、ソファーへと落ちていく。
「あーぁ。僕が殿下に傷付けられたと知ったら、ベル姉様はどう思いますかね?」
「言えばいい。問題はない」
問い詰められるだろうが、それで崩れるような関係は作っていない…………はずだ。
「…………面白くないなぁ」
ぼそりと呟くと、ルミアスは短刀から手を離す。
そして、ポケットから白いハンカチを取り出し、傷口にあてた。
ハンカチは、みるみる赤く染まっていくが、ルミアスは痛がる素振りすら見せない。
「大切なら、きちんとしまっておかないと。そのうち誰かにとられちゃいますよ?」
「しまおうとして、逃げられたやつもいるけどな」
そう言いながら、短刀をしまう。
「へぇ。それは、さぞかし残念だったでしょうね」
わずかに視線は鋭くなったが、表情は崩さない……か。
まぁ、いい。今回会ったのは釘を刺すためだ。
「ミルベラのために、懸命に働けよ? 不要にならないようにな」
エリーカがもうすぐ帝国へ立つ。
そうなると、ルミアスの動きを抑制するものが減るな……。
ルミアスの監視を増やすか。
公爵への注意喚起はどうするかな。
ローテーブルにのっているベルを鳴らす。
「ラットゥース公爵子息が帰るそうだ」
部屋へと入ってきた従者のうちの一人に指示を出し、ルミアスに微笑む。
「最近、ミルベラはお前に微笑んだか?」
「…………」
動向が散大した……ということは図星か。
馬鹿だな。
自由を奪えば、そうなることくらい予想がついただろ。
「依存させればいいんですよ」
すれ違う瞬間、ルミアスはそう呟くと部屋を出ていった。
「狂人め……」
だが、その気持ちが分かってしまう。
それは、俺の願いでもある。
「似た者同士ってことか……」
違いは、育った環境と背負うもの。
そこが俺とルミアスの差だろう。
***
ルミアスを帰らせ、俺は商人のレナールと取引に入る。
ルミアスのした取引内容も悪くない。ラットゥース公爵家なら、ここが限界だろう。
だが、まだ改善できるな。
「──なるほど。だが、そうなるとここの領地へ流通されない」
「そこに行くには、ぐるっと迂回しなければなりません。途中に通るこの領地の通行料が高すぎます。それに、この先の橋は数年前の大雨で流されています」
レナールは地図を指を差しながら話す。
「橋は直ったはずだが?」
「いつですか!?」
「半年ほど前だな。あと通行料だが……」
目配せすれば、従者はすぐさま小さな木箱を開き、ローテーブルへと置く。
「これは!?」
「いつもよく働いてくれてるからね」
王家直属に命を受け、行商を行う証であるカードにレナールは目を見開く。
「もちろん強制はしないよ」
受け取るも受け取らぬも、レナール次第。
このカードを持てば、通行料の免除や新事業を行う時の支援など、数多くの恩恵を受けれる。
その代わり、王家からの依頼を最優先しなければならない。
だが、得難いものもある。
それは、王家に信頼されているという証。
商売は信頼だ。それがなければ、どんなに良い品でも適正価格で売買することはできない。
「…………あ、ありがとうございます」
レナールは震える手でカードを受け取ると、頭を深く下げ、最敬礼をした。
「これからも期待しているよ」
きっとレナールはこれをうまく使うだろう。
決して大きな商会ではなく、設立してまだ浅い。
急成長したレナールの商会を面白くないと感じている奴らも、これで黙るはずだ。
邪魔をできなくさせるには、力を与えるのが一番だからな。
さぁ、ここ数年、目をかけてきたんだ。
投資した分、きっちり返してもらおうか。
「それと、ウィリブ商会が後援として名乗り出てくれた。どうする?」
「ウィリブ商会ですか!?」
国で一二を争う大商会にレナールは目を剥いた。
まぁ、そういう反応になるだろうな。と思っていれば、従者が咳払いをする。
「も、申し訳ございません。ウィリブ商会って、あのウィリブ商会ですよね?」
「そうだ。悪い話ではないと思うが、どうする?」
「…………何が条件でしょうか」
さすが、よく分かっているな。
俺はにこりと笑みを浮かべると、カードに視線を移す。
「ウィリブ商会ですら、そのカードは持っていない」
レナールは背筋を伸ばし、顔を引きつらせた。
潰せないのなら、取り込んでしまえばいい。
きっとウィリブ商会はそう考えている。
だが、そのくらい上手くやれるよな?
がっかりさせないでくれよ。
コメント
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うわあああアリウムside来たー!!🔥 ルミアスとの対峙シーン、刃を握る流血シーンで既に心臓バクバクだったんだけど、「依存させればいい」の一言が狂気すぎてゾッとしたよ…。でもアリウムも「似た者同士」って自覚してるところが深い。後半のレナールとの取引含めて、アリウムの冷静な計算高さと執着の狭間がたまらないエピソードだった!次が待ち遠しすぎる😭💕
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