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ぷりん
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はる☻
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移動車の中。
暗い夜の街を静かに通り過ぎる。
最近、すっかり増えた二人だけの時間。
甘いも気まずいもない、ただひたすらに居心地のいい空間。
腐れ縁。幼馴染。一蓮托生。
いろんな言葉で何とでも言い表せられる関係。
でも、ずっと開き続けているこの真ん中の、この一人分の、このいつまでも縮まらない、この当たり前の距離。
それを寂しい感じるようになったのいつからだろう。
どちらが先なのだろう。
「なぁ~仁人、しりとりせん?」
もう間もなく目的地に到着するという道中。
暇を持て余し、特に意味もなく持ちかけられた太智のお遊びに気まぐれに付き合っただけだった。
「んあ?まあ、いいけど…。」
「よっしゃ!じゃあ俺から!しりと、り!」
「…りんご」
「ゴリ、ラ!」
「ラッp「パンツ!」」
「ぶふっ!あははっ!言うと思ったけどさぁ!ノータイムすぎ…!」
「はい!つ!」
「つ、ね?つ…、ツール」
「ルー、ル!」
「ループ」
「プー、ル!」
「ルーツ」
「ツー…、あー!あかん!切れてもた!」
「なんか聞いたことある流れだったな。」
「つ、つ、ツンデ、レ!」
「あ、まだやるんだ?レッテル」
「また、るや!る……ルックス、がええよな〜、仁人って。て!」
「はっ?文章!?…じゃあ、てかがみ」
「み〜、みんなから慕われとってすごいよな。な!」
「え、なに?なんか俺、褒められてる?…なっとう」
「う、歌もうまくてかっこいい。い!」
「はぁ~、もうええて…、いす」
急に始まった俺を褒める言葉の数々に、嬉しい反面、辟易としながら外の様子を確かめる。
目的地はまだだろうか?
「す。…すきや、じんと」
その時、耳に届いた言葉。
今はしりとりの真っ最中。
だからこの言葉に音以外の意味なんてない。
太智の声が脳内で幾度となく再生される。
今、なんて言った?
続いた言葉の最後の1文字を何とか思い出す。
好きだと言って、俺の名前を呼んだ?
「……ト、カラ列島」
「うそちゃうで、本心やから」
「……らっ、こ、」
「こっちむいて。」
頬杖をついて車窓の外の過ぎ去る風景の方を向いていても、その光なんて視界には微塵も入ってこない。
跳ね始めた心臓は無視して、なるべく平静に冷静にと努める。そんなことに必死になっていると、いつの間にかおざなりになっていた反対の方の手が太智の温かな手で包み込まれた。
「…手、放せよ。」
そのまま指が恋人繋ぎのように絡まってくる。
「よ、横顔もきれいでかっこええの知っとるけど、今は俺の方向いてほしいな。はい、な」
「……な、んだ、それ、」
意識しないように意識して視線だけを向けると、嬉しそうに頬を綻ばせながらこちらを覗き込むように上目づかいでニコニコと笑っている太智と目が合う。指同士を絡めてにぎにぎと握りながら鼻歌でも歌い出しそうなくらいご機嫌だ。
「恋愛感情かは、分からんけど、最近仁人のこと見てると、なーんかドキドキして、もっといろんな顔見せてほしいなー、俺が引き出したいなーって思うねん。」
恋愛感情かはわからない。
ならばそれは、きっと。
太智の好きは、友達の友達くらいの距離感だったはずのやつと急激に打ち解けて、いつのまにか唯一無二の親友になっていた。的なノリで。
急に芽生えたその感情を、その存在を、恋愛のそれと履き違えているだけで。
きっとそのはずで。
「……ん、ついたね。太智の負け。」
「あ…!」
こんなことでほだされるわけがない。
太智のいうことなんて、冗談に決まってる。
これまでどれだけ見てきたと思ってるんだ。
何度となく期待しては、その気持ちをことごとく置いていかれて、やっとの思いで分厚い壁でこの感情を押し殺す術を身につけることができたんだ。
最近は特にそう。
直接的な仕事以外の時間に仕事とプライベートの間のような時間が増えてきて。
俺の中の一線が揺らぐことがないように。
分厚く分厚く。
太智の笑顔に影を落とさないために、太智のやりたいことが全力で叶えられるように、太智にきらきらと楽しそうに笑っていてもらえるように。
そして…。
大切にしておきたい太智への、この気持ちを誰にも侵されないために。
そこには、いくら太智だからって立ち入らせるわけにはいかない。
絡められていた指を解いて、足早に通り過ぎる景色を再び目で追った。
太智の好きと俺の好きは違うんだよ。
「もう終わりな。」
お互い何も言わないまま、目的地まで走る車の揺れに身を任せる。
太智も静かになって、窓の外を眺めている。
先ほど乱された心臓も思考も少しずつ落ち着きを取り戻してきて、何事もなかったように振る舞えるまでに回復していた。
何事もなかったかのように動画を撮影して、何事もなかったかのように再び車に乗り込む。
こんなこと、もうすっかり慣れたものなのだ。
…なのに、なんなんだ今日は。
「なぁ、仁人。もっかいしりとりして。」
「…は?、いや、もうやんねえよ。」
「ええやん。」
太智が何を考えているのか分からない。
俺が気乗りしないことには大して興味も示さないで、いつも受け流してくれるのに。やりたくないことをやりたくないと素直に言えば、いの一番に尊重してくれるのは太智なのに。
いつもなら、そうなのに。
今は、いくら嫌だと言ってもそれでも食い下がってきて、頭を抱える。
「ねえ、なんで?」
「やりたいから。」
「…やだってば。」
「1ゲームで終わりにするから。」
「……はぁもぉ…。やりますよ、じゃあ。」
行きの時のようなにこにこした暇を持て余した遊びのような雰囲気はなく、少し真面目が滲んでいて、なんだか緊張感が伝わってくる。
「じゃあ、仁人のと、からな。トマト」
「…トマトから始めるなら、このワンターンいる?…とかげ」
「ゲーム」
「むささび」
「ビーム」
「むかご」
「……ごめん、さっきは」
「また始まった…、もうさぁ、普通にしゃべろうぜ。」
少し沈んだ様子の太智にそう提案する。
「は、にする?わ、でもええで?」
でも、こちらの意見を聞き入れてくれる気配はない。
「聞けよ、もう…、はぶらし」
「四六時中仁人のこと考えてる」
「……ルーム」
「無理やねんもう黙ったままじゃ居れんかった」
「…タダめしっ、」
「幸せに俺がしたい」
「…っ、……いかだ」
「大好き」
「……っき、きらいだよ俺は!ばか…、」
耐えきれずに外を見る顔を左手で隠した。
「顔も耳も、真っ赤やで~」
「…っ!うるせえ…!見えねぇだろ、暗いんだから!」
「で、やって。それとももう、仁人は降参ってことでええ?」
太智に負ける、ということに、こんなところで今は出てこなくていい負けず嫌いな性格が顔を出す。
これはしりとりだ。音以外に意味はない。
そう言い聞かせても、自分の気持ちに良いようにしか頭が働かない。
「でんわ…!」
「渡したくないねん誰にも」
「っ…、も、もち…!」
「ちゅーしたい、そんくらいほんまに好きになってもうてた」
「たまてばこ…っ!」
「この一人分の距離、もう空けたくないねんけど」
「…ど、こでもドア!」
「アイラブユー」
「っやめろ…!もう!恥ずかしくないのかよっ…!」
「恥ずないよ~、俺は。ぜーんぶ本心やもん。」
太智は笑っている。
でも、俺を見つめるその瞳は不安で揺れていた。
俺で遊んでいたのは太智のはずなのに、なんでそんなに必死な目をして、自信がない表情をしてるんだ…。
「お前さっき…、恋愛感情かわかんないって、自分で言ってじゃねえか…」
「え…気にしとるん?それ。」
「当たり前だろ…」
「それ、ってさぁ、俺に言われて悲しかったん?」
「……は?」
「俺に、仁人への気持ちが恋愛感情かは分からんって言われたことが、ショックやったんやろ?」
「……べ、つに、そんな」
「仁人、アイラブユー」
「…なに」
「仁人の番。アイラブユーの、ゆ」
この期に及んでまだ続けるか。
ここまでくればこちらも意地だ。
「…ゆたんぽ!」
「ポーカーフェイス出来とらんよ。自分で思ってるよりずっと顔に出てんで」
「おまえさぁ…!」
「で」
「あー!もう!デジタルデトックス…!」
「素直になってええよ。受け止める覚悟できてるから」
「…ラ、ジオ!」
「俺と、付き合ってください」
「……だまってくれ…、頼むから…」
気付いたら、いつの間にか行きの時と同じように握られていた右手。でもその手がその時とは違って今は冷たくて。
太智の緊張を伝えてくるようだった。
いつもほかほかしていて温かくて安心させてくれる手をしているのに…。
そんなことを考えて気付いてしまうことに、嫌でも日ごろからふいに握ってくる太智の手のぬくもりを意識していることを再認識させられる。
太智の好きと俺の好きは違うんじゃないのか?
「付き合ってください。仁人…い、やで!」
重なった手が少しだけ震えていて、かすかに力が籠められる気配がする。
「…はぁ~、もぉ…、い?」
「い、ね?……いっ、いいよっ、!」
「えっ…!ほんまに?!ええの!?……っよっしゃー!」
「うるさっ…、」
空いている方の手で太智側の片耳を塞ぎながら、悪態をつくけど、心臓の鼓動が自分の耳に届くくらいに跳ねていて、喜ぶ太智の笑顔にきゅっと胸が高鳴るのは、もう自分じゃ誤魔化せない。
ほんのりじわりじわりと温かくなり始めた右手が、太智の喜びを包み隠さず伝えてくれていた。
「観念するわ、もう…。いつから気づいてた?」
「なにが?」
「いや、だから、俺が太智のこと、す…」
長年の経験値から、今、太智がにやにやと顔がだらしなく引き締まっていないのは、気持ちが通じあったこの瞬間の喜びを噛み締めているからだと分かる。
「しりとりしよー」なんてふざけた事を言い出して、やたらめったら褒めてきて、俺の気持ちに気付いていたから、俺をいじって弄んでいたんじゃなかったのか…?
それなら、一体いつから?
なんでしりとりなんか…?
「す?なに?」
太智がこちらを見ながら握った俺の手を自身の顔に寄せる。
手の甲を頬に当て、軽く頬擦りして、そのままちゅっと口付けられた。
「嬉しい、ホンマに。両思いやったんや…」
「今日から、正真正銘俺の仁人ってことやな」
握られた手、唇が触れた手の甲に全神経が集中して熱くなる。
太智の瞳が見たことないくらい鋭くこちらを捕らえていた。
早まったか…?俺…。
移動車の中。
最近では、すっかり増えた二人だけの空間。
その時間が増すごとに、新たな魅力に気付き、惹かれ、その度に恋をした。
誰かのところに行ってしまう前に、自分の腕の中に閉じ込めてしまいたくて、盾の欲しさにかこつけてチャンネルの復活を志願した。
やりたいこと、やったことないこと。
何でも一緒にやりたいから。
それは仁人とだから。
他の誰かでは意味がないし面白くない。
腐れ縁。幼馴染。運命共同体。
いろんな言葉で言い表せられる関係。
それに今日から恋人も加わる。
走る車に揺られながら、繋いだままの仁人の右手の指輪をくるくるといじる。
「次は何して遊ぼっか?」
コメント
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めっちゃ良かった……!しりとりで「好き」を伝える発想、ズルすぎるだろ(笑)💯 最初はノリでやってたのに、太智がだんだん真剣な言葉を織り交ぜてくる流れにドキドキが止まらなかった。仁人が「きらいだよ俺は!」って叫ぶシーン、照れ隠しが可愛すぎて悶えたわ。最後の「次は何して遊ぼっか?」で終わるのも尊すぎる……続きが気になる!🔥