コメント
0件
♣¯☾¯♣ 黒羽快斗side
家の前で青子と別れ玄関の前に立つ。
今日は色々あった。
何の前触れもなく転校生が来て、クラス中、いや学校中の話題になって色々とうるさかった事。
紅子が急に血相を変えてその転校生をどこかに連れていった事。
今思えば、あんな焦る紅子を見たことが無い。
何か、あったのだろうか。
呑気に家の鍵を手の上で回しながらそう考える。
カチャとドアを開ける。
「ただいまー」
誰もいない家の中にそう言ったつもりだった。
だけど、その予想に反して家の中からある人の声が聞こえた。
「おかえり、快斗」
「か、母さん?」
家の中にいたのはエプロンをつけた母親、黒羽千影だった。
「いつ帰国したんだよ!?一言ぐらい言ってくれてもいいじゃねーか」
そう言いながら靴を脱ぎリビングに母さんと入る。
キッチンからは美味しそうな、懐かしい匂いがした。
「まぁ、いいじゃないの。ちょっと驚かそうかと思ったのよ」
「驚かそうって……。で、急に帰国してどうしたんだ?」
「そうそう、盗一さんの妹さんがいるの知ってるかしら」
「は?親父兄弟なんていたのかよ」
「でね、その妹さん……華胡ちゃんって言うんだけどね、華胡ちゃんとその婚約者さんが事故で亡くなっちゃって、その娘ちゃん……まぁ引き取った子らしいんだけど、その子が1人になっちゃったのよ」
急に重い話になったな……
そうオレは客観的に思っていた。
だけど、親父が死んで残されたオレと、母親が死んで残された青子にその娘を例えてしまうと、他人事みたいじゃなくなってきた。
大切な人が死ぬのは、本当に苦しい事なのだ。
ただ、その話がオレに何の関係があるんだ?
「で、その娘ちゃん、1人じゃ可哀想でしょ?だからうちで預かることにしたのよ」
「……はい?」
「だ、か、ら、預かる事にしたの」
「……」
オレの脳
情報多い
パンクしそ
(即興五七五)
「え?娘だよな?男じゃなくて。」
「えぇ、そうよ?」
「ちなみに、何歳?」
「快斗と同い年よ。今日転校生がいたでしょ?」
「ま、まさか、速水寧音って奴?」
「そうよぉ〜!寧音ちゃん言ってなかった?従姉妹だって」
「は、アイツオレの事知らないっぽかったけど。それか、知らないふりしてたか」
「あらそう?寧音ちゃん少し不思議なところあるからねぇ」
「それはそうとして、寧音はいつ来るんだ?」
アイツが来ることによって、怪盗キッドの仕事に行きずらくなってしまう。
どうやって夜家から抜け出そうか。
オレの頭はその事を考えるのにいっぱいだった。
「明日の朝よ。今夜はホテルに泊まるらしいわ」
「明日!?急すぎねぇ?」
母さんの言葉を聞いた途端、思い出した。
明日の夜は丁度キッドの予告状を出していたのだ。
何て間の悪い。
「あらぁー、あの子、今一人でホテルにいるのよ?ホントは今日からのつもりだったけど、寧音ちゃんが快斗の事心配してくれてねー。いい子ねぇ」
「そ、そうなのか」
「そうよ!それと、快斗」
先程までとはうって違い、少し改まってから母さんが口を開いた。
「箱におさめる宝石は一つまでよ。わかった?」
「は、はぁ?」
改めて言う言葉がそれかよ……
♣¯☾¯♣ 小泉紅子side
「あなた、___よね?」
昼休み、今日転校してきた彼女を誰もいない部屋に呼ぶ。
彼女は、不思議な所が多すぎる。
黒羽くんにとって危険な存在になるかも知れない。
「な、何言っとるん?そんなん現実におるんか」
関西弁でそう言う彼女──速水さんは嘘をついている。
そんな事全てお見通し。
「嘘なんてつかなくて結構よ。」
「……ほなどうするん?うちの事拷問して情報でも聞き出すんか?」
「は、はぁ?」
「うちと小泉ちゃんは敵対しとるっちゅーことやろ?うちは別にかまへん」
「そう言うって事は、認めるのね。どうしてここに来たの?」
「どうしてって……どうしてこの学校に来たっちゅーこと?」
「えぇ、そう」
「……ただたんに家の用事で来たん。何か悪い?」
「それは……本当の事かしら」
嘘とは思えないが、一応そう聞いてみる。
ただ、速水さんは顔を暗くしてから少し微笑み浮かべた。
それがまだまだ下手なポーカーフェイスだって一瞬でわかった。
彼みたいなポーカーフェイス、それを真似できる人なんてそうそういない。
──この時の私が、これすらも演技だということに気づくはずもなく