W×M
・ケーキバース
※nmmn
※センシティブ
※R18有
凄く長い。とても長い。一話に収まりきらなかった。
二話構成になります。
wki side
今日はなんだか元貴の様子がおかしい。
いつも、レコーディングの時は俺や涼ちゃんにちょっかいをかけてきたり、膝の上に座ってきたりするくせに今日はしてこないばかりか避けてくる。
…主に俺を。
今は制作期間で楽曲を様々な面からプロデュースしていく元貴は多忙を極めている。
だからこそ、たまに態度が素っ気なくなる事もあるが、それは致し方無いことだと、むしろ支えていきたいと涼ちゃんと同棲していた時に涼ちゃんと2人で話し合ったことがある。
…でも、なんだか今日の元貴は特に俺に対して素っ気ない気がする。
いつもより甘えに来ない元貴に涼ちゃんも心配だったのか、休憩の合間に少し話しかけに行っていた。その時の元貴は少し笑いながら、「大丈夫。」や「MVどんな感じで撮るかとか今めっちゃ悩んでんだよね〜」など疲れてはいそうだがまだ少しだけ与力はある感じだった。
俺も後で邪魔にならない程度に話しかけに行くか。と思って元貴の様子を見ながらギターフレーズを練習する。
(あっ、今なら大丈夫そうかも)
と、思ったタイミングで元貴に近づこうとすると、背を向けていた元貴が思いっきりこちらに顔を向けてきた。
その顔には驚きや焦りが滲み出ていた。
あまりにも素早く、危険を察知したかのように振り返ってきたため、驚いて言葉が詰まり反対に頭の中は色々な言葉が駆け巡る。
(えっ、なんでそんなびっくりしてんの。俺なんかしたっけ。てか、どっちかというと焦ってるのか?いや、なんで?俺がケーブルを踏み掛けたとか?)
足元を見てみるが特に何も無いし、そもそも振り返ってくる時点で表情が焦っていたため俺の周りの状況を見たのが原因では無いのだろう。
「……どうしたの。元貴、?」
ようやく口を開いて紡いだ言葉は心配ではなくこの状況に対する疑問の意味が強くなってしまった。周りのスタッフもその様子を見ていたのか、心配そうに俺らに視線を向ける。
動揺が微かに残った顔で元貴も言葉を紡ぐ。
「……あっ…いや、なんでもない…」
絶対なんでもなくないだろ。その顔は。
一歩近づこうとすると元貴はバッと立ち上がり
「…ちょっとお手洗い行ってくる。」
と言って部屋から出て行こうとする。
…今のわざと、?俺を避けようとした?
「えっ、あっちょっと待っ、」
言い終わらぬうちに元貴は部屋を出て行った。
(なんで、、?俺なんかしたっけ?)
気のせいだと、なんとか自分の頭に言い聞かせ練習に戻る。
元貴が部屋に戻ってきた後も俺が近づこうとすると、元貴は離れようとしてくる。俺を避けようとしているのを周りに勘付かれないようにしているのだろうが、必死で隠そうとしているが故に周りからはある程度いつも通りに見えても、俺には違和感しか感じられない。多分涼ちゃんも感じているのだろう。
涼ちゃんは色々と俺に対してフォローを入れてくれていたが、ショックを受けすぎて耳に届いても、内容を理解するのに恐ろしく時間が掛かった。
数日したら戻るはず。それでも戻らなかったら俺が何かしたのかもしれないし、元貴の中の問題かもしれない。いずれにせよ、俺に何らかの原因がある。
このままでは俺の心ももたないし、原因が分からないことには解決出来ないため、数日様子を見て、状況が変わらなければ元貴に直接話を聞こうと考えた。
あれから4、5日たったが状況が変わらないどころか周りにも少しずつ勘づかれ始めて気まずい空気が流れている。
このままだとどんどん悪化してしまう。
ただ、元貴は俺の事を避けようとして話を聞かないし、そもそも話しかける前に離れていく。
…直接、家に行くしかないか。
その日の帰り、マネージャーに「元貴の家に向かって欲しい」と伝え、元貴とどう話し合うか考える。
(そもそも家に入れてくれるのか。が問題なんだよな…)
これに関しては最悪奥の手がある。元貴が何かあった時のためにと本人から合鍵を貰っている。これは、涼ちゃんも同じ。つまり、強行手段として勝手に家に入るということ。
……出来ればあまりしたくはない。が、やるしかない。とも思う。話し合いたい。元貴と。何が原因なのか。俺になにか出来ることは無いのか。このままなんて絶対に嫌だ。
そんな事を考えている内に見覚えのある建物が目に入る。元貴の家。
マネージャーが近くに車を止めてくれる。
「ありがとう。気を付けてね。」
と言ってすぐに入り口の自動ドアに向かう。元貴の部屋番号を入力し繋がるか試したが、繋がらない。俺よりも先に家に帰宅したはずだから、どこかで寄り道をしているのか単に無視しているのか。
一度外に出て元貴の部屋の場所を探してみる。
カーテンが閉められているため、分かりづらいがぼんやりとした明かりが見える。
……やっぱり強行手段に出るしかないか。
合鍵を取り出し、部屋番号を入力する部分の下にある鍵口に差し込む。そのまま回すと閉まっていた扉が開きエントランスへと進む。
エレベーターに入ってすぐに閉ボタンを押す。階数ボタンを押し、程なくして動き出した。
ポロンッ
着いた。
早く開いてくれと思いながら忙しなく足踏みをする。開いた瞬間、飛び出すように出たが、走ったら足音が周りに迷惑をかけるかもしれないと思って速さを持て余し、危うく転びかける。
早く早くと焦る自分の心を落ち着かせるようにゆっくり向かうが、じれったくて結局早歩きに変わっていく。
ようやく着き、一息ついたあとゆっくりとインターフォンを押し込んだ。
………。
…応答がない。
どうしよう。本当に入るべきなのか、?これで無理矢理入ったら元貴は俺のことどう思うんだろう。いつもどれだけ忙しくても奥に優しさが見える彼の瞳が鋭く冷たくなるのを想像して立ち尽くしてしまう。
このまま避けられるのは嫌だし、押し入って嫌われるのも嫌。
自分で会いに行くって決めたくせに。いざとなるとエゴが出てくる。
…でもさ、やっぱり避けられるのは嫌だよ。
俺が悪い事してるんだったら土下座して謝るし、何もしてないのだったら元貴に謝って欲しい。俺めっちゃ傷ついてるから。
……やっぱエゴ強いな俺。
深く息を吸う。ゆっくりと吐く。
合鍵を思いっきり差し込みドアを開く。
……はずだった。
ガッチャンッ
そうだった。ドアガードがあるんだ。完全に忘れてたこれの存在。
「…も、もとき、?いる?、よね?」
ドアガードかかっているため中に人がいるのは確実だ。
「…開けて。お願いだから、入れて欲しい。」
「………やだ。…帰ってお願い、」
声が返ってくる。元貴だ。久しぶりに口を利いてもらえて「帰れ」と言われてるのに嬉しさが込み上げてくる。
「俺もやだ。帰らない。」
ここで引き下がる訳にいかない。
「俺なんかしちゃった、?もしそうなら本当にごめん。謝る。…お願いだから避けないでよ。」
「避けてなんかない。」
「避けてるよ!…ねぇ、俺なんかしちゃった?嫌いになった?」
感情が込み上げてきて声が震えてしまう。
「若井はなんも悪く無いから。俺の問題だから。だから、お願い帰って。」
切羽詰まった声で返される。
「…なら、元貴謝って。」
あぁ、俺子供みたい。
「…は、?」
戸惑いの声が返ってくる。
「俺、傷ついてるから謝って。」
「…それは、、ごめん。」
「俺の目見て謝って。」
「…それ、もごめん…できない…」
「なんで?」
自分から驚くほど低く冷たい声が出てくる。追い詰めようとしたい訳じゃないのに。
「……若井は俺の事好き、?」
何を言うのかと思えば、いきなり質問される。驚いたがしっかりと答える。
「…好きだよ。元貴自身も元貴が作るものも全部大好き。」
「…じゃあさ、何があっても嫌いにならない、?」
「ならないよ。絶対。もしそんなことがあったら俺の事思いっきり殴って良いから。」
そう答えたあと、静けさに包まれた。元貴は何も言ってこないし、そもそも姿を見せてくれない。
パタッパタッ
足音がする。
元貴が姿を現した。ドアガードが外される。ほっとしたのも束の間、体を中に引き摺り込まれた。
…短編とは、?…甘々とは、?
…次回は甘いから。『ちゃんと』甘いから。
読み返したときに思いました。
「なんか、めっちゃ不穏な始まり方してない、?」
もう、無意識なんです。無意識に不穏を作り出してるんです。恐ろしいですね。
出来る限り早く続き出します。
コメント
2件
初コメ失礼します…!いやもうほんと大好きです!!更新待ってます!
不穏な始まりだけど、cakeverseですもんね✨ このスタートからの甘々展開は対比が凄くてヤられちゃいますねぇ⤴️