テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
clst
音一つない市街地で忌々しい救急車のサイレンがなっている。
付き合い始めた頃は毎日が輝いていた。
でも、最近は女遊びばっか。
僕が「浮気してる?」と聞いても嘘をつく。
そんな君は道徳の向こう側の人間だったね。
しつこく聞いたら、怒ってたよね。
お互い限界だったんだよ、きっと。
あの時の僕達の会話は少なかった。
st (無言で部屋を出ようとする)
cl 「今日も、行くの?」
st 「いや、今日は違う」
cl 「…そっか、いってらっしゃい」
今日は違う?
違うでしょ
今日も女遊びしてくる、でしょ?
わかってるよ
これだけの会話。
ここに愛はなかった。
あったとしても一方通行だった。
昔の君は僕の人生を明るく照らしてくれた生きる意味だった。
でも、そんな君はもういない。
せめて、バレないようにしてくれたらいいのに。
気づかずにいられたかもしれないのに。
幸せなままでいられたかもしれないのに。
cl 「本当に、バカな嘘つき」
カーンカーンカーン
踏切の音が響く。
脳裏に楽しかった日々がよぎる。
死神は私に同情しているのだろうか?
でも、早く僕を連れてって。
踏切の音が合図となり、僕は君に別れを告げる。
cl 「でも、大好きだったよ」
それはとても素敵な6月のお話。
コメント
1件
感想、読ませていただきました……。静かな痛みと、それでも残る優しい記憶がぎゅっと詰まったお話でしたね。 踏切の音と「バカな嘘つき」という台詞が特に記憶に残っています。本当は気づいていたのに、気づかないふりをしてまで一緒にいたかったんだろうな、と思うと切なくなりました。大好きだったからこその最後の別れの言葉がとても美しくて、胸が締め付けられました。まだ1話なのに、もうこの世界に引き込まれています。続きも楽しみにしていますね。