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8.心残り
「…この世界ももうすぐ離れる。」
最近物が掴めないことが増えた。
その事実に直面してもうすぐ消えてしまうことを悟った。
今日は俺の最期をここに残そうと思う。
「潔行っちゃった〜!!!」
「泣いてんのお前だけだぞ蜂楽!笑」
あの日のことは覚えてる。
潔の乗った電車を眺めてた。
俺の後ろで泣く奴とそれを笑う奴。
俺はたしか泣けなかった。
「おい、凛、どこ行くんだ?」
「帰る。もうここにいる意味はなくなった」
黒名に呼び止められたがそれを気にもとめないで俺は歩いていった。
向かう先はあの丘。本当は潔に渡したかった物。
「…あれ、やっぱ取れねぇかな…。」
俺の目線の先には花があった。
名前も知らない。白くて小さなたった一つの花。
柵の外側に咲いてあって手を伸ばせば届きそうだった。
でも柵に腕が挟まって花には届かない。
それを理由に少し前に諦めた物。
潔の出発には間に合わなかったけど、ずっと心残りだった。
それを取るために柵を跨いで手を伸ばした。
たしかにあの日、花を掴んだ。
でも、足は地面を掴んでくれなかった。
「情けない。こんな最期笑われちまうな、笑」
「凛。ほんとに居たのか…」
冴が俺に会いにきたのはまた別の話。
ここで気づいたこと。それは、俺は愛されてたんだなって思った。
不器用なこと、愛想がないこと、そんなのは分かってた。
未練がよけいに増えていく。
俺は、まだ_____。