テラーノベル
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薄暗い高専の資料室で、狗巻棘は手元の古びた書物に視線を落としながら、心の中のざわつきを必死に抑え込んでいた。
きっかけは、ほんの数分前のこと。
グラウンドで禪院真希と乙骨憂太が親しげに話している姿を、窓から見てしまったのだ。
「憂太、お前またその構え甘くなってんぞ」
「あはは、真希さんは相変わらず厳しいなぁ……」
ただの戦術の相談。ただの、信頼し合う同級生としての会話。頭では100回だって理解しているのに、真希に向ける憂太の柔らかい笑顔を見るたび、胸の奥がドロリと濁る。
(おかか)
いつも言葉を制限されている自分には、あんな風にテンポのいい軽口は叩けない。「おかか」「ツナマヨ」だけで繋がる僕らの関係が、急にひどくもどかしく、そして不確かに思えてしまう。
「……しゃけ」
小さく呟いた声は、自分で思う以上に棘を含んでいて、苛立ちが隠せなかった。
「狗巻くん、ちょっといい?」
背後からかけられた声に、棘は肩を跳ね上げた。
振り返ると、そこにはいつもの穏やかな笑みを浮かべた憂太が立っていた。しかし、その瞳の奥にあるはずの光が、どこか冷ややかに沈んでいるように見える。
「……おかか?」
「ううん、用があるのは僕の方。最近さ、僕が真希さんと話してるとき、狗巻くん、いつもすごく怖い顔してるよね」
心臓がドクンと跳ねた。
バレていた。隠せていたつもりだったのに、憂太の鋭い観察眼は、棘の内に秘めた醜い嫉妬を完璧に見抜いていたのだ。
「……!」
気まずさに耐えかねて、棘はすれ違いざまに資料室を出ようと足を進める。だが、その腕が強引に掴まれた。
「待って。逃がさないよ」
ドン、と大きな音がして、棘の背中が冷たい壁に押し付けられる。憂太の両手が棘の頭の横に突かれ、完全に退路を断たれた。
「高専の特級術師」としての圧倒的な呪力と質量が、至近距離から棘を押し潰すように降り注ぐ。そのプレッシャーに、棘は息を呑んだ。
「な、に……」
「何、じゃないよ。狗巻くん……真希さんに嫉妬してるでしょ」
憂太の顔が、目と鼻の先まで近づく。その綺麗な顔に浮かんでいるのは、怒りではなく、どこか歪んだ愉悦のような笑みだった。
「僕が他の人と話してるのが、そんなに気に入らない?」
「つな……っ」
「言葉を使っちゃダメだよ。僕を『眠れ』とか『動くな』って言ったら、棘の喉、ボロボロになっちゃうでしょ? 自分の体が大事なら、大人しくしてて」
憂太の長い指が、棘の襟元に触れる。そして、いつも口元を隠しているハイネックのファスナーを、ゆっくりと引き下げた。
露わになる、蛇の目と牙の呪印。そこへ、憂太の親指が愛おしげに、しかし強く押し当てられる。
「……あ」
「僕のこと、好きなんでしょ? 隠さなくていいのに」
耳元で囁かれた低く甘い声に、棘の思考が真っ白に染まる。
憂太は棘の顎を強引に上向かせると、有無を言わせない強さで、その唇を塞いだ。
「んむ……っ!?」
呪言を警戒する隙すら与えない、深く、貪るようなキス。息が吸えなくなり、棘の目尻から涙が零れ落ちる。
いつも優しくて、一歩引いているはずの憂太が、今は獣のように獰猛に自分を支配しようとしている。そのギャップと、ずっと欲しかった体温の熱さに、棘の体から急速に力が抜けていった。
ようやく唇が離れたとき、棘は壁に寄りかかっていなければ崩れ落ちてしまうほどに乱れていた。
「はぁ、は……っ、ゆう、た……」
「ねえ、狗巻くん。真希さんを見てイライラするくらいなら、僕のことだけ見てよ」
憂太は棘の涙を指で優しく拭いながら、その瞳にドス黒いほどの独占欲を滾らせて微笑む。
「これから、僕が狗巻の頭の中、僕のことでいっぱいに買い占めてあげるから。……覚悟してね?」
再び重なる影に、棘はもう、拒むための言葉を探すことすらできなかった。
#社会人
寿命㌫(主)
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り ん ご く れ ~ ぷ .
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コメント
1件
うおおおおお!!みわ💞さん、第1話から飛ばしすぎでしょ!!😭💕💕 狗巻くんの「おかか」「しゃけ」だけで心情を表現するもどかしさ、めっちゃ伝わってきた…!言葉にできないもやもやを抱えてる感じがリアルすぎて胸がギュッてなった🥺 そしたらまさかの憂太の豹変!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!? 「逃がさないよ」って壁ドンからの「買い占めてあげる」発言…!?!?!?!普段優しい人が内側にドロドロの独占欲隠してるの最高すぎません???😇💖 呪印に触れる指とか、呪言警戒させないキスとか、もうエモさと危うさのバランスが天才的すぎる…!2人の関係がこの先どう転んでいくのか、続きが気になって夜しか眠れないレベルです!!続きくださいお願いします!!!🙏💫