この作品はいかがでしたか?
201
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永遠花火 【水白】
今回は、しろる。様のコンテストに参加させていただきます。
曲はボカロより「永遠花火/謝謝P様」です。
簡単な設定と注意事項です。
設定
名前:有栖 初兎
設定:盲目で、母に心配されている。病院で知り合ったほとけに恋心を抱く。心配性で、深く考え込む癖がある。盲導犬のブライユを飼っている。
名前:稲荷 ほとけ
設定:とある病院で働く医師。恋愛経験は全然なく、恋に関しては相当鈍感。
注意事項
・この曲パロは自己解釈、曲設定の軽い変更を含みます。本家様が第1です。
・iris様2次創作、水白です。地雷さんは今のうちにプラウザバックお願い致します。
・水白の年齢操作あり(水くんの方が年上設定です)
それでもいい方、どうぞ。
あれ…どこやろうか、ん…?
俺、点字ライターどこ置いたんやろ…
ガサガサ…
何も見えない中、手探りで点字ライターを探す。
ファサッ…
「…?」
「あ、有栖さん…?」
この声は、稲荷先生…
「何か、探しているんですか?」
「え、あ…ッ」
この素材…もしかして俺が触れたのは稲荷先生の白衣だったのか…
「せんせッ、すみません…」
「あ、えッ、ちょっとぉッ!?有栖さん!?」
ダメだ、あの場所から逃げなきゃ…
俺、稲荷先生のこと、好きになってもうてんのに、白衣を…
変に誤解されたら…どうしよう、嫌われたら…
俺は息が切れつつも走っていく。
必死に階段の手すりを掴んで、俺に出せる全速力で夜の病院の階段を上がっていく。
遠くで稲荷先生が俺を探す声が聞こえるような気がする。
__________________
「ッはぁ…はぁッッ…ここ、屋上…ッ、やろかッ…」
ズキッ…
「ッう…」
胸が痛いや…w
これが恋なんだろうけど…いつも俺は逃げてばっかやなぁ…かっこ悪いな、w
惨めな自分を嘲笑するかのように心臓が痛かった。
ヒューッ パァンッ
「は、なび…?」
打ち上げ花火が遠くであがっているのだろうか、遥か遠くで音が聞こえるような気がする。
花火って、散るものだよな。
俺の恋もやっぱ、叶わへんのやろなぁ…
__________________
「お母さん、落ち着いて聞いてな。俺、稲荷先生のこと、好きになってもうて…」
「…初兎、」
「俺、本気やねん…」
「盲目者と健常者で恋は…」
「恋は…何?」
「…いいえ、やっぱり今の忘れて。」
「あのね、稲荷先生を好きになっちゃダメなの。」
__________________
「…ごめんなぁッ、お母さん、俺ッ、言うこといっつも聞けへんで…ッ、うッ…ポロポロッ」
思い出すたびに、胸が締め付けられるような感覚と共に涙が溢れ出してくる。
でもな、俺…一度触れてしまったら忘れられなくなったんや。
あの人の優しさに触れたら、心が離れられなくなって…
ごめんな、ずっと親不孝で。
「花火…ッ、先生と見に行けるかな…?ポロポロ…」
ガチャッ
「ひッ…!だ、誰やッ…」
「有栖さん、」
__________________
どうしたんだろう、有栖さん。
点字ライターなんて持って急に走って行ったけど…
「有栖さ~ん、有栖さ~ん?」
有栖初兎くん。
同級生からのいじめが原因で、数人に道路に投げ出されて車に撥ねられた。
その時に両目ともに異物が入って失明した。
それ以来この病院にずっと入院している。
体はもう万全で、先ほどのように走れるまでになっている。
彼は、なかなか笑ってくれない子だ。
いじめもあって、きっと人間不信になってしまったのだろう。
だから、僕も少し避けられているのかもしれない。
それでも彼は僕の大切な患者だから、探さなくてはならない。
「そうだ…今日、花火大会が隣町で…屋上にいるのかも。」
__________________
ガチャッ
「ひッ…!だ、誰やッ…」
「有栖さん、ごめんね。急に来て驚かせちゃって。」
「い、稲荷先生…?」
なんで、稲荷先生が…
いや、でもここで想いを伝えておくべきなのかな…
もうそろそろ__数日で退院って言われたし…
「あ、先生…」
「ん、どうしたの__」
ガタンガタン…
「…す、好き」
ガタンガタン…
「ごめん、今電車の音で聞こえなくて…何て言ったの?」
「…いいんです、気にされなくて」
「そっか…」
また、言えなかったな。
そんな俺に、花火が降りかかるかのように遠くから音がこだまする。
…そうだ、退院して会えなくなる前に、花火大会に__
「先生、さっき言いかけてたのは…」
「うん、」
「…はな…い、しょ…きま…せん、か?」
「…?」
ッ…ダメだ。
片想いの声は、震えて上手く喋れなかった。
カタカタカタ…
「…ん、見てください。」
「あ、うん…」
…なんやこれ、照れくさいなぁ
“はなびたいかいいっしょみにいきませんか?”
「ッ…!?//」
「せ、先生…ごめんなさい、やっぱ俺…」
「ら、ライター貸して」
「は、はい…ッ!!」
はぁ…返事打つんかな。
どうせ断られるんやろうけどな…恥ずかしい。
カタカタとライターを打つ音が喉を、首を絞めていくような錯覚に襲われる。
「はい、これ…」
「あ、ありがとうございます…」
先生が打った点字に指を置き、辿っていく。
“なんじにあう?”
「…う、そ」
「…嘘じゃないよ、一緒行こうよ、“初兎くん”。」
しょ、初兎くん…!?
今先生…有栖さんじゃなくて初兎くんって…!?
「じゃあ、18時で…」
「わかった、楽しみにしてる。」
_________________
「ワンッ」
「わ、ブライユッ、待ってッッ!💦」
ブライユは吠えながらいつもより早い足取りで僕を豊島園へと導いた。
「…着いたのかな」
肌で人気の多さを感じる。
ざわざわと話す群衆の声に酔いそうになる。
「ワンッ」
「どうしたの、ブライ…」
「初兎くん、ごめん、待たせちゃったかな、?」
い、稲荷先生に反応したのか…!
「稲荷、先生…」
「初兎くん…浴衣、似合ってる。」
「え…あ、ありがとうございます…」
ギュッ
「はぐれないように…手、繋いでいい?」
「はぇ…ッ!?//」
ダメダメ、先生は俺が好きで繋いでるんじゃない、勘違いしちゃダメ…ッ!
…先生も浴衣できてるのかな、肉眼で見たかったなぁ…。
僕にあなたは見えなくても、誰よりあなたを見つめてる。
そう自信を持って言えるのに、好きなのに。
目が見えないだけで、この感情には隔たりができるんやなぁ__
「盲目者と健常者で恋は…」
「簡単には出来ない」
そう言おうとしてくれてたんだよね、お母さん。
…わかってる、わかってる。
それでもね、諦められないんだよ。
そして、今日言わなきゃ…叶う可能性もなくなるかもしれないんだよ。
ごめん、こんな俺で…許してね。
「そろそろ…花火、上がるのかな」
「そうですね…」
ヒューッ
「お、初兎くんッ、1発目きたよッ!」
「そうですか…!」
…打ち上がる前に言わなきゃ、自分でもケジメをつけなきゃ…
パァンッッ
「…す、き」
「ごめん、なんか今…言った?花火の音で…」
その声は、届かない。
でも、絶対に__今日は伝えなきゃ。
ヒューッ
「また、上がるね…!」
パァンッ
「好き…」
ヒューッ
パァンッッ
「好き、!」
好き、大好き…
次々に上がる花火に合わせて、気持ちをどんどん大声になりながら伝える。
「…しょう、くんッ…ポロポロ」
「稲荷先生…」
長い時の中を…いや、永遠花火が打ち上がっている。
「…僕、誘われて花火大会行ったことなくて…それで、久しぶりに花火も見れて、すっごく感動したし、嬉しかった…。こんな感動で泣くなんて、ね…。今日は本当にありがとう。」
ギュッ
「…?」
全身が温もりに包まれているような気がするけれど、何が起こったのか正直よく分からなかった。
もしかして…抱きつかれてる…?
そして__抱きついたのはあなたですか?
________________
今日かぁ…ついに俺、退院してしまうんか…ッ
もう、稲荷先生ともお別れかぁ…
でも、聞こえてたかはわからないけど、ちゃんと好きって言えてよかったような気もする。
「稲荷先生、うちの息子がお世話になりました…!」
そう言って、俺の母親は頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそ…なんだか僕も初兎くんからいろいろなことを学んだような気がします。」
「…初兎、ちょっと来て。先生すみません、少し失礼しますね。」
「あ、はい…」
稲荷先生は若干困惑したような表情で、返答する。
「何、お母さん。」
「初兎…あなたいつから稲荷先生に“初兎くん”とかって言われるようになったの…?」
「ッ…!」
胸の奥に何かが刺さったような錯覚に陥る。
「お母さん…ッ、聞いて欲しいの。」
「…何、?」
「稲荷先生…これが僕の、初恋の相手なんだよ。」
「ッ…初兎くん、?」
「は、初恋…」
「前にもこのことは言ったと思うけど、改めて紹介させて。」
もう、口にしてしまった。
後にはもう戻れない__だけど。
俺は本当にこの人を好きになってしまった。
あなたはどうしようもないほどかっこよくて、俺はどうしようもないほどあなたの虜になってしまっているのだ。
「こちらが稲荷ほとけ先生。俺の初恋の相手で、優しくて…。いじめのせいで人間不信だった俺が、唯一家族以外で心を開けた人。この人は__俺の光なんだ。痛かった体を、心を全部、癒してくれた…ッ、だから、一目惚れ…してッ…。あの時お母さんは多分、「盲目者と健常者で恋は…簡単には出来ない」。そう言おうとしてくれてたんだと思う。でもね、お母さん。俺もう、子供やないんよ。ちゃんと、大人になってる。お母さんが立派に育ててくれたお陰やで…ッ?だから、泣かんとってや。…な、笑って?」
「…初兎、」
「先生、急でごめんなさい。花火大会の時も、屋上で会話していた時も、俺はずっと2文字の言葉を隠し続けてきました。でももう__お分かりでしょうけど、言わせてください。」
「…初兎、くん?」
「…まだわからないんですか、先生?」
「…?」
「好き…稲荷先生、いや“ほとけ先生”のこと、大好きです…」
「…はぇッ!?」
「初兎はもう…成長したんやなぁ…ッ、!ポロポロ」
お母さん、先生…
俺は少しは変われたでしょうか?
あの暗かった心は、明るくなったでしょうか?
________________
「せ~んせッ、今日も会いにきたで~」
「あ、“初兎ちゃん”!今日も待ってたよ~!てか、固いよ。いむくんでいいのに~w」
「…なんかそれ、俺だけが呼べるって思うと嬉しいです、//」
「も~、初兎ちゃんかわいすぎ~!!」
チュッ
「んむ…ッ、て…“いむくん”ッ!?付き合ってからキス魔になった思うたけど、なんか悪化してるような…」
「初兎ちゃんがかわいいのが悪い。」
「は?」
はぁ…このやろー。
1年前は、俺が告った時には直前でも俺の好意に気付いてないレベルで鈍感やし、いじれたんやけどもう逆転してもうてる…💦
「…じゃ、1周年記念日の花火大会、楽しもな」
「うん…!」
「これで最後…線香花火だね。」
「久々やなぁ、線香花火とか…」
線香花火の先端に火をつけ、ゆっくりと弾け出す時を待つ。
「お、パチパチ言うてきてんなぁ。」
「そうだね~!」
そう会話しつつ、俺はいむくんの顔を手で探していく。
「むッ、初兎ちゃん、それほっぺ!w」
「ほ~ん♪」
「…?」
チュッ…クチュレロッ…ジュウッ
「初兎ちゃ…ッ、んッ///」
「ぷはッ…こんなにかっこ悪いキスでええの、?」
ふたつの線香花火がひとつに交わる時、ふたりの唇もひとつに重なった。
「あ、そういえばさ。初兎ちゃんが屋上で僕に好きって言った時…」
「?」
「本当は聞こえてた」
…え?
「それ…本当なん?…カァァァァッ//」
「でも僕鈍感すぎて、いい先生って思われてるんだと思ってて、w」
「も~、ほんまに鈍感やなぁ、w」
「はははッww でもさ、目を瞑ってても見えるな。赤、青、黄色、緑…色とりどりの花火が。なんか、永遠に続いてるみたい。」
「花火…俺も見えるし、それが俺らを繋げてくれたんやもん。俺らの仲が永遠って証拠やん、それ。」
あぁ、そうだ。
花火は散るものだ。
だけど、その散る前に、大きく花が咲く。
だから、その花が咲いている今を思う存分楽しめばいい。
「…理由もなく、初兎ちゃんと一緒にいたい。それが…恋、なんだよね。」
「…恥ずかしいからそんなこと言わんでや、ほら。次の線香花火しようや。」
時の許す限り、ずっといむくんに恋していたい。
俺でもいいなら、ずっと…
顔痩せや髪は見えなくていい。
心だけは見えるから。
十年先も照らしてる、ふたりを。
永遠花火、それは__
一途に想う心。
青より蒼く赤より紅い 僕らの永遠花火
これで以上です。
上位に入りますように。
ちなみに、今回のサムネイルはこちらです。↓
こちらは自作ですので、保存やスクショは可能、無断転載や自作発言や加工は禁止とさせていただこうと思います。
よろしくお願い致します。
コメント
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最高です! 優勝目指して(?)頑張ってください!