テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
7,359
28
ゴゴゴゴゴ……
遺失物センター全体が揺れていた。
棚が震える。
書類が舞う。
天井の照明が明滅する。
職員たちの悲鳴や怒号があちこちから聞こえてきた。
『全職員へ通達』
『第一級緊急事態発生』
『全員避難準備』
館内放送が何度も繰り返される。
🦈「何が起きてるの!?」
こさめが叫ぶ。
しかし今回は誰もすぐには答えなかった。
みんな封印庫の方向を見ている。
まるで。
そこにいる何かを恐れているみたいに。
🍵「未来が動き始めた」
ようやくすちが言った。
穏やかな声だった。
でも少しだけ震えている。
🦈「未来って箱の中じゃないの?」
🌸「箱の中に入ってるのは一部だけ」
らんが答える。
🌸「本体はもっと大きい」
🦈「大きい?」
🌸「世界規模」
🦈「大きすぎるよ!?」
こさめが叫ぶ。
なつが頭を抱えた。
🍍「その反応が正しい」
🦈「普通そうだよね!?」
📢「そうだな」
いるまも珍しく同意した。
その時。
未来管理室の鏡が激しく光り始めた。
数字が変化する。
81%
82%
83%
どんどん上がる。
そして。
新しい文字が浮かび上がった。
**【記憶同期開始】
🦈「同期?」
こさめが首を傾げる。
すちの顔色が変わった。
🍵「まずい」
🦈「え?」
🌸「まずいなあ」
らんも珍しく笑っていない。
すると。
鏡が青白い光を放った。
部屋全体を包み込む。
そして。
こさめの身体からも同じ光が溢れた。
🦈「わっ」
視界が真っ白になる。
気づくと。
またあの場所だった。
でも今までとは違う。
景色が鮮明すぎる。
風の匂いも。
空気の温度も。
全部分かる。
どこかの塔の最上階。
そこに三人がいた。
若い頃のすち。
若い頃のらん。
そして。
過去のこさめ。
三人とも真剣な顔をしている。
目の前には巨大な光の球体。
まるで小さな太陽みたいだった。
🌸『もう限界だよ』
らんが言う。
🌸『未来が暴走してる』
🦈『分かってる』
過去のこさめが答える。
その声は今より少し大人びていた。
🦈『このままだと世界ごと壊れる』
すちも苦しそうだった。
🍵『方法は一つしかない』
沈黙。
三人とも分かっている。
だからこそ苦しい。
🌸『未来を分解する』
らんが言った。
🌸『そして隠す』
🦈『……』
🌸『誰にも見つからない場所へ』
過去のこさめは黙ったまま光の球体を見つめる。
それは人類の未来だった。
世界中の願い。
希望。
夢。
可能性。
全てが集まったもの。
そして。
暴走しかけているもの。
🦈『俺がやる』
過去のこさめが言った。
すちが顔を上げる。
🍵『だめだよ』
即答だった。
🍵『危険すぎる』
🦈『でも俺しかできない』
🍵『それでもだめ』
すちは珍しく強い口調だった。
らんも黙っている。
だが。
過去のこさめは笑った。
今と同じ笑顔で。
🦈『大丈夫』
🍵『大丈夫じゃない』
🦈『大丈夫だって』
🍵『こさめちゃん』
すちの声が震えている。
🦈『もし失敗したら』
過去のこさめは少しだけ考えて。
それから。
いつものように笑った。
🦈『その時は忘れて』
風が止まる。
時間が止まったみたいだった。
🍵『え』
🦈『俺のこと』
すちの顔が青ざめる。
らんも目を見開く。
🦈『忘れて』
🍵『何‥言ってるの』
🦈『だって』
過去のこさめは優しく笑った。
🦈『二人とも泣きそうだから』
その瞬間。
記憶の中のすちが本当に泣きそうな顔をした。
今まで見たことがない顔。
🍵『……嫌だ』
小さな声。
🍵『嫌だよ』
過去のこさめは何も言わない。
ただ笑う。
優しく。
寂しそうに。
そして。
巨大な未来へ手を伸ばした。
記憶が途切れた。
🦈「っ……!」
こさめが現実へ戻る。
息が苦しい。
胸が痛い。
目の奥が熱い。
なぜか泣きそうだった。
理由も分からないのに。
すると。
すちがすぐ隣にいた。
🍵「こさめちゃん」
優しい声。
いつもの声。
こさめは思わずその袖を掴んだ。
🦈「……すち」
🍵「うん」
🦈「泣いたの?」
部屋が静まり返る。
すちが少し驚いた顔をする。
🍵「なんでそう思うの?」
🦈「見たから」
震える声だった。
🦈「こさめが見た記憶の中で」
すちは何も言わなかった。
ただ少しだけ目を伏せる。
それだけで答えになっていた。
その時。
館内放送が再び響く。
今度はもっと大きな声で。
『封印庫崩壊』
『封印庫崩壊』
『人類の未来の一部が消失』
『未来の欠片が施設内へ流出しました』
全員が顔を上げる。
なつが叫ぶ。
🍍「何!?」
『職員は至急回収を開始してください』
『なお未来の欠片へ接触した者は――』
放送が一瞬途切れる。
嫌な予感。
そして。
続いた言葉に全員が凍りついた。
『未来の可能性に取り込まれる危険があります』
静寂。
こさめがぽつりと呟く。
🦈「未来に取り込まれるってなに?」
すると。
らんが真顔で答えた。
🌸「最悪の場合」
そして。
静かに続ける。
🌸「別人になる」
その瞬間。
未来管理室の外から誰かの悲鳴が聞こえた。
コメント
4件
るあ、天才すぎん??? 記憶返ってきたやん(꧞ 'ᢦ' ) 世界崩壊のピンチじゃね? やばぁい><
♡1000にしといたー!
わあ、第15話、すごく重くて切ない回でしたね……。未来の暴走と、過去のこさめたちの決断がリンクして、一気に物語の核心に迫ってきた感じがしました。特に「忘れて」って笑顔で言う過去のこさめと、それに泣きそうになるすちの対比が胸に刺さります。そして「別人になる」というらんの言葉で終わるラスト、続きが気になりすぎます! 藍翠 瑠蒼さんの繊細な心情描写、今回も素晴らしかったです🌷