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ループ0…死の起点

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空気が張りつめていた。迷路の奥は闇が濃く、息を吸うだけで胸が痛む。 セドリック・ディゴリーは汗ばむ掌を握り直しながら、隣に立つハリー・ポッターを横目に見た。彼は震えながらも、前を見据えている。


(大丈夫だ。ここまで来たんだ。どんな結果でも……誇れる。)


そう思った瞬間だった。


――あのポートキーに、触れた。


胸の奥がきゅっと縮むように引き絞られ、視界がねじれ、風が耳を裂いた。


着地した場所は、墓地だった。

嫌な匂い――土と冷たい霧の臭いが、肺の奥まで染み込んでくる。


「ハリー……?」


返事はなかった。代わりに聞こえたのは、乾いた笑い声。


「殺せ」


その一言が、やけに鮮明に耳に残った。


セドリックは反射的に振り返った。

そして――緑色の光が眼に映った。


走馬灯など流れない。

ただ、ほんの一秒だけ、思った。


(父さん、ごめん。僕……まだ、やりたいことが……)


胸を撃ち抜かれたような痛みが走り、世界が闇に沈む。

声も出なかった。

恐怖も、最後には感じられなかった。


――死んだのだ、と、どこか冷静な自分が告げた。



暗闇の底から引き戻されるように、セドリックは目を開けた。


まぶしい朝日。

見慣れたハッフルパフ寮の天井。


「……え?」


声が掠れた。


シーツは温かく、体も痛くない。

生きている。そんなはずはない。


胸に手を当てる。

確かに鼓動がある。

でも、ついさっきまで――自分は墓地で、あの緑色の光に飲まれて……。


「悪い夢、じゃ……ない」


夢ならいい。

でもあれは夢ではなかった。

死の感覚は、あまりに鮮明すぎた。


ぼんやりしていると、部屋の扉が勢いよく開いた。


「セドリック、起きてる? 今日、代表者の発表の日だぞ!」


同室のメイトが笑いながら入ってくる。


セドリックはその言葉に、ゆっくりと顔を上げた。


――代表者の発表?

それは……トライウィザード・トーナメントの代表が決まる日の、朝ではないか。


(……戻ってる? どうして?)


心臓が早鐘のように鳴り始めた。


間違いない。

自分は“死んだ”。

そして今――“トーナメントが始まる前”に戻っている。


「……なんでだよ」


思わずこぼれた声は震えていた。


助かって嬉しい、なんて感情はない。

ただ、理解できない恐怖と、胸の奥にわだかまる重さだけが残っていた。


そうしてそれは始まった。

セドリック・ディゴリーも気づかぬうちに…

死と再生のループの一周目が、、




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