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ふらふらと1人の青年が街を歩いていた
足取りはおぼつかず,目の下は隈だらけで今にも倒れそうだった
暫く歩いた時,限界で倒れてしまった
どうやら孤児院の前で倒れたらしい。子供達の悲鳴が聞こえる
最後に見たのはこちらに駆け寄る少女だった
次に目を開けると,知らない部屋が目に入った
『あ,目覚めました?』
タイミング良く,意識を失う前に見た少女が入って来た
『過労と栄養失調と寝不足です』
彼女は淡々と言った
よく見ればその手にはお盆に乗った土鍋があった
「それは…………」
僕がそう聞くと『お粥です』と答えた
『胃に優しいものを作ってきました
その様子だと碌に食べてないでしょう』
ベッドの隣にある小さな机にお盆を置いて土鍋の蓋を取った
ほかほかのお米に,ほぐされた鮭
まともに食べてなかったから,お腹が鳴った
『んふふ,おかわりもありますからね』
僕のお腹が鳴ったのを聞いて少女は笑い,部屋から出て行った
お盆に置いてあるスプーンを手に取って一口食べてみる
「うま…」
程よい塩梅に,柔らかいお米。そして口の中でさらにほぐれる鮭
あっという間に食べ終わってしまった
??「あ,食べ終わった?」
ひょこり,とさっきの少女に似ている青年が入って来た
きっと少女の兄なのだろう
「あの,このお粥…お金払います…」
??「いや,良いんじゃない?
結は善意で作ったんだし。別にそこまで気にしない方が良いと思うよ」
さっきの少女は結というらしい。なんとも縁起が良さそうな名前だ
「でも…」
『あ,食べ終わったんですね』
結さんが戻って来た
『おかわり…は要らなそうですね
私片付けてくるから灰にぃお見送りしてくれる?』
青年の名前は灰というらしい
結さんはそれだけ言うとさっさとお盆を持って行ってしまった
灰「歩ける?」
「は,はい」
灰さんは心配だ,と言う様に手を伸ばした
僕はその手を取ってベッドから降りる
そのまま外に連れて行ってくれた
灰「お兄さんはさ,今働いていて楽しいの?」
じ,と灰さんは僕の目を見て言った
「あはは…どうやろう…」
灰「ふーん…楽しくなくてそんなになるまで働いて倒れるくらいなら,さっさと辞めた方が自分の為だよ」
その言葉を聞いて妙にハッとした
目の前の青年は己を心配して言っているのだと
「ありがとな」
僕は灰さんに感謝を伝えて帰路についた
その数日後,僕は会社を辞めた
そして6年経った僕は今日,友人3人とラーメンを食べに行く
アイ「ホンマ楽しみやわ!」
学校サボったアイが言った。アイとは遊征経由で出会った友人だ
魁星「いやぁ学校サボってまでそこまでラーメン食べたいとは…」
ネス「あー,腹減ったぁ…」
遊征「めっちゃ楽しみ!」
ふと後ろを見てみるとあの日からずっと探していたあの子を見つけた
魁星「ん?あの子…なぁそこの嬢ちゃ〜ん」
おーい,と手を振りながら僕は彼女を呼んだ
『え,私?』
アイ「あれ,みゆゆ!?」
どうやらアイと友人らしい
僕は慌てて取り繕った
魁星「どっかで見た事あると思ったんよ〜」
ニパッ!と僕は笑いながら言った
遊征「アイの友達?なら一緒に食おうぜ!」
ナイス遊征!
『え,じゃあ……』
彼女は遠慮がちに僕達の元に来た
『あの,私黛結っていいます
貴方達のお名前って……』
6年,しかも一度会って少し話した程度だ。忘れていても仕方ないだろう
ならばあの日名乗れなかった名前を名乗ろう
あの日の借りを返させて
魁星「僕は魁星ていいます〜」
僕達はそれぞれ彼女に名乗る
『魁星さん…私達何処かで会ったことありません?』
彼女…結ちゃんは僕の目を見て言った
魁星「ん?どこやろな」
自力で思い出してな,結ちゃん