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春といえば、出会いと別れの季節である。

日本最高のウマ娘トレーニング機関である日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園も、その例に漏れない。今年も夢と希望に満ち溢れた新入生がやって来て、夢破れて、あるいはやり切った思いで引退したウマ娘が去っていく。

正門前には着慣れない制服に着られるようにして大荷物を運ぶウマ娘や、彼女たちの手伝いをするついでにチームへ勧誘しようとするウマ娘でごった返していた。

「でか……。パンフとか説明会で聞いたより広い……」

ぽつりと、癖のある鹿毛のウマ娘が呟く。錨のチャームがついた、赤と白のメンコに包まれた耳がぴこぴこと動く。

トレセン学園。レースを志す全てのウマ娘の憧れで、中央のレースへのスタートライン。当然競争率も半端なく、ここにいる新入生も日本全体で見ればほんの一握りの実力者だ。鹿毛のウマ娘も、その競争をかいくぐって入学してきた。

「スタートライン。入るだけが、アタシのゴールじゃない」

鹿毛のウマ娘が、自分に言い聞かせるように呟く。

「なるんだ。みんなが、アタシしか見えないようなウマ娘に」

握りしめた真新しい生徒手帳には、パンサラッサと名前が書かれていた。

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