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注意・これは二次創作です。腐向け、nmmn、hnnmなど、苦手な方は閲覧しないでください。
ほとんどターボーと森くんの会話です。ちょんまげ愛されな感じ。
トライ・アゲイン──その後
仕事との兼ね合いもあり、病室に来るのが三日ぶりになってしまった。
一昨日見舞いに行ったという高木からは元気そうだったとは聞いているし、特に病院から連絡もない。しかし、小山は足早に羽立の病室に向かっていた。
「ちょんまげ」
「あ、ターボー」
上半身を起こしたまま、羽立はにこりと笑う。手には暇だろうからと渡しておいた漫画雑誌、机にはスマホと……
「花?」
花瓶にいけられた花があった。
「なんだ、キングが持ってきたのか?」
奥さんにでも持たされたのだろうか? そう思って訊いてみると、羽立は口元を緩ませた。
「違うよ。ね、ターボーは森くんの事、覚えてる?」
忘れるはずはない。『あの時』、羽立は森に会いに行って殺されたのだから。
「これ、まさか森が?」
小山の言葉に、羽立はさらに笑みを深めた。
「やっぱり、ターボーは森くんの事覚えてると思ったよ。そう、この花はお見舞いに森くんが持ってきてくれたんだ」
シンプルな花だが、あるだけで病室も華やかに見える。気分も変わってくるだろうな、と小山は顎に手をやる。しかし。
「もうすぐ退院なのに、持って帰るの大変じゃないか?」
現実的な問題を告げると、羽立は「ちゃんと持って帰るよ」と答える。そして、時計に目をやった。
「……森くんさ、あの掲示板が忘れられてたの、自分も忘れられているのが寂しかったと思うんだ。僕もみんなの事言えないけど、ちょっとだけ思い出すのが早かっただけだし。だから、ターボーがちゃんと森くんの事覚えていてくれて、本当に良かった」
「あー、うん」
正直、小山もあの『一度目』がなければ忘れたままだったが。素直な感謝に少しだけ後ろめたくなり、小山は花に目をやる。
「だから、ゆっくり話してほしいなって」
「ん?」
誰と? と訊く前に、病室の扉がノックされ開いた。
「ちょんまげ、具合……あ……」
「……森」
扉を開いたのは森で、目を瞬かせて小山を、そして羽立を見る。
「ほら、森くん。ターボーはちゃんと森くんの事覚えてたんだよ!」
羽立の嬉しそうな声に頷きはするものの、森は小山を懐疑の目で見ている。何か話すべきか、そう考えていると、また扉がノックされた。
「羽立さーん、リハビリの時間ですよー」
「はーい」
入ってきたのはリハビリスタッフで、羽立は近くの杖を使ってひょこひょこと歩いて行く。
「じゃあ、ゆっくり話してて。森くん、今日は休みなんでしょ? ターボーも時間あるだろうし。僕、リハビリしてくるから」
すーっと扉が閉まり、二人が残される。
「……」
「……よ、久しぶり」
小山の声掛けに、森がぽつりと呟く。
「久しぶり。えっと、ターボー、でいいのかな」
「何だよ、改まって。いいに決まってるだろ」
その言葉に、森が少しだけ笑顔をみせる。とりあえずファーストコンタクトは成功か、と小山が胸を撫で下ろしていると。
「ターボーって、ちょんまげの身元保証人なんだって?」
小学校での思い出もすっ飛ばして、森はそう言った。
「え、ああ、まあ。アイツ、去年お袋さん亡くして身寄りがなくてさ」
「へぇ、そうなんだ」
今思えば、小山は『一回目』でほとんど森とは関わっていない。あのDVDをイマクニで見た時くらいで、その時もさっさと立ち去ってしまったくらいだ。みんなの夢で『六人とずっと友達でいたい』と言っていたわりに今の彼にはそんなつもりはなさそうだと、小山は思う。
「でもさ、身元保証人なんて大変じゃない?」
森はそう言いながら、窺うように小山を見る。
「まあ書類とか面倒だけど、仕事ほどじゃないさ」
軽くそう返せば、森は首を振る。
「いや、ターボーは今はアメリカが拠点なんだろう? ずっと日本にいるわけじゃないんだし、これから大変になるんじゃないかと思ってさ」
森の心配ももっともだが、小山は軽く笑う。
「大丈夫だって。ちょんまげはうちの会社に就職する事は決まってるし」
森は首を傾げていたが、そのまま続ける。
「え、だってちょんまげは外国に行くなんて言ってなかったけど? 退院したら久しぶりに遊ぼうって約束したし」
そう言えば、アメリカの本社への就職だとは言ってない気がする。しかし、小山がアメリカを拠点としている事は知っているはずだし、詳しく言わなくても分かるだろ、なんて思っていたが……。
「だからさ、ターボーには大変だろうから、僕が代わってもいいかなってさ。僕は結婚もしてないし、比較的身軽だから」
「……」
本来ならばありがたい申し出なのだろうが、小山はしっくり来ない。羽立には自分の側にいてほしい、それは本心だ。ただ、何故そう思うのかはいまいち自分で説明できない。
「いや、ちょんまげにはちゃんと言うし。アイツならついて来てくれるだろ」
妙な苛立ちを感じながら、小山は森に言う。
「気軽に言うけど、アメリカで暮らすなんて環境の変化も激しいし、ちょんまげは意外と繊細だから心配なんだよ。ストレス溜めそうで」
森も引かない。眼鏡の奥の眼が、ねっとりと光っている。
「あっちでは俺がフォローするし、心配ねえよ。大体、何かあった時に教師の安月給じゃお前の方が大変だろ? 心配するなよ」
「金で解決できる事ばかりじゃないし、向こうは銃社会で危ない場所も多いって聞くし、僕はちょんまげがアメリカに行くのは反対だな」
「いやいや、いきなりそんな事言ってよぉ……大体、お前今までちょんまげに会ってもなかったのに、どうしてそんなに口挟んでくんだよ」
「ターボーだって、あの事件があるまでちょんまげと接触無かったんじゃないの? 僕の事だって覚えてたって言ってたけど、本当かな?」
「俺はアメリカにいたから接触してるわけないだろ! 森はこっちに戻ってたのにちょんまげに会いには行かなかったわけだし、どっちが薄情なのかねぇ」
「それはっ、色々忙しかっただけで」
「あれ? 身軽だったんじゃねえの?」
徐々にヒートアップしている二人だが、止めてくれる第三者もなし。
「ちょんまげは俺が面倒見るから口出してくんな!」
「僕がそばにいるから、ターボーこそ一人でアメリカに帰りなよ!」
「あの……リハビリ、もう一周していいですか?」
静かに扉を開けた羽立は、リハビリスタッフにそう言いながらそっと扉を閉めた。