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『ここら辺からが今日の見回りポイントだ。』
そこは住宅街で、お店もたくさんある場所だった。
もちろん人もたくさんいる。
町を歩きながら見て回る。
『アカガネ!昔は指名手配犯を倒しまくってたけどよ、悪い奴がどこにいるのか分かるのか?』
急に、如月さんが訊いてくる。
『いえ、分かりません。』
『そっか。』
話が終わる。
『アカガネ!記憶喪失ってどんな感じだ?』
急にまた、如月さんが訊いてくる。
『どう、って説明するのはちょっと難しいですね。」
『そっか。』
話が終わる。
『アカガネ!じょーちゃんとはどこで出会ったんだ?』
きゅーににまた、キサラギさんがきいてくる。
『小学校らしいです。』
『そっか。』
はなしがおわる。
『アカガネ!じょーちゃんと付き…』
『如月さん、今は仕事中ですよ。』
東雲さんに注意されている。
危なかった、
如月さんから質問攻めされ続けるところだった。
ふと、鷹也隊長を見た。
鷹也隊長は1つの方向を見ていた。
視線の先には、小さなスーパーがある。
そして、入り口近くに人の姿もある。
…揉めているようだ。
『トラブルを発見した』
鷹也隊長はこちらを見て言う。
そちらへ向かう。
『それはアタシのものよ!返しなさい!』
『いいえ、それは私のものです。』
2人の女性が揉めている。
後ろで困った顔をしている店員の姿も。
『申し訳ありません、私たちは剣士をさせていただきます、鷹也です。何があったのかを聞かせていただけませんか?』
鷹也隊長が丁寧に伝える。
1人のマダムらしき女性が話す。
『この花束を、アタシが先に取ろうとしたのに、こちらの人が横取りしようとしてきたんです!ちょっと言ってやってくださいよ!』
しかし、もう1人の若い女性が、
『いいえ、こちらは私が先に手に取っていたんです。でも、横取りされてしまって、』
『剣士さんに向かってまだ嘘を言うなんて、アンタ最低ね!』
もう1人の女性が被せ気味に言ってきた。
なんとなくどちらか悪いのか、分かる。
『私が、先に手に取ったんです。』
多分悪くないであろう若い女性が助けを求めるように言った。
『アタシは忙しいんで、早く認めてちょうだい。欲しいなら、他の場所で買えばいいじゃない!』
マダムの怒りは収まらないみたいだ。
『まずは、あちらの監視カメラを確認してみましょう。
鷹也隊長は監視カメラを指差し、店員さんに向けて言った。
『い、今店長が向かっていますので…』
すると、
『申し訳ありません、店長の佐藤です。揉めごとが起きていると聞きまして、』
店長がきた。
『あちらの監視カメラの映像を確認させていただいてもよろしいでしょうか?』
鷹也隊長が丁寧に伝える。
『はい、こちらです。』
店長について行き、事務所に着く。
『こちらで確認しましょう。』
そこには1つ、パソコンがあった。
『ありえないわ!ここまでされても認めないなんて!』
マダムが言う。
若い女性は何も言わなかった。
皆がパソコンに映る監視カメラの映像を見る。
そこには、
マダムが、花束の近くに立って色々見ている。
そして、
マダムが1つの花束に手を伸ばそうとしていた。
そして、映像の端から若い女性が早足で、マダムの方に向かって…
マダムが持とうとしていた花束を横取りした。
そして、マダムが若い女性の腕を掴むところが映されていた。
まさか、マダムが取られた側だったとは…
若い女性は俯いている。
『本当にごめんなさい。先月亡くなった旦那のために、どうしてもその花束が欲しかったんです。』
若い女性が認めた。
そして、横取りしようとした理由も伝えた。
本当かはわからないけど、それは悲しいものだった。
『そうでしたか。』
鷹也隊長が言う。
『理由がなんであれ、人が取ろうとしたものを横から奪うことはいけないことです。こちらの商品はこちらの方が優先されます。』
店長がそう言ってマダムを見る。
『最初からそう言ってたでしょう?こんなことに巻き込まれて、時間まで取られて何かしら責任をとってもらわないとね!』
マダムは若い女性に向けて怒る。
『でも、このままじゃこの女性が可哀想です。
』
若い店員が言う。
その気持ちはわかる、だけどそれだとマダムが悪いということになる。
どうすればいい?
売り場に同じ花束はもうなく、最後の1束だった。
『あ、あの。これと同じ花束はもうないのでしょうか?』
訊いてみる。
『田中、バックヤードを確認してきてくれ。』
店長が若い店員に言う。
『は、はい!分かりました。』
若い店員はバックヤードに向かって行った。
『今、確認してもらっている。だが、この花束はそちらの方のものです。そちらの方が必要ないと返さなければ、買うことができます。』
『もちろんアタシは買うわ!アタシだって欲しいもの。』
マダムは買うつもりだった。
『そちらの女性、他にも違う種類ではありますが、花束がまだあります。そちらではダメなのでしょうか?』
東雲さんが若い女性に訊く。
『どうしてもこれがいいんです。旦那は赤いバラが好きで、これしかなかったんです。近くの花屋でも売り切れてて、やっと見つけられて…』
若い女性はそう言った後黙り込んでしまった。
『今はバラが咲く時期ではないので元々少ないのだろう。』
鷹也隊長が言う。
『甘ちゃん…』
琥珀さんは悲しそうだった。
『今確認してきましたが、在庫はありませんでした…』
若い店員が戻ってきた。
状態は悪くなる一方。
どうすれば…
『1つの花束に赤いバラが2つあんじゃん?それを2人でわけられねーのか?』
如月さんが言う。
『一つの商品を2つに分けることはできません。』
店長がそう言った。
ちょっとイライラしているように見える。
ちょっと前から感じていた。
如月さんの言い方が気に入らなかったって訳では無さそうだ。
なら…
『チッ!人狼どもが…』
店長がそう言ったように聞こえた。
それはマダムも同じだ。
『もういいでしょ!アタシが先に手に取ったんだから、これはアタシのものよ!』
マダムそう言って一瞬、こちらを睨んだ気がした。
『では、これで終わりです。』
店長がマダムを連れて、事務所を出る。
『・・・』
残された皆は黙り込んでいる。
何を言えばいいのか、どうすれば良いのかがわからない。
『赤いバラが欲しいのでしたよね?』
と、鷹也隊長が言った。
『少々お待ちください。』
と言って、何かを取り出す。
『こちら第1隊。そちらの方に赤いバラの入った花束や切り花が売られている所はないか、確認して欲しい。』
無線だ。
鷹也隊長が無線で他の隊に伝えたようだ。
『こちら第2隊。近くに花屋があるので、確認してみます。』
と、返ってきた。
『こちら第3隊、こちらでも探してみます。』
次々に返ってくる。
しばらくして、
『こちら第2隊。赤いバラの切り花を5本発見しました。』
と、返ってくる。
『2本くらいでよろしいでしょうか?』
鷹也隊長が若い女性に訊く。
若い女性は頷いた。
『こちら第1隊。赤いバラを2本入れた花束を作ってもらって欲しい。』
『ラジャ!』
と返ってくる。
さっきの声とは違う。
若い女性は少し笑顔になっていた。
そして、
『ミッションコンプリート!』
と、無線から聞こえた。
購入に成功したみたいだ。
『それでは、桜の道公園で会おう。』
『了解です!』
それで終わった。
そして、
『こちらで、赤いバラを購入した。あとから引き渡そう。』
鷹也隊長が言った。
『本当に、ありがとうございます。』
若い女性は深く、頭を下げた。
その後、若い女性はマダムにも深く頭を下げた。
それから少し歩き、1つの公園に着く。
そこは、桜の木がたくさんあった。
まだ桜は咲いていないが、もう少しで咲き始めるだろう。
道の先に、花束を持った人たちがいた。
『鷹也隊長、こちらです!』
と、花束を引き渡した。
色々入っていた。
『ありがとう、助かった。』
鷹也隊長がそう言って花束を持った後、若い女性に渡す。
『これで良いだろうか?』
『はい!ありがとうございます!』
若い女性は、涙を流しながらも笑顔で答えた。
『ということで、見回りを続けてきます!』
と、第2隊の人たちが背を向けて歩いていく。
『あ、お金は…』
『お代は結構ですよ。』
鷹也隊長はそう言った。
『本当にありがとうございました。』
若い女性が深く頭を下げた。
若い女性と別れ、僕たちも見回りを続ける。
『すげーよな!こんなことするなんてよぉ!』
如月さんが腕をポイントの肩に乗せて言った。
『そうですね。驚きました、』
僕もすごいと思った。
『いや、無線があったからできたことだ。何もすごいことなんてないよ。』
鷹也隊長がそう言った。
『いえ、鷹也隊長がしたことはすごいことですよ。』
東雲さんもそう言って鷹也隊長を褒めた。
その後は、何ごともなく終わった。
だが、戻ると。
『………っ』
1人、大怪我をしていた。
今は緊急で治療を受けている。
『何があったんだ?』
鷹也隊長が訊いた。
ナイフを持った複数の人に、襲われてしまって、』
その人も怪我をしていた。
『2人は捕らえました。ですが…3人に逃げられました、』
剣士、それはやはり危険な仕事だった。
『鷹也隊長、鎧や盾になりそうなものはないのですか?』
僕も皆も、盾になるものはなかった。
『昔は鎧を着ていたが、今は…』
鷹也隊長が言葉を詰まらせた。
言いにくいことでもあるのだろうか。
『昔、剣士として共に島を守ってきた仲間数人が任務中に暴れ出し、数人が犠牲になった。その時、鎧のせいで、なかなか止められず、最終的に…前隊長が、暴れている仲間全員の命を終わらせた。』
!
そんなことがあったのか…
『その後、前隊長は捕まり、今も刑務所から出られずにいる。』
『・・・』
それが、原因なのか。
『さて、今日はこれで終わりだ。あとはこちらで対処する。銅さん、明日は休みで、明後日来てもらおう。』
鷹也隊長が言った。
僕にできることはない。
いても邪魔なだけだろう。
明日も休みか。
そう思いながら、外に出る。
『なぁ!アカガネ!』
如月さんが話しかけてくる。
『今日は、どうだったよ!』
『んー、ちょっと予想していたのとは違ったというか、』
『ま、今日のはそうだな!でも、知ってるか?この島には本当の警察はいねーんだ!剣士ってのが、警察の進化版みてーなもんだからな!だから俺たちが警察みてーなことをしなきゃいけねーんだよ。』
そうだったのか!
『まぁ、要は俺たちが警察ってことさ、』
如月さんは僕の頭をポンポン叩く。
『なんだ〜しけたツラしてよぉ〜、怖くなっちまったかぁ〜?』
如月さんがイタズラっぽく笑う。
『いや、大丈夫。怖くないですよ。』
僕はまっすぐ、如月さんの目を見て言った。
『へへ!一匹狼なんだからそうこなくっちゃなぁ!』
相変わらず元気そうだ。
『んでよぉ、コハル?と、付き合ってるのか?
と、僕の後ろに隠れている琥珀さんを見て言う。
琥珀さんのことなんだろう。
?
僕と琥珀さんは付き合っているのか?
わからない。
『わからないな。琥珀さん、僕たちって付き合っているのかな?』
琥珀さんに訊いてみる。
『付き合おって言ったことはないけど、ずっと一緒にいる感じかな?』
それは、どっちなんだろう?
『言ってなくても、ずっと一緒にいるなら付き合ってんのと同じじゃね?てか、一緒に住んでんの?』
『今は…一緒に住んでますね、』
『それで付き合ってないとかオモロ!』
如月さんが笑う。
『あはは…』
僕は苦笑いである。
と、如月さんが近づく。
『なぁ、今日行った公園覚えてるか?あそこの桜がめっちゃ綺麗なんだよ。近いうちに咲くだろうから連れてってやれよ、』
如月さんが僕の耳元で言った。
『で、近くに小さいけど、水族館もあるし、隣にはオシャレなカフェもある。そんで付き合っちまえよ、』
如月さんが続けて言う。
琥珀さんは不思議そうな顔をしていた。
琥珀さんには聞こえていないようだ。
『んじゃ!また明後日な!』
如月さんが手を振り、どこかへ行く。