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⚠️注意⚠️
今作品はAIからお題を貰い、所々細かい表現のアドバイスを反映して書いた作品になります。
政治的意図は全くございません。
これを見ている方々はヴェネツィア共和国とジェノヴァ共和国という国々を知っているだろうか。
水の都と呼ばれるヴェネツィア。
そして、香草と港のジェノヴァ。
そういったイメージが大きいであろう。
ただそのイメージもイタリアの1つの地方に過ぎない。
かつて、彼らは国だった。
イタリアが統一する前、イタリアは幾つもの国々に分かれ、誕生と崩壊を繰り返してきた。
イタリア半島はヨーロッパ諸国からの格好の的で、支配されては他の国に支配され、振り回されてばかり。
だがそんな中でも、産業で名を轟かせた二つの国が居た。
片方は歴史上、世界最長となった共和国である。
そして、ここはヴェネツィア。
この話は、こんなにも輝かしい国が終わりを祝った、たった一夜の灯りの記録である。
水面にランタンの赤い光が反射する。
ゆらゆらと揺れる水面には夜空の紺色と、ランタンに照らされた美しい街が見事に映し出され、ゴンドラが通る度にその鏡は濁されてまた形を成す。
地面には色とりどりの砂糖菓子が転がっている。
水面に揺れる音の向こうで、クラシックのきらびやかな音色と人々の足音が聞こえてくる。
ヒールの軽やかな音と、ブーツの重厚な音。
騒がしいが、どこか楽しい。
そんな音がヴェネツィアの街を包み込む。
すれ違う人々は皆仮面を付け、その柄は千差万別。
きらきらとした装飾や、軽やかな羽をつけている者もいる。
昼はゴンドラのパレードで華やかで賑やかに。
夜はまたどこか違った印象で、大人に踊り明かす。
その中、壁1つ隔たれたような足音がした。
その足音はパーティー会場の出口へと向かう。
1つ1つ、踏みしめながら。
出口へ通じる階段に静かに響きながらも、その足取りは止めることを知らない。
そして外へ出ると同時に、その足音は空気に流され音をなくした。
外でも騒がしいこのカーニバル会場を通り抜け、暗い路地へと向かう。
路地にはポツポツと、小さな街頭が外壁に吊られている。
街頭とは言っても、ロウソクを小さな箱に入れて、人々が手動で点けて周るものだ。
そのため、明るさは然程無く、顔も仮面も良く見えない。
抜けた先は、月がよく見える港。
あまり船の止まらない知る人ぞ知る場所だ。
ヴェネツィアはここが好きだった。
昔から事あるごとに、この夜の港へ向かい、 落ち着くさざ波の音に耳を澄ませながら、現実と心を乖離させる。
そんな事を何百年と繰り返した。
今日も今日とて、この場所に赴く。
ただ、今日は違う。
最期を、このヴェネツィアの海と港と、添い遂げたかった。
あのフランス軍に、やられた。
ルドヴィーコが退位した、それはこの国の崩壊を意味する。
彼が壇上から降りる光景は、なんど夜を明かしても、なんどこの海に訪れようと、忘れることができなかった。
いくら手を尽くしても切り開ける未来が見えず、負けを認めるしかなかった。この祭りは、最後くらいはというせめてもの抵抗である。
波1つ立っていない海を見つめる。
磯の匂いが鼻を通り抜ける。
潮風で仮面の羽根が揺れ、マントがはためいた。
この匂いも、もう感じることができなくなると思うと、心の底からこみ上げてくるものがある。
それだけ、想い入れのある故郷だ。
コツ コツ
石 畳の地面を歩く音が背後からした。
こんな場所に誰が、と思いつつ体をひねる。
「なに黄昏てんだ。」
その姿は見覚えのある野郎だった。
仮面をつけていても、分かる。
「ジェノヴァ…でしょう?」
「正解。」
その憎ったらしい顔はいつまで経っても変わらない。
大きな口に、時折見える八重歯。
目は確か____忘れてしまった。
顔の十字と同じ色のカーマイン色の仮面。
金色のストーンが散りばめられ、目だけを覆 っている。
「…茶化しに来たんですか?」
「うーん半分正解、半分間違い。」
その高い身長で大きく身振り手振りを繰り返す。
そのたびに厚いマントが揺れ、白く照り輝く。
その反射で、月の光の尊さを知った。
「主催者様はここで何を?」
「…分かっているのにわざと聞くなど、性格が悪い。」
「信頼性皆無すぎるな俺。」
彼は絶対に知っている。
どうしてカーニバルを開いたのか、何故ここにいるのか。
鎮めようとしていた心の内をぐちゃぐちゃにされて、気分が悪い。
あからさまに目をそらし、ジェノヴァに悟らせようとした。
が、彼はそれを物ともせず何食わぬ顔で隣に座った。
肝が据わっているのか、はたまた馬鹿か。
そして彼が座ると同時に、異国の香りがふわりと広がる。
同じイタリア半島の中だが、地域の違いを感じられる。
つばの大きい羽付き帽子を深く被り、ヴェネツィアとは対照的に男らしく膝を組んだ。
「…なぜ私がここにいることをご存じで?」
それが真っ先に思いついた疑問だ。
人混みの中を通り抜けて、誰にも悟られないようにして来たというのに。
「え?普通に着いてきた。」
当たり前のことだろ?と言わんばかりの顔でジェノヴァは答える。
これに関してはただ単に恐怖を覚えた。
な癖にとぼけた顔をする彼には心底呆れる。
プライベートの一つくらいあってもいいだろうに。
「……それで…、…まぁ…、お互いよくやったんじゃないか?」
月を眺めながらジェノヴァがそう呟く。
彼も、同じフランスの敗北者であった。
「……傷の舐め合いですか?」
「そう噛み付くなって。…今くらい、いいだろ?」
その言葉が心に沈む。
やけに明るいその声色は無理に明るくしているようにも聞こえた。
それで言うと、私も同じなのだろうか。
沈黙の多いこのスローテンポな空間が、今は心地よく感じられる。
これから死が待ち受けているという感覚は遠くへと遠ざかって行く。
だが、忘れることは無い。
死は怖い。
これには、プライドもクソもない。
千年と生き、傷ができることには慣れた。
でもずっと、死にはしなかった。
だからこそ、この世から居なくなるという感覚が、常人よりも麻痺していると言えよう。
「…ジェノヴァなんかを招待した記憶はないのですが……。」
「俺も知らねぇよ。
お偉いさんに行けって言われて、来てみりゃ、アンタがのこのこと路地に行くもんだからさ。」
「…いやまぁ…でも…お前が最後の最後にカーニバルを開くとはなぁ。」
「…そうやすやすと負けを認めるわけには行かないですから。」
ヴェネツィアはどこか遠くをずっと見つめていた。
波や月を見ているわけでも無い。
どこか、諦めの境地に立たされているかのような雰囲気だ。
段々と冷えてくる夜風が頬を優しく撫でる。
負けたのが悔しい 。
今はその一点に尽きる。
何百年も、努力を重ねてきたというのに、こうも簡単に崩されてしまう現実が受け止めきれなかった。
改めて思い知らされた現実を考えていると、ふと一線なにかが頬を伝った。
その感覚に驚き、その箇所へ手を触れる。
涙だ。
それは露出している口元へと流れ、海と同じ味がした。
悲しくなんてないのに、どうして。
理由もわからないまま、恥ずかしさに戸惑っていると、
「…悔しいよな。」
そう右隣のジェノヴァが声を発した。
同情されるとは自分も弱くなったと思うが、その言葉にはどうも、反発できなかった。
「お前は俺より300年も多く生きてるから、同じ立場で…物事を測ることは出来ないだろうが……」
「崩壊するってのは…案外悪くはないと思う。」
は?と言いたくなった。
その言葉は喉のすぐそこまで来ていたが、必死に飲み込んだ。
混乱する自分をよそ目にジェノヴァは清々しい顔で語る。
「そりゃあ、続くことならいつまでも続いてほしいのが本望だ。」
「でも、崩壊しても、俺らの生きた証は必ず歴史に残る。」
「こうやって崩壊を繰り返すことで世界は進み、俺らがその養分となるんだ。」
「後世に期待するのも、悪かない。」
そう淡々と答えるジェノヴァの言葉は、そう簡単にヴェネツィアの耳に入ることは無く、 ただ、ぼーっと彼を見つめるだけ。
流れ出る涙は止まることなく、海に同化していく。
そこで、心の中の何かが切れた。
「…どうしてそんな事言えるんですか…?」
「そんな確信どこにあるんですか!」
「なんでそんな落ち着いてられるんですか!!」
涙で歪み、ぐずぐすになった顔で叫び続けた。
上下する肩を抑える理性も無く、恐怖と混乱、怒りに身を任せ、なんと愚かな事か。
それでも、心の内を曝け出したい欲望は理性を上回り続けた。
しかし、ジェノヴァはその圧を物ともせず、ただ静かにヴェネツィアの訴えを聞き終えた末に、こう語った。
「じゃあ一つ、話をしてやろう。」
「ローマ、という国は知ってるか?」
「…………知っていない訳がないでしょう…。」
言わずと知れた超大国。
ローマを知らぬ人など、居ないに等しいと思っているくらいだ。
「流石に知ってるな?
じゃあどうして知っている?」
次々と出される問いに心臓が締め付けられる。
だが、自分に向き合ってくれている事実に少し安心する。
その意図が分からずとも。
「小さい頃から屋敷でお話を聞いていました…。
本も沢山……。」
目元の涙が乾き、引き攣った感覚がする。
まだ建国して間もなかった頃、世話係の人間が読み聞かせをしてくれていた。
今思えば、子供に聞かせるような内容ではない。
だが、国として最低限の歴史や国際関係は幼い時に叩き込まなければならなかった。
そのため、部屋には沢山の歴史書が並び、それを毎日何時間と読む。
それが日常と化していた。
沈黙の時が流れる。
走馬灯のように、過去の記憶が駆け巡る。
暖かかった暖炉の前。
お偉いさんとの食事会の時の緊張感。
水にずぶ濡れになった戦場の記憶。
『戦争の為、ローマの歴史書を読み漁った時のこと。』
そこで気付いた。
彼の言っていた意味が、 ようやく理解できた。
頭の中をいっぱいにしていた考えが、すーっと小さくなっていく。
衝撃で足が震え、動けない。
「…その顔じゃあ、分かったようだな。」
目を細め、ニヤけた笑みを浮かべる。
そして、ジェノヴァはこちらに向けていた顔を、また海の方角へ向ける。
「頭の良いお前にしちゃあ、時間がかかったが、…まぁパニックだったんだろ?
分かればそれでいい。」
その顔は、戦場で対峙した時からは考えもつかないほど、優しく柔らかい顔をしていた。
頬にある1つの傷跡が、彼の強さの全てだと思っていた。
だが、本当の強さは他にあるらしい。
「…でも………私は………、
ローマのような国じゃない……。」
もうそこで納得していればよかったのに。
そう頭では理解していたくせに、口からは否定の言葉が出続ける。
弱い、弱すぎる。
こんな事実受け入れたくない。
脳から独立して動く口に、自己嫌悪が止まらなかった。
「…そうかぁ。
…………俺は強い、それは自覚してる。」
「は?」
「その通りさ。
海の覇者、軍の指揮だってしてたんだ。」
突拍子もない事に唖然とする。
堂々とした端麗な顔立ちが月明かりに照らされる。
まるでスポットライトのようだった。
「お前はそんな俺とやりあった。
お前が弱けりゃ、俺も弱いってことになる。
そんな訳ないだろ?」
「…そういうことだ。」
あぁ、彼は大人だ。
自分の方が300年長く生きているのに、彼の背中が大きすぎる。
私が小さいからなのかも知れないが。
煌々とした月明かりと、海からの反射光が彼を照らし出す。
「それに、俺が崩壊してもいいって言ったのにはもう一つ理由がある。」
「これに関しては、もう俺の主観でしかないが、
国という重荷が外れる、
それだけで俺は万々歳だ!」
ニカッと笑う彼の笑顔は、夜だというのに太陽のような明るさが見えた。
「国ってのは辛いもんでよぉ、俺の国は割と荒れてた方で、そのたびに国という立場にいることを後悔してたよ。」
「だからようやく自分の好きなように過ごせるって思うと笑いが止まんねぇんだ。」
彼ほど正直な国は過去に居ただろうか。
そう思えるくらい、彼は明るい。
その彼の主張に、思わず下がりっぱなしだった口角がふっと上がる。
「あ!笑った!!!」
それを宝物を見つけたかのように指さす。
それに釣られて、また一回、二回と笑う。
カーニバル会場よりも、断然楽しい。
過去のライバルに何を思うか、とも思ったが今はどうだって良い。
耳に響いていた心臓の音も、段々と聞こえなくなっていく。
代わりに聴こえるのは、波がさざめく音、カーニバルの歓声、自分の笑い声。
今は、平和で良いのかもしれない。
「…貴方の考え方は素晴らしいです。
…でも私には国としての誇りがある。
そう気づかせてくれたのは貴方ですから。」
一通り笑い終えた後、ヴェネツィアはこう言った。
緩くなった口元が、まだ笑みの残り香を纏っている。
目元は見えないが、この和やかな空気が、彼らの表情を物語っている。
「……そっか。
良かった、そう思ってくれて。」
「じゃあ、今度お互い、無事に地獄へ辿り着けたら、ダンスをしよう。」
「俺は政治だとか政略だとか考えずに楽しめることを、お前は生前の楽しみを忘れないようにすることを、大事にしようじゃないか。」
彼らしい提案だ。
彼とは何度か政略のパーティーで踊った事がある。
その時は緊張でまともに踊れやしなかったが、今なら踊れる気がする。
「勝手に地獄行きを決めないでもらえます?」
「すまんすまん 笑」
さらっと彼は流したが、私がダンスが好きなことを彼は覚えてくれていた。
確かに、彼とは戦争をして、恨みあった。
憎しみも、そりゃある。
だけど、お互い同じ立場になると、親近感も湧くものだ。
今は、どうだって良い。
「…まぁ良いですよ。
一緒に悪魔の前で踊ってやりましょう。」
「やけにノリ気だな。」
そうジェノヴァは言うと、自身の目元に手を伸ばした。
触れたのは、カーマイン色の仮面。
もう片方の手で後ろの紐を解き、仮面を外す。
___あぁそうだ。
そういえば、こんな目をしていた。
「俺はもう国じゃねぇ。
だから思う存分、このカーニバルを楽しませて貰うよ。」
下瞼を引き上げ、満面の笑みを浮かべる彼は最後の最期まで、私を照らしてくれた。
子供らしくも、大人びた彼の顔立ちは、誰が見ても美形と言わざるを得ない顔だ。
「まだまだ、カーニバルは続きますよ。
頑張って下さいね。」
「おうよ。」
そう言うと、ジェノヴァはヴェネツィアに背を向け、路地へ繋がる道に向かっていった。
いつの間にか、海岸線が橙色に染まり始めていた。
聴こえていた賑やかな声も、少し小さくなる。
街灯のロウソクは燃え尽き、火を消している。
そして、1人残る国の顔を、朝日が黄金色に染める。
ヴェネツィアの街は、朝を迎えようとしていた。
それでも、ヴェネツィア共和国は、仮面を外さない。
何故なら彼は国だから。
誇りある、1000年続いた世界唯一の共和国。
彼が気付かせてくれた、自身の誇りを胸に、朝日を浴びる。
自分がこの世から居なくなっても、このカーニバルは進み続ける。
私が天に昇るそのギリギリまで、このカーニバルを楽しむことを誓おう。
そう言い聞かせ、ヴェネツィアは影の落ちる街へと歩き出した。
fin
fine
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