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ホントのキモチ
明日はバレンタイン!
女の子はどきどき、男の子はソワソワする超ハッピーな日!…なんだけど私、高野凛はそれほど好きではない。
理由は簡単。好きな人はいないし、友チョコを渡す相手もいない。高校生になって父親にチョコとか恥ずかしすぎる。
要するに、あげないし、もらわない。…ある例外を除いては。
「高野、おはよー」
あ…その例外がやってきた。
私の前の席に座ったこいつは幼馴染の七瀬陸。いわゆる「モテる顔」で毎年たくさんのチョコをもらっている。私はいつも、その「おこぼれ」をもらう。
「好きな子からはもらったことない」らしく、毎年10個くらい女の子からもらううちのいくつかを私はもらう。
それを食べているといつも思う。こんなに気持ちを込めてチョコをつくる相手が…私にはいないのだと。
「…高野っ、どうした?」
「あ、ごめん…」
「謝んなくて大丈夫だって」
「うん…」
くるっと前を向いた陸を見ながら思った。本当に陸って優しい。だからみんなに人気なんだろうな。それに比べて私は…
昼休み。
いつも私は中庭のベンチに座って1人でお弁当を食べる。すると、近くにいた超モテ女子、椎名花梨ちゃん達の話が聞こえてきた。
「花梨ちゃんって、誰かにチョコ渡す?」
「実は…七瀬君に渡そうと」
「マジで?花梨ならいけるっしょ!」
胸がキリキリと痛む。花梨ちゃんが陸に告白するから?なんなの、この気持ち…
放課後。
近所の商店街。目線の先にはチョコレートのお店。
気づいたんだ、この気持ち。私、あいつのこと好きなんだ。だからあんなに胸が痛んだんだ。無理だってわかってる。でも、この気持ち伝えたい。私は店の中に足を踏み入れた。
いよいよ、今日。バレンタイン当日。
放課後、陸と一緒に帰る時に渡そうと思ってる。まあ…失敗するだろうけど。
「高野!おはよ」
「りっ、陸!おはよっ」
「どした?顔赤いぞ、熱あるのか?」
「べ、別に大丈夫だから!」
この気持ちに気づいてから陸と会うと緊張しちゃう。ホント、バカみたい。
そして、放課後。
陸と一緒に帰ったものの、いまだにチョコは渡せない。
やらなくちゃ、私。勇気出せ。
「陸っ!」
私はカバンからチョコを取り出し、その言葉を呟いた。
陸はそっと微笑んだ。
「俺もだよ…昔から、ずっと。ごめんな、言い出せなくて」
そう言うと私をぎゅっと抱きしめた。
2人の心に、暖かいものが宿る