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第4章:科学が暴く嘘
「そんなの妄想だ!」拓海が激昂して机を叩いた。「証拠がないなら、ただの作り話だろ!」「いいえ、証拠は残っています。水は蒸発しましたが、あなたが使った『水』そのものが、あなたのアリバイを崩す決定打となりました」神崎は1枚の分析レポートをテーブルに置いた。「温室の床の隅、わずかに蒸発しきれずに残っていた水たまりの成分を、甲斐さんに頼んで大急ぎで分析してもらいました。その結果、そこから検出されたのは、この地域の水道水でも、温室の散水用の地下水でもありませんでした」神崎は拓海を真っ直ぐに見据えた。「それは、極めて硬度の高い、特定の海外ブランドの『高級ミネラルウォーター』の成分でした。……拓海さん、あなたのオフィスの冷蔵庫に、大量に常備されているものと同じです」拓海の顔から一気に血の気が引いた。「水道水には塩素などの不純物が含まれており、レンズにすると太陽光がわずかに散乱して効率が落ちる。それを恐れたあなたは、最も純度が高く、光を綺麗に透過させるそのミネラルウォーターをわざわざ数リットル分、天井に注いだ。それが、最大のミスです」冴子が軽蔑の目を拓海に向けた。「社長を殺して、会社の特許を売却するつもりだったのね……」拓海は観念したように両手を頭の後ろで組み、椅子の背もたれに深く体重を預けた。「……完璧に計算したはずだったのにな。まさか、水の成分まで調べられるとはな……」エピローグ数日後、大学の研究室。玲香は窓辺のプリズムが作る虹を眺めながら、感心したように呟いた。「光の屈折を利用して、太陽に引き金を引かせるなんて……。でも先生、よくあのわずかな水たまりに気づきましたね」神崎はコーヒーカップを傾けながら、静かに微笑んだ。「どんなに完璧に見える犯罪でも、エネルギーの保存法則と物質の循環からは逃れられない。水が形を変えても、その場所にあったという記憶(成分)までは消せなかったのさ」神崎はそう言うと、次の講義の資料を開いた。自然界の法則を悪用した悲しい事件は終わり、研究室には再び、真理を追究するための静かで穏やかな時間が流れていくのだった。(終)
コメント
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くまさん、第12話読了しました!水の成分分析で犯人を追い詰める展開、すごくスカッとしましたね。拓海が「完璧に計算したはず」と呟くシーンで、犯人なのにどこか哀れというか…。あとエピローグの神崎先生の「水が形を変えても、その場所にあったという記憶までは消せない」という台詞、じんわり沁みました。完結お疲れ様でした!