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テンペストは平和だった。
交易が始まり、人間との関係も少しずつ広がっていく。
まいかは城下町を歩きながら笑っていた。
「ねえシオン、これ可愛い!」
「まいか様にはこちらの方が似合います!」
後ろではゴブゾウたちが荷物を持っている。
完全なお出かけ状態だった。
本来なら、なにも起きないはずの日。
突然。
空気が変わった。
「…え、?」
魔素が、感じられない。
まいかの能力が反応しなくなる。
《告:魔法不能領域 アンチマジックエリアを確認》
「シオン、これ、なんか変」
次の瞬間。
矢が地面に突き刺さった。
「敵襲!!!」
ファルムス王国軍だった。
まいかは共鳴を発動しようとする。
だが、発動しない。
「どうして…!」
結界によって、能力が使えなくなっていた。
剣がぶつかる音。
ゴブゾウたちも戦う。
だが、相手は対魔物用装備。
徐々に押されていく。
「まいか様、お逃げください!!」
シオンが叫ぶ。
「でも、!
一人でなんて無理だよ…!」
その瞬間。
胸が締め付けられる。
遠くで、リムルの気配が揺れた気がした。
仲間が次々と倒れていく。
恐怖より先に、悲しみが込み上げた。
(守りたい…!)
まいかは無理やり力を使う。
共鳴支配、強制発動。
「……お兄ちゃん」
届かないはずの声。
それでも願った。
その直後。
「まいか様…!!!」
ベニマルが叫ぶ。
「え、?」
グサッ
ファルムス王国軍の聖騎士によって、刺された。
まいかの意識は、そこで途切れた。
帰還
リムルは異変を感じていた。
魂の回路。
妹と繋がる感覚が、消えた。
「……は?」
理解が追いつかない。
もう一度確認する。
反応なし。
「嘘だろ…」
声が震える。
リムルがブチギレる。静かに。
ソウエイが青ざめる。
「リムル様…?」
返事はなかった。
街へ戻ったリムルが見たのは__
横たわった仲間たち。
そして、動かないまいかとシオン。
膝をつく。
震える手で触れる。
冷たい。
「起きてくれ…
頼むから……!」
静寂。
その瞬間。
何かが完全に壊れた。
「俺が、全員生き返らせる」
それは禁忌。
だが、リムルは迷わなかった。
妹とシオンを取り戻すためなら…
世界すら敵に回す覚悟だった。
「ファルムス王国は__敵だ…!」
この瞬間。
魔王リムル誕生への道が確定した。
魔王誕生
部屋の中央に、まいかたちは横たわっていた。
リムルはそこから一歩も動かなかった。
《告:魔王への進化条件は既に満たしています。》
頭の中に響く声。
《蘇生には、大規模な魂のエネルギーが必要と考えます。
推定:一万名以上》
普通なら迷う数字。
けれど、リムルは即答した。
「なんてこった…
けど、まいかたちを生き返らせるにはこれしかないってことか」
理由はひとつ。
妹を、仲間たちを取り戻すため。
「…待ってろよ、まいか」
その声は優しくも冷たかった。
開戦
ファルムス王国軍はまだ知らなかった。
自分たちが決して怒らせてはいけない存在を怒らせてしまったことを__
「な、なんだこれは…!」
聖騎士たちが震える。
その中心に立っているのは__
リムル。
感情の消えた瞳。
「俺たちを怒らせたことを後悔させてやる…!」
その瞬間。
「神之怒(メギド)!!」
その戦いは一瞬で終わった。
ただ、圧倒的な力の差だけが存在した。
膨大な魂が集まり、進化が始まった。
「クフフフフ。さすがは我が君」
進化
《告:魔王への進化を開始します。》
魔素が桁違いに膨れ上がる。
だが、その中心にあるのは__
怒りではなく、願いだった。
それだけ。
暗い場所。
まいかは一人立っていた。
「ここ…どこ?
リムルたちは?」
その時、遠くから声が聞こえた。
「帰ってこい…!」
聞き慣れた声。
「おにい、ちゃん…?」
暖かい魔素が体を包む。
それはリムルの力だった。
蘇生
城の大広間。
魔法陣が展開する。
光が溢れた。
ピクッ
まいかの指が僅かに動いた。
「……っ!」
ベニマルが息を止める…
ぼやけた視界。
最初に見えたのは__
泣きそうな仲間たちの顔だった。
「…ただい、ま?」
静寂。
そして。
「…ばか」
次の瞬間、強く抱きしめられた。
「心配しただろ…!」
魔王とは思えない声。
震えていた。
扉が開く。
「まいか様!!」
シオンが飛び込んで抱きつく。
「お目覚めになられてよかったです!
ほんとに…!」
シュナが涙ぐみながら言う。
ベニマルは言葉を失い、ただ安堵の息を吐く。
次々と仲間が集まる。
完全に包囲状態。
「ちょ、ちょ…!」
その様子を見て、リムルがため息をつく。
「…ほんとによかったよ」
誰にも聞こえないくらい小さな声だった。
新たな存在
背後の闇が揺らぐ。
黒い執事服の悪魔が跪いた。
「お初目にかかります」
「誰…?」
ディアブロだった。
原初の悪魔。
彼の視線がまいかへと向く。
「……なるほど」
深く頭を下げる。
「リムル様の最愛の存在。理解しました。」
「え…?」
その日から、デイアブロの“過剰な防衛“が追加されることとなった。
夜
静かになった城。
まいかは窓の外を見ていた。
隣にリムルが立つ。
「……怖くなかったか?」
少しの沈黙。
「怖かった…でも」
振り向いて笑う。
「リムルがなんとかしてくれるって信じてたから」
リムルは目を細めた。
「…もう2度と離す気はないからな」
魔王の宣言は、妹限定でとても重かった。
そして__
ジュラ・テンペスト連邦国は新たな段階へ進む。
魔王リムル誕生。
その隣には、必ず少女がいた。