テラーノベル
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「絶対許さん」
その瞬間。
ぱた、と。
黒い蝶が飛んだ。
「!」
いふの視界を横切る。
次の瞬間。
胸に激痛が走った。
「がっ……!?」
血。
口から溢れる。
「……え」
いふは目を見開いた。
呼吸が苦しい。
肺が潰されるみたいだった。
「君、面白いね」
ほとけが近づいてくる。
「普通の人ならもう死んでるのに」
「お、まえ……っ」
「耐性あるんだ?」
しゃがみ込み、いふの顔を覗き込む。
綺麗な瞳だった。
恐ろしいほど。
「でも」
ほとけが笑う。
「死ぬよ?」
蝶がまた羽ばたいた。
ぶつり。
いふの腕に黒い痣が浮かぶ。
呪い。
「っ、ぁ……!」
身体が動かない。
視界が滲む。
死ぬ。
本能が理解する。
けれど。
「……まだ」
いふは銃を握った。
「捕まって……へん……」
「え?」
「お前を……」
震える腕。
それでも銃口を向ける。
「絶対……捕まえる……!」
――パンッ!!
銃声。
だが。
弾は当たらなかった。
ほとけの蝶が、銃弾を逸らしていた。
「すご」
ほとけは心底楽しそうに笑う。
「君、最高」
「……っ」
「死にそうなのに立つんだ」
いふは壁に手をつき、無理やり立ち上がる。
呼吸が苦しい。
血が止まらない。
でも倒れない。
その姿を見て、ほとけの胸が妙にざわついた。
「…………」
なんだろう。
この人。
壊れない。
普通なら泣く。
命乞いする。
絶望する。
なのに。
「来いよ……化け物」
睨んでくる。
それが。
たまらなく綺麗だった。
「……ふふ」
ほとけは笑う。
「好きかも」
「気色悪いこと言うなや……!」
「だって君、死にそうなのに僕を見てる」
普通は自分の命を優先する。
でも、この人は違う。
「面白い」
ほとけはそっと、いふの頬に触れた。
冷たい指。
「ねえ」
耳元で囁く。
「もっと苦しんでよ」
ぞわり、と背筋が凍る。
「君の絶望、見てみたい」
その瞬間。
外から怒鳴り声が聞こえた。
「警察だ!!」
「包囲した!!」
増援。
いふが連絡していたのだ。
「……あーあ」
ほとけはつまらなそうに呟く。
「邪魔」
窓を見る。
ここは五階。
普通なら逃げられない。
だが。
ぱたぱたぱた、と。
大量の黒い蝶が現れた。
「……っ!?」
いふが目を見開く。
蝶が部屋を埋め尽くす。
黒。
黒。
黒。
異様な光景。
「またね」
ほとけが笑った。
「警察さん」
次の瞬間。
蝶が弾ける。
視界が黒に染まった。
「くっ……!」
目を閉じる。
そして再び目を開けた時。
部屋には誰もいなかった。
窓だけが開いている。
「逃げ……っ」
言葉の途中で、いふは崩れ落ちた。
「いふ!!」
警察たちが駆け込んでくる。
だが、いふの意識はもう薄れていた。
最後に見えたのは。
窓辺に残された、一匹の黒い蝶。
それがまるで。
笑っているように見えた。
コメント
1件
えやばい好きすぎる。 なんて言うかダークな雰囲気?がすこ🫶🫶