目の前には異食家が居る。
「でね、!それでね!僕が食べようとしたら泣き始めて…!!」
目の前に居るヤツは真っ白な部屋の中、真っ白な椅子に座って
嬉しそうにベラベラと話す。ただのグロい話を。
聞きたいとも思わんし吐き気がしてくる。食欲が失せる。
「….?どしたの?」
不思議だと言わんばかりに首をガクッと傾ける。
急に首の糸が切れたマリオネットみたいだ。
黄色に光るクモみたいな目が少し、いや結構不気味だ。
「….照れちゃうよ!」
じっと見てると彼はきゃー、!と女子みたいな反応をして顔を隠す。
芝居がかった動きが不快、非常に不快だ。
例えるなら子供向け番組の大人が子供の為に身振り手振りする感じ。
「…ねー…なんとか言ってよ..?」
口調こそ丁寧だが…早く話せ、何か言え、と言う様に首の近くをずり…と
巨大な舌が這ってくる。気色悪い。ただの脅迫だ。
「….離れろ。」
ぺちんと軽く叩いて追い払う。すぐにするする下がってく。ヘビみたいだ。
「…..悪かったってぇ…ごめんごめん….睨まないでよぉ…」
大きなヘビ…じゃなくて舌が顔じゃなく腹の中に収まる。
人外以外何者でもない。腹口とは良く言った物だ。
「んん…僕のお口ちゃんお腹すいてて…」
ずり、と彼は巨大な口がある腹を撫でる。
異質で、恐ろしく綺麗だ。まるで不気味な絵画。
食べるなら俺ではなくテーブルの上の料理を食べてほしい。
「お前の分は作っただろ。足りないなら作るからそっちを食え。」
「ごめんよぉ…」
涙目で謝ってくる。えーんえーんって感じ。声が笑ってるけど。
「…それで話は変わるんだけど、….」
しばらくすると嘘泣きを辞めてまたナイフ、フォークを
持ち直して口に運びながら話を進める。
「…僕はね!とっても幸せだよ!」
彼はにっこりと笑って残りの料理を….人肉を食べ終えた。
僕は「イショクカ」。
昔から普通の食べ物が美味しくないって感じてた。
お母さんが料理を作ってた。笑顔で。お父さんも手伝ってた。
けどどれも美味しくなかった。
ハンバーグにご飯…あと水と、サラダと。
普通の料理だけど不味かった。凄く。
お母さんは病院に行こうって。
病院に行って…帰っても吐いたら今度は怒られるんだよ。
「失礼じゃないか」ってね。
不味いんだもん。仕方ないじゃん。
ある日お父さんとお母さんを食べた。
「美味しそう」って思った。思っちゃったから。
全部無くなったら凄ーくお腹いっぱいになった。
だけど何かが空っぽになった気がする。
何か大切な物を捨ててしまった気がする。
けど何か救われた気がする。
お腹が空いた気がする。
あれから何百年と経ったかな?
素晴らしい友人が出来たんだ!
僕の好きな食べ物を否定しなかった!
なんならご飯を作ってくれるってね!
しかも全部美味しいんだ!
ちょっと厳しい口調だけど大好きなんだよ!
「…僕はね!とっても幸せだよ!」
コメント
5件
とても深い…とても好き…好…(尊死)
ダリアさんとその相方さんのお話です。 ご飯は美味しかったかな?