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お久しぶりです。皆様お元気ですか

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凪玲

記憶曖昧の為改変等、謎軸

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寝付けないまま、何時間程経っただろう。おやすみと交わした時は小降りだった雨がざあざあと、窓に当たって流れる。これは暫く寝れないなと起き上がって窓を見つめていると、風も雨も酷い中、一匹で懸命に歩いている蜥蜴が目に入った。

蜥蜴。そういえば、蜥蜴の尻尾切りという言葉がある。組織の不祥事を揉み消す為に使われる立場の弱い人間のことだったが以前、世界一を誓った人間から別れ――と言うと交際していたかのようになるが、そうとしか表現しようがない――を切り出された時にふと、蜥蜴の尻尾切りだと、思った。

アイツは最初から俺のことなんて、いらなかったのかもしれない。今も、隣ですうすうと規則正しく寝息を立てているが、もしかしたら、なんて。


「凪」


小さく名前を口にして、枕に頭を預けている彼の額に掛かっている前髪を撫で梳く。碌に手入れもしていないだろうが、羽のように白くて美しい髪は指の間をするりと容易にすり抜けて再び額へと戻った。自分の顔面に興味を持って、保湿等を進んでし始めたら化けるどころか、芸能界入りが即座に決定してしまうだろう。半ば悪戯っぽく、沢山の才能を持って生まれた彼の小さく開いた唇を指の腹でつんつんと柔く押してやる。


「……お前は俺のこと、なんだと思ってんの、」


友達、親友。或いは、駒。なんだって構わない、ただ変わらないのは、この呑気に寝ている男が俺の、宝物であること。もしかするとサッカーより大切かもしれない。何でも簡単に手に入る俺ですら手に入れられない、世界より、大切な。


「………寝てる人のことじろじろ見て…レオ、えっち。」


目に映るは、愛おしくて、大切な人間。起き上がったその人は変わらない無表情で俺の髪を撫で返した。


「なんだよ…起きてたなら返事しろ」

「起きようにも起きられないよ。されたら分かる」


そう口にして、彼はその形の良い唇をそっと俺の口に重ねた。先程柔くつついた、そのままの感触が指ではなく唇に伝わる。予想外の展開に反応が追い付かない俺を、ふんわりと微笑んで脚の上に抱き上げる。手が自身の腰に回され、背で両手が組まれた。そのままちゅ、ちゅ、と啄むように繰り返されていた軽い口付けは唇から顎、顎から首筋へと下がっていく。


「な…、凪、」


人と言うには少々荒く、獣と言うには柔らくて優しい口付けを送られ続けて、此方は更に困惑が高まっていくばかりである。そもそも、恋人なんかではなく、しかもお互い恋愛対象は異性な筈だ。でも、それでも彼を拒まない自分自身にも動揺してしまう。


「…玲央は俺の、大事なひとだと思う」


ぽつりと呟いたのは、単純明快な、なんの布にも包み隠されないやさしい言葉。かあ、と顔に熱が溜まるのが分かる。


「ねえ玲央、玲央は俺のこと、どう思ってる」

「すき、かも、………あ、」


宝物、そう言ったつもりだった。幾度も、幾度も口にしては止めてきた言葉がいざとなって出ないまま、代わりに口からぽろりとなにかがはみ出る。本音と建前、という言葉がある。これが本音なのか建前なのかは俺にも分からない、ただ、それを聞いて彼が嬉しそうにしたことは、分かった。



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