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2 - 第二章「弥生という男」

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2023年10月11日

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⚠️注意⚠️

グロ表現しばしばです。それでもいい方はどうぞ





















 さて、席を外れた。向かうは男の席だ。

 人目は気にしなかった。私たちやあの男以外の霊魂はみな死んだ目をしていたからだ。

 私たちに時間はあまり残されていない。なぜなら閻魔によって決められた地獄駅まで列車で行くから。自分達の”地獄”に着くまでに、なんとかしてここから抜け出す。それが目標、いや、それを決意した。隣で歩いている神奈だって同じはず。

 席に着いた。男は窓側に座っている。そして男の片目には黒目が無かった。白目が続いているだけ。

 私はまず男に話しかけた。

「あの、すみません。少しお時間いいですか?」

 男はこちらを振り向いた。身なりは整っているが、どうしても頭の癖っ毛が気になってしまった。

 男は白い目でこちらを見ると、不満げに言い返してきた。

「あぁ? なんだよお前ら?」

「すみません。とりあえず名前は?」

「お前たちから名乗るべきだろ?」

 そう言われ、私たちは名乗った。

「麗做です。この子は神奈」

「ああそうか。俺は弥生。神流川弥生だ」

 神流川弥生(かんながわやよい)と名乗った男は、「で? 俺になんの用だ?」と聞いてきた。

「あなたの目に光が入っていたので…獄瞳とかいう車掌の言葉を覚えていますか?」

「嗚呼。『脱獄すれば生き返ることができるかも知れない』なんてこと言ってたな」

「そう、だから…」

 言い終わる前に弥生という男はぴしゃりと言った。

「仲間になれってか?」

 その通りですと私は勢いよく頷いた。白い目をこちらに向けられる。その目には圧倒的な光や活気があった。弥生という男は信用できそうだ。

 私が微笑んでいると、ふと隣にいる神奈が呟いた。

「弥生おじさん、怖い…」

「お? 今おじさんっつったか? 俺はまだ二十三だ、お兄さんっつうんだ」

 白い目で神奈が睨まれる。ひぇっと小さな悲鳴をあげる神奈を見て、私は弥生に怒鳴り付けた。

「こら、小さな子を睨まないでください。私は三十六ですよ」

「ちっ…」

 舌打ちしながらも弥生はシートベルトを外し始めた。

 はずし終わると、弥生は白い目でこちらを見て、ようやく微笑んだのだ。

「んま、面白い嬢ちゃんは嫌いじゃないぜ。仲間になってやらぁ」

 席を立ち、弥生は列車の外を見た。外の空は真っ赤に染められていて、ところどころ黒い雲が見えることもある。その地面には、溶岩や檻など、色々なものが置いてあった。

「俺は知ってるぜ。ここの脱出方法」

「…おじさん…お兄さん、知っているの?」

「…嗚呼。ここにはな、四つのカードキーが隠されている。そのカードキーで車両を乗り移ったりすれば、ここの出口がある車両が来るのさ。この列車、四車両あるからな、俺たちはそれの一車両目に居んのさ」

 神奈は首を傾げるが、私は意味を飲み込んだ。とりあえず、カードキーを探せばいいのだ。

 とにかく探索だ。と思ったが、私は弥生に止められた。

「待て待て。ここは思った以上に広い。手分けして探すぞ」

「じゃあ弥生さん。神奈ちゃんをよろしく頼みます」

「はっ?」

 すっとんきょうな声を上げる弥生。私は試したいのだ。この男が本当に信頼できるか、神奈が無事でここに戻ってくることができたら、この男は信用できるというわけだ。

 だが、そのことに弥生はとても動揺した。絶対無理だと繰り返すのだ。

「無理だ俺には! 子供なんか預かりたくねぇ!」

「いいから連れていくのです。ね、神奈ちゃん、私なんかよりもこの人の方が頼りになると思うでしょ?」

 神奈はこくりとうなずく。その顔は弥生に向けて笑顔を向けていた。

 そして、ついに弥生は頷いた。しぶしぶという感じもしたが、試すのには丁度よいし、神奈も無事で帰ってくるだろう。一石二鳥だ。

「麗做お姉ちゃんは一人でいいの?」

「うん。仲間ももう一人ぐらいは見つけてくるから、安心して」

 それならいいや、という感じで先に弥生と神奈は行ってしまった。さて、私も根気よく探さなくては。

 私もカードキー探しに取りかかった。


 まず絶対に荷物を置くところは見たい。荷物に紛れてカードキーが入っているならば、すぐに見つけられるはずだ。

 私は荷物置きを一旦見てみた。ずらりと並べられた荷物に、私は正直目がやられた。ここを調べるのは、随分時間がかかるだろう。

 だが私は気にしなかった。今すぐに荷物を漁りにかかった。大きなリュックの中にはナイフや毒の入った何かがごろごろと入っていて、小さなカバンには血塗れのTシャツ。色々とたくさんな物が入っていた。

 特に目を引いたのはてかてかと光っている絢爛豪華なリュックサックだ。その中を調べると、詐欺師しか持たないノートパソコン、たくさんの大金が入っていた。

 私はこのリュックサックを見たことがあった。私に詐欺師を勧めてきたガタイのいい男。あの男が背負っていたものだ。

 下を見れば、その男が死んだ目で私を見つめていた。

 突如憎悪がこの男に湧いてきた。次の瞬間、私は男に飛びかかっていた。

 ぐしゃりと柔らかい鼻を殴る。血があふれでるが、男はそのことについてなにも言わなかった。

 まんべんなく顔を殴り終わる。男は血まみれの状態だった。

 そして、その男のリュックサックにはカードキーが入っていた。銀色で緑色の線が入ってる辺り、どこかの研究所のキーのようだ。

 見つからないようにとカードキーをポケットに隠し、私は弥生たちと合流するため走り出した。



 一方その頃弥生と神奈は…。

「くっそ! いつまで着いてくんだこいつら!」

 弥生は神奈を抱え走っている。後ろには大量の霊魂がいる。

 なぜこうなったかと言うと、この二人が車掌に見つかったことがきっかけだ。

 この二人はさっきまで石油場所を調べていたのだ。車掌に見つからないように足音を消して調べていたのだが。

 車掌、獄瞳が外に一旦出てきたのだ。

 獄瞳はホイッスルを鳴らせばたくさんの霊魂を呼び寄せた。

 その霊魂たちは一気に二人に襲いかかり、弥生は子供の神奈を抱え走っているという状況だ。

 弥生は片目を失明しているので後ろの状態などは神奈が伝えろと言い、弥生は前のことだけに、逃げることだけに集中していた。

 弥生はこれでも学生時代サッカー部だったらしいので、それなりに足は早い。

 それと、幽霊は壁をすり抜けることができるが、霊魂はそのまますり抜けられずに当たるのだ。このことに感謝しながら、やっとのやっとで霊魂たちを撒いた。

 ぜぇぜぇと荒い息を吐きながらも、弥生は神奈を抱いたままだった。好奇心のみで外に出て襲われたら大変だ。

「し…神奈とか言ったか。しばらくは外に出るなよ、分かったか…」

 神奈を一旦降ろす。胸を押さえながらも呼吸を整える。

 やっと呼吸が緩くなれば、隣に座っていた神奈が声をかけた。

「お兄さん、汗すごい…。あたしタオル持ってるよ、拭く…?」

 そう言って神奈は白いタオルを取り出した。弥生は服で汗を拭いていたのでありがたく受け取った。

「そんじゃ…麗做と合流しに行きますか。ほれ、立て。なんなら俺が抱くぞ」

「やだ。お兄さん疲れちゃう。あたし歩く」

「いいからさっさと乗れ!」

 無理矢理で抱っこすれば弥生は元居た場所に戻ろうとした。霊魂はいなくなっていた。

 そして戻ってきた。カードキーは見つからなかったが、多分麗做が持っているだろう。

 弥生はそう思いながら先についていた麗做を見た。

「あ、来ましたか。…なにがなんでも、なぜ神奈ちゃんが抱かれているのか」

「ちょっと大変なことがあったんだよ…。で、カードキー見つけたか?」

「見つけましたよ」

 ポケットからカードキーを取り出して見せる。神奈は無反応だ。聞くところによれば、来る途中寝てしまったのだとか。

「よし、これで一車両目は突破だ。あと三車両だな」

 弥生の顔に微笑みが浮かぶのを麗做は見逃さなかった。

「神奈ちゃんはそのままで行けますか?」

「はっ? なんでだよ? もう役目は終わったろ?」

「いえ。…とても気持ち良さそうに寝ていたものなので」

 胸ぐらですやすやと寝息を立てている神奈を見て、弥生は驚きながらも「仕方ねぇな」と言って抱いていった。

(意外と子守は出来そうね)

(ガキっつうのも悪くないな)

 それぞれの思いを抱え、三人は微笑んで次の車両へ向かった。


第二章、終点。

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