テラーノベル
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夏休みはあっという間に過ぎていく。結局、この前の人が家の庭にいたかもしれない事件については有耶無耶のまま学校が始まってしまった。
あの日の夜の、誰かが間違って入り込んでしまったのでは?という祖父の呟きに、そうであってくれよという願望が混ざって聞こえたのは、きっと勘違いではないのだと思う。
「みどり、大丈夫?」
「ン……だいじょうぶ…」
全然大丈夫には見えない。
最後の1週間を残した夏休み。
あれ以来家の周りに不審者に関する音沙汰はなく、さらに連日続くこの暑さが味方して、庭どころか家の周囲にすら人影は見えない。
「サマーキャンプ、楽しみにしてたもんね」
そう、本日はサマーキャンプ当日。
最近元気のなかったみどりも、いつもよりは楽しそうで俺も嬉しい。
荷物を手に家を出れば、サマーキャンプで何をしたいのかについて話したりした。
「ウン…!レウさんと川遊びする」
「おぉ、いいじゃん」
「カレーも楽しみ」
「でもあれ毎年米が最悪な仕上がりになってるらしいよ?」
「ダイジョーブ!レウさんいるもん!」
頭を撫でれば、いつもの笑顔が返ってきて少し安心した。
俺が思っていたよりもトラウマへの刺激は少なく済んだみたいでホッと胸を撫で下ろす。
「そろそろ集合時間だから少し急ご」
「ン!」
スマホで時間を確認してから、みどりの手を引いて駆け足気味に集合場所へ向かった。
集合場所では既に到着していたきょーさんたちが呑気な声をあげて手を振っている。
「おはよ、早いね」
「おぅ…どりみー、顔色悪いけど平気か?」
「ン、大丈夫」
ニコッと笑ったみどりはレウを引っ張って早々にバスに乗り込むと、発車までの数分の間に眠ってしまった。
いちばん後ろの席で、しかも窓側。
左右に俺とレウが座っていることが、睡眠における精神的な安心を満たしたらしい。
「やっぱり、何かあったよね…?」
「コンちゃん。みどりが何も言ってないなら、俺だって何も言わないよ」
「んー、そっかぁ…」
すぐに興味をなくしたコンちゃんは小説を片手にゆっくりと読書を始めた。
きょーさんに至ってはみどりに釣られてふわりとあくびをしてグースカ寝始めてる。
「ありがとね」
「何がだよ」
サマーキャンプの始まりだ。
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