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嫌いなやつと同居【リメイク版】
母「赤。ちょっと、話があるの」
赤「……なに?」
母の声色は、いつもと違って真剣だった。
だから俺も、思わず真顔になる。
そして――
母「お母さんの友達の息子さんたちと、同居してほしいの」
赤「……はああああああ!?!?!?」
◆
俺の名前は赤。
今、人生最大級のピンチに直面している。
「自立して一人暮らししたいって、赤が言ったんでしょ?」
「う、うん……それは、そうだけど」
「でも一人は心配なの。だからそのことを、友達に相談したの。そしたら――」
“私も、ちょうどそれで悩んでたのよ”って、言われたらしい。
で、何を思ったか、そのまま話がトントン拍子に進んで、結果。
「赤をそこの家に住まわせることになったの!」
「“なったの”じゃねぇよ!!」
俺が、どれだけ他人と関わるのが嫌いか知ってるだろう。
俺は――
人が嫌いだ。
昔、いじめられてた。
理由は簡単だった。
俺に、耳としっぽがあるから。
それだけで、キモイって言われて、殴られて、笑われて。
だから俺は、人なんて信じない。
関わらない。
それが一番、楽だから。
「でも……赤が一人きりでいるのも、心配なのよ」
「……お母さん」
「お願い……!」
母の声が震えた。
こんなふうに強く、必死に言われたのは初めてだった。
「赤は……赤は知ってるでしょ? お母さんの病気」
――そう。母は、重い病気を患っている。
その現実から逃げた父は、家を出ていった。
「お願い。赤……。今のうちに、誰かと繋がっていて欲しいの」
……母の願いを、無視なんてできない。
「……わかったよ」
こうして――
俺の地獄の同居生活が、始まった。
◆
それから、約一ヶ月後。
俺は新しい“家”の前に立っていた。
「はぁ……最悪」
玄関のドアに手をかける。
重たく感じるのは、きっと気のせいじゃない。
――ガチャ。
開けた瞬間。
「おおー!来た!」
「君が赤?」
「こんにちはっ!」
3人の男子が、走ってこっちへやってきた。
元気よく、笑顔で、しかもいきなり呼び捨て。
(……一番嫌いなタイプ)
「えっ……今なんか言った?」
「赤くん……?」
「なんかボソッて言ってたよな?」
コソコソと話し出す3人。
聞こえてないとでも思ってんのか。
耳、ついてんだけど。――2つも。
「邪魔。どいて」
「えっ?」
「通れないんだけど」
ピシャリと言い放って、俺は部屋の中へ足を踏み入れた。
(母さんのために来ただけ。仲良くなんて、する気ない)
それが俺の、同居生活のはじまりだった。
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