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佐川は薄れゆく意識の中で、4人の影が近付くのが見えた。
どうにか逃げる手立てを考えるも佐川は動くことができなかった。
左腕、左足骨折。
右腕欠損、右足に複数の打撲。
サーザス、サイ、イリ、グーンが佐川と対面する。
サーザスが口火を切った。
「イリ、グーン、サイご苦労様です」
「見事に対象者を見つけたようですね」
「対象者の捕食はグーンへ任せますかね」
サイ、イリ、グーンはサーザスの影に戻る。
そして、サーザスに跪いた。
グーンは返答する。
「捕食了解しやした」
「しかしながら、サーザス様にご報告しやす」
「タールのことです」
サーザスはタールがいないことに気づき、グーンに尋ねた。
「タールですか、彼は今どこにいるのですか」
グーンは顔を伏せる。
「佐川に敗れ、影の力を奪われやした」
サーザスはハットを深々と被りぽつり。
「あの獲物狩りが敗れたということですか」
サーザスの言葉を受け、クロスボウの矢が佐川の前に現れた。
佐川は左手を伸ばそうと試みるも体が動かない。
矢が潰される音がする。
サーザスだ。
「どうやら、あなたも私と同じようですね」
「ですから、ここで退場してもらいましょうか」
「グーン、屍は頼みますよ」
サーザスの左手が激しく回転する。
旋盤加工のように回転数が上がり、キーンと音が鳴る。
人間の動く稼働を超えている。
佐川は呟く。
「ちくしょう」
サーザスの左手は佐川の心臓を突き刺そうとする。
鈍い音がなる。
機械音だ。
佐川が目を開ける。
そこにはハンマーで、サーザスの左手を受け止める影が見えた。
見覚えのある女性の影。
恵だ。
「あんた達、もうすぐタイムアップよ」
「これ以上の攻撃は、認める訳にはいかない」
いつもの恵と違う。
やっと会えた知り合いに安堵し、佐川は気をしっかり保った。
サーザス、影3人と恵は睨み合う。
恵は佐川を抱え、大きくジャンプする。
ハンマーの柄を持ち振りかぶる。
1里先まで届くような巨大なハンマーとなり、勢いよく振り下ろした。
地震の振動かと思う揺れが発生する。
住宅街がめきめきと音を立て、家が潰れていく。
恵はハンマーを放置し、何やら唱えている。
ハンマーのか細い柄から口へ飛び移った。
3つの影が迫るが、恵は影達に向かい一言。
「さよなら」
無数の光が影達を照らす。
グーン、イリ、サイは形を保てず、崩壊していく。
グーンは悔しそうにハンマーの口に拳を叩き込む。
ハンマーに亀裂が入った。
「佐川 涼覚えたぞ、タールの仇は必ず果たすぜ」
「次回が楽しみだぜ」
影3人の姿は消えた。
恵はハンマーを元の大きさに戻した。
「まったく、何してるの」
「もう少しで死ぬところだったんだから」
「私が巡回してて良かったわ」
恵の言葉から恐らく、何度も同じ体験をしていると思った。
色々聞きたいことはあるが、まずは身の安全が優先だ。
「影とサーザスは」
恵はハンマーの傷を確認していた。
「影達は元の記録書に戻したわ」
「今回は出て来れないでしょうね」
「サーザスという男は初めて会うわ」
「何者かしらね」
ハンマーの柄を肩に置き、佐川に駆け寄る。
「傷の具合は‥」
恵の言葉が急に止まり、佐川が恵を見る。
佐川は固まる。
「なんで」
恵の胸に槍が突き刺さっていた。