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本人様とは関係ありません
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桃side
最近再開した彼に連れ出された深夜1時。
彼の運転で着いた海。夏特有の生ぬるい
風が俺らを揺らす。
ここは、初めて来たし特に思い出もない。
明かりもなくて、ただ満月が海に反射してる。
なぜここに連れてこられたのかも分からない。
いきなり連絡してきた彼の顔は
暗くて、よく見えない。
砂が海を打ち返す音以外、すごく、静かだ。
彼の呼吸音が、聞こえる。
ふと、学生の頃を思い出した。
桃「来たよ。おはよ」
紫「暇だった、待ってた。」
学生の頃は、病弱で病院のベットで寝てるか
学校ではひとりで過ごすかだった彼。
いじめられることもあった。
そんな話も時効でこの前聞いた。
今思えば特に彼を好む理由もないが
嫌いな理由も嫌う理由こそなかった。
理由を探すとすれば俺は彼の声が好きだった。
桃「…これなんの点滴」
紫「痛み止めだよ。おなかに穴あけたの」
彼が盲腸で寝込んでた日。手術明けのくせに
また病室に俺を呼び出した。
まだ義務教育中で、話せるのは4時半から
1時間半。6時には帰される。
俺は、受験もあった。
親に偏差値の高い高校を勧められた。
いきたく、なかった。彼と離れたくなかった。
でも行かざるおえなくなった。きっと
無意識に頑張ってた勉強。親に
飽きられないように否定されないように。
寝不足になるまで、時間を使って不安を
抱えてまで頑張ってることには終わって
彼と会ってから気づいた。
桃「…受かったから、東京に行くよ」
紫「んふふ、凄いじゃん。応援してるよ」
桃「……ごめん」
紫「…なんで謝るの?」
桃「……なんでもない。」
そう、話したのも病院のベンチ。彼の右側には
点滴を吊り下げた棒がある。このときは
肺が悪かったらしい。これも後日談。
この時は、聞く余裕が俺になかった。
本当はずっと一緒にいたかった。
彼の声を聞いていたかった。
でも中学生の権力は、小さくて。
何も叶わず、スマホもない時代、連絡先の
交換さら出来ず別れが近づいていく。
紫「…おれは、なんか小さいところだよ」
紫「行けなかった人たちが集まる場所」
紫「次会う時までにからだつよく、するね。」
桃「、無理しないでね」
こんな、暗い会話。春になって少しは
明るい時間が増えたが6時にはもう薄暗かった
桃「じゃあね」
紫「またね」
少し、離れれば彼の顔も見えない。
振り返った時、俺の目は霞んでた。
今じゃ、俺より背は高いしまだ残ってる
点滴の跡は嘘みたいに元気らしい。あのあと
サッカー部に入ったなんて。
少し信じられない話ばっかり。
紫「……笑、」
紫「悲しいの?」
桃「…や、色々思い出しただけ」
紫「笑、分かりやすい。」
見えてるのか知らないけどいきなり
話しかけてきた彼は笑ってた。
俺のことは、わかるらしい。
残念ながら、俺は彼のことは全く読めない。
でも、読めない彼が魅力的な気もする。
桃「…今は、ほんとに元気なの?」
紫「まぁね。」
紫「電車は酔うから、車買ったけど」
桃「笑、そっか」
いつの間にか東京に出てきた彼は俺より
後に出てきたはずなのに、もうすっかり
東京に馴染んでた。
俺は、まだなれない。東京は息苦しく感じる。
人も多いしみんなみんな、所作に余裕がない。
紫「…ごめんね。急にこんなとこ連れてきて」
桃「、いいよ。別。明日なんも無いし」
タイミング良く、明日は休み。彼はなにか
あるらしいけどオールで過ごせるらしい。
紫「冷房嫌いでさ」
紫「家にいるとおかしくなりそうで、」
紫「ひとりじゃ、怖くて」
桃「ここ、来たことあるの?」
紫「ううん。初めて」
桃「、そっか」
でも、今の彼は東京に呑まれたまま
知らぬ間に海へ消えてしまいそうだ。
強くなったとは思うが、あの時よりも
脆くなった気がする。これは
俺の感覚に過ぎないが。
紫「…ふと、不安になったんだよね」
紫「、多分。」
紫「なんというか…なんにも、覚えてないの」
紫「ごめん、」
桃「謝らないで。」
桃「俺は、いつまでも付き合うよ」
疲れてたんだろうな。
なんだか今の彼は強くても、それ以上の強さを
求めて、強いと言い聞かせてるように見える。
暗くて見えないが、互いの手が
交わるのだけ、感覚で分かる。
つめたくて、骨ばった手。この前同窓会で
赤ちゃんみたいだって馬鹿にされた俺の手とは
違って、綺麗だ。学生の頃から指輪が
映えるような手だった。
卒業式の日、つけてたのを覚えてる。
紫「これ、誕生日プレゼント。」
紫「ちょっと遅れたけど」
紫「頑張ってね。」
桃「…ありがとう」
同じ細めの指輪と、互いのは髪色で
構成された花束を抱えて写真を撮った。
その写真はどこに
あるか、まだ分からない。
結局その日も、彼はまだ退院して2日しか
経ってなかったし、俺も引越しで
バタバタしてたし放課後は会えなかった。
それが、ほんとのバイバイだった、はず。
桃「何年経ってもさ、俺に細い指輪は」
桃「似合わないんだよ」
紫「…じゃあ次は、桃くんのおててに似合う」
紫「指輪おそろいにしようよ。」
桃「俺は太いやつが似合うの。」
少し、目立つ指輪。
彼から貰った指輪は何度も結婚指輪だと
誤魔化してたけどきっと会社には
つけていけない指輪になる。
紫「もう3時だね。…帰ろっか、ごめんね」
桃「もうそんな時間か…」
紫「話してたらあっという間だね」
会ってなかった数年間触ったのは個人だけで
距離と、雰囲気だけは、変わってないと
2人きりで会えてやっと、思えた。
この前の同窓会とは、全く違う特別な再開。
ふたりで、手を繋いだまま、最後は
海の近くまで行ってみた。
夏の3時となるともう少し明るい。
桃「…俺はまだ一緒にいてもいいけどな」
紫「また、会いに行くよ、」
紫「病院にも、来てくれたしそれのお返し」
桃「笑、やったね。待ってる」
そう言って笑う彼はなんだか可愛く見えた。
でも、運転してる姿はかっこよかった。
やっぱり、強くなってるのかな。
𝙚𝙣𝙙 .
コメント
1件
いやあ、第1話からすごく丁寧な空気感の描写…! 深夜の海、生ぬるい風、満月の反射。たったそれだけで「ああ、これは静かに積み重ねてきた感情の話だな」ってすぐ伝わってきた。特に学生時代の病室のやりとりと、今の手を繋ぐシーンが交互にくる構成が効いてて、「何年経っても変わらない距離と、でも確かに変わった関係」がじわじわ沁みました。指輪の受け渡しのシーン、すごく好きです。