テラーノベル
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パニックで震えながら、リビングの隅で膝を抱えてからどれくらい経っただろう。
体感では何時間にも思える恐怖の時間のなか、時計の針はまだ10分ほどしか進んでいなかった。いや、10分も進んでいる。
大森「圭史……、若井、涼ちゃん……まだかな……」
静まり返った部屋のなか、自分の激しい鼓動だけが耳の奥でうるさく響く。
スマホの画面を見ることすら怖くて、ただただ3人の到着を待つことしかできない。
焦燥感に耐えかねた僕は、ガタガタと震える膝をどうにか動かし、這うようにして窓際へと向かった。
外の様子が気になって仕方がなかった。
遮光カーテンの端を、指先でほんの数ミリだけ、外から気づかれないようにそっとめくって外を覗き込む。
暗い道路の先に、見慣れたマネージャーの車のヘッドライトが見えた。
大森「あ……良かった、来てくれた……!」
張り詰めていた胸の奥が、一瞬だけすっと軽くなった。
若井たちもあの車に乗っているはずだ。
早くあの温かい2人の声が聞きたい。
そう思って、すがるように車を見つめ続けた。
しかし、車から降りてきた圭史は、なぜかすぐに玄関へと走っては来なかった。
車のすぐ脇、街灯の薄暗い光のなかで、圭史はガタイのいい、黒いスーツを着た見知らぬ男性2人と深刻な顔で向き合っていた。
一目でプロだとわかる、物々しい雰囲気をまとったその男たちは、おそらく事務所が急遽手配したSPだろう。
圭史は、焦ったように何度も手振りを交えながら、そのSPと思われる男たちと小声で何かを話し込んでいる。
時折、僕の家の上の方を見上げるような仕草も見せた。
その光景を見た瞬間、脳内に、再びドロリとした冷たい恐怖が溢れ出した。
大森「なんで……? なんで早く中に入ってきてくれないの……?」
一安心したはずの心が、一気に暗転する。
もしかして、自分が送ったスクショのほかにも、もっとヤバい情報が見つかったんじゃないか。
犯人がもうこの近くに潜んでいるから、突入をためらっているんじゃないか。
それとも――。
大森「若井たちに、何かあったのかな……。途中で、何かに巻き込まれたりしたの……?」
車の中に2人の姿は見えない。
スモークガラスの向こうで、2人が怪我でもしているのではないかという最悪な想像が頭をよぎる。
大森「嘘だろ……なんでだよ……。早く来てよ……お願いだから……っ」
外で立ち話を続ける圭史たちの姿が、まるでスローモーションのように見える。
僕はカーテンを握りしめたまま、再び激しくなり始めた呼吸を押さえるように自分の胸をかきむしった。
絶望的な孤独感と、メンバーへの不安が混ざり合い、大森の瞳から大粒の涙が溢れ落ちた。
………そうだ。若井に電話をかけてみよう。
大森「若井……っ、お願い、出て……!」
パニックで狂いそうな頭のまま、震える手でスマホを掴み、若井の個人携帯へ発信した。
耳元で響く「プルルル……」というコール音が、永遠のように長く感じられる。
頼むから出てくれ、無事でいてくれ。祈るように画面を凝視した、その4回目のコールの後。
若井『――もしもし!? もとき!?』
スピーカーから、少し焦ったような、でも間違いなく聞き慣れた若井の声が飛び込んできた。
大森「はっ!よかった出てくれた、、、若井……っ、わかッい……っ、今どこ……? 圭史が、外で知らない人と話しててッ、ハァッ、、中に入ってこなくて……。何かないよね……?」
声は完全に震え、涙で途切れ途切れになっていた。
すると、スマホの向こうから若井の焦ったような優しい声と、もう一つの温かい声が重なって聞こえてきた。
若井『もとき、大丈夫だよ!僕たち今、マネージャーの車の中にいる!』
藤澤『もとき!涼ちゃんだよ!大丈夫、2人とも怪我も何もしてないからね!』
若井『今、圭史が連れてきてくれたSPの人たちと、マンションの周りに不審者がいないか最終確認してるんだ。もときの安全を一番に確保するためだから、心配させてごめん! あと2分で部屋に行くから!』
2人の声が、生きてそこにいるという確かな響きが、耳に届いた瞬間。
大森「……う、あ……っ……泣」
張り詰めていた緊張の糸が、音を立てて弾け飛んだ。
大丈夫だった。
2人とも、どこも怪我なんてしていない。
自分が勝手に最悪な想像をしてパニックになっていただけだった。
安堵が濁流のように押し寄せ、もう、涙を堪えることができなくなった。
スマホを両手で握りしめたまま、床にボロボロと涙をこぼし、子供のように声を上げて泣きじゃくった。
大森「よかった……っ、本当によかったぁ……っ、早く、早く来てよぉ……!泣」
若井『うん、今すぐ行く! 切らずにこのまま話してよう、ね?』
スマホ越しに聞こえる若井と藤澤の「大丈夫だからね」「すぐ横にいるからね」という優しい声を命綱のように聞きながら、僕は涙で視界を染めて、2人がドアを叩く音を待った。
#Mrs. GREEN APPLE
コメント
1件
あおりんご先生、第2話も読み終えたよ〜!!😭💕 大森くんのパニックっぷりがリアルすぎて、こっちまで息苦しくなった…!窓の外で圭史がSPと話してるだけで「なんで入ってこないの!?」ってなるの、めっちゃわかる。待つ側の永遠の不安が痛いほど伝わってきたよ。 で、そこからの若井&藤澤からの電話…!「大丈夫だよ」って声が聞こえた瞬間、一緒に涙腺崩壊した😭✨ 2人の温かさが染みる…!最後の「切らずにいてね」がもう尊すぎる〜。次回、3人が無事に再会できるのを全力で待ってる!!🌸