互いの温もりを感じ合ったところで一旦身体を離して向かい合う。
「……陽葵、いい?」
視線がぶつかり、『いい?』と一言聞いてくる一之瀬。
今ここで答える言葉なんて、一つに決まってる。
「……いいよ」
私がそう答えた瞬間――一之瀬の手が私の頬に触れて、そのまま唇を塞ぐ。
さっきは勢い任せの強引なキスだったけど、今は違う。
私を気遣ってなのか、優しいキスを繰り返す。
「――ッんん、」
そして、一之瀬の舌が口内に侵入してくると少し強引なキスへと変わるけど、それでも、嫉妬に駆られた独占欲からの一方的なキスとは違う、優しさで溢れている事が分かって、気持ち良さは増していく。
そして、少しだけ名残惜しげな表情を浮かべた一之瀬の唇が離れていくと、優しく身体をベッドへ倒され、その上に跨った彼は、
「――陽葵、マジで可愛い。本当に好き。頼むから、そういう無防備な表情、館林に見せるなよ?」
不安そうな顔をしながら念を押してくる。
普段の一之瀬は何に対しても自信に満ち溢れている感じなのに、今目の前にいる一之瀬は全くの別人のよう。
「――大丈夫、そんな事しないよ? 信じて?」
「……うん」
“大丈夫”と何度伝えても、不安は拭われないのか不安げでどこか拗ねた表情を崩さない一之瀬に私は、
「ごめんね、不安にさせて。でも、ちゃんと考えてるし、今は本当、一之瀬以外、見えてないから……信じて?」
今の精一杯の想いを伝えると、
「分かった。信じる。けど、不安にさせた罰として、今日は俺の好きなようにさせてもらうから――覚悟して?」
何故か急にいつもの自信に満ち溢れた一之瀬に戻った。
「す、好きなようにって……」
「それは秘密」
「その顔、絶対何か企んでるでしょ?」
「どーかな?」
「……あ、明日も、仕事だよ?」
「だから?」
「は、早く寝ないと、起きられない……」
「平気だよ、俺が起こしてやるから」
「そ、そういう問題じゃ――」
「いいから、もう黙って」
そして、どこか悪戯っぽい表情のまま私の言葉を遮ると、指で唇をなぞってくる。
「――ッ」
その行為が擽ったくて、思わず声を漏らしそうになる。
「気持ちいいなら声我慢すんなよ? 俺、陽葵の感じてる声、すげぇ好きだから聞きたいし」
「――っ!!」
一之瀬のその言葉に私の顔は更に熱を帯びていく。
だって、そんな事を言われたら……恥ずかしくて、意識しちゃって、声なんて余計出しづらくなるじゃない。
「陽葵? どうかした? 顔、赤いけど?」
心配する素振りを見せてるけど、それと表情が明らからに合ってない。
(絶対、面白がってる!)
何か企んでいるのは分かってたけど、こんな風に揶揄われるのは何だか腑に落ちない。
「し、知らないっ!」
揶揄われて面白く無かった私が頬を膨らませてそっぽを向くと、
「――悪かったよ、怒るなって。もう揶揄わねぇから……陽葵、もう一度こっち向いて?」
私が怒ったと思ったのか、一之瀬が『悪かった』と言って自分の方を向くよう言ってきた。
「……もう意地悪な事、しない?」
「しない」
「……なら、許す」
「ありがと、陽葵――」
「――ッん……」
別に怒っていた訳じゃない私が意地悪な事をしないかと確認すると、『しない』と答えた一之瀬。
その言葉を信じた私が『許す』と答えた瞬間、安堵の表情を浮かべたのも束の間――一之瀬の唇が私の唇を塞いでいった。
「……ッはぁ、」
軽く啄むキスから徐々に激しさを増すキスの嵐の合間に息継ぎをすると、
「――休んでる暇なんてねぇから」
「んんっ、」
すぐにまた唇は塞がれ、今度は舌を絡め取られ、より深いものへと変わっていく。
その最中、もっと互いの体温を感じたい私たちは着ていた服を脱ぎ捨て、肌と肌を重ね合わせていく。
ここまでくるともうそろそろ……なんて密かに期待するも、一之瀬はまだまだキスだけを続けてくる。
キスは嫌いじゃない、けど……そればかりは物足りない。
私の身体はもう疼いていて、キスよりも先の行為を望んでいる。
それでもそんな事、恥ずかし過ぎて私から言うなんて出来ないから口には出さないけれど、表情には表れていたようで、
「――陽葵さ、キスだけじゃ、物足りないって表情してるよな?」
「ッ!? そ、そんなこと……」
「無いって? ふーん? それなら身体に聞いてみるとするかな?」
再びニヤリと口の端を上げた一之瀬は指を首筋から鎖骨、胸元へ滑らせるようになぞっていくと、そのまま下腹部の方へ滑らせていく。
そして、
「――ッぁ、……やだっ」
彼の指が秘部へと到達すると、
「やっぱり、ここが一番正直だよな」
「ゃ、……ッん……」
既に濡れているそこを優しく刺激しながら、嬉しそうに笑みを浮かべた一之瀬がそう呟くように口にした。
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